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替え玉無料サービスも 選挙で投票した人への特典「センキョ割」、どんな取り組み?

7月21日は参院選投開票日。選挙で投票すると、「ドリンクサービス」や「替え玉無料」の特典がある「センキョ割」が注目されています。

世田谷区の「投票済証」。投票所で申し出ればもらえ、参加店で「センキョ割」のサービスを受けられる
世田谷区の「投票済証」。投票所で申し出ればもらえ、参加店で「センキョ割」のサービスを受けられる

 7月21日は参院選の投開票日ですが、近年は大型選挙のたびに「投票率の低下」が懸念されています。総務省や各地の選挙管理委員会も啓発に力を入れていますが、そんな中、選挙で投票すると投票締め切りから一定期間、飲食店で「ドリンクサービス」をしてもらえたり、ラーメン店で「替え玉無料」になったりする「センキョ割」が注目されています。

 取り組みを呼び掛けたのは、マーケティングなどを手掛ける「ワカゾウ」(東京都世田谷区)社長、佐藤章太郎さん(46)。活動の中心を担う団体「全国センキョ割実施委員会」メンバーとして、大学生や高校生とともに活動を続ける佐藤さんに話を聞きました。

さいたま市内の4店からスタート

Q.「センキョ割」はいつ始めたのですか。

佐藤さん「2012年12月の衆院選から始めました。当時から『若者の低投票率が課題』といわれていて、同時に全体の投票率も低いということがあり、『何かしら刺激を与えたい』と思っていました。最初は、さいたま市内の知り合いの飲食店に呼び掛けたところ、4店がサービスを用意してくれました。対象を30歳以下限定にして、高校生が『先輩、選挙に行ってくれませんか』とビラを配りながら呼び掛ける形です。当時の選挙権は20歳以上で『私たちはまだ選挙に行けないから、先輩たちに行ってほしい』と。

実際にやってみると、若者の意識は、上の世代や社会全体の風潮に影響を受けていると分かったので、若者向けと限定せず、社会全体の参加意識を盛り上げた方がよいと思いました。2013年の参院選から、年齢制限なしで誰でも『センキョ割』に参加できるようにしました」

Q.センキョ割の狙いは。

佐藤さん「私は予備校の講師もしているのですが、高校生と日々接していて、説教じみたことを言うと引いてしまう、正論を振りかざすと『正論をいう雰囲気自体が嫌い』と思われてしまう風潮があります。

『選挙に行こう』『このままだと日本がやばい。投票行かなきゃ』と言っても、なかなか動かない。どうやって社会参加してもらうかと考えたとき、『雰囲気的に楽しそうだ』『面白そうだ』というアプローチがあってもいいのではと思いました。もちろん、センキョ割だけでいいとは思っていません。社会参加のツールとして、クリスマスやお正月のような雰囲気づくりもあっていいと思います」

Q.投票をした際にもらえる『投票済み証明書』(別の名称の場合も)を持っていくか、『自撮り写真』でサービスを受けられるそうですね。

佐藤さん「投票済み証明書は、発行が法的に義務付けられているわけではありません。およそ半分の選管が出してくれないようです。そこで、投票所の看板を入れた自撮り写真などでもOKということにしています。また、原則として、どこで投票しても参加店舗でサービスを受けられるようにしています」

Q.今回の参院選での参加店舗数は。

佐藤さん「前回の衆院選で730店だったのですが、今回はそれをはるかに上回り、少なくとも800店は参加しています。飲食店や温泉施設、美容院、ネイルサロンなどさまざまな店が参加してくれています。

東京の下高井戸商店街や横浜市の六角橋商店街などは、商店街として参加してくださっています。最近話題になったのは、博多ラーメンの『一風堂』さんが『一票を大切にする人を、一風堂は大切にします』と打ち出してくれてニュースになりました。替え玉1玉か『半熟塩玉子』1個がサービスされます」

Q.センキョ割への反応は。

佐藤さん「良い反応が9割です。参加店舗の皆さんからは『参加するお客さんが増えた』『従業員同士で、今までタブー視されていた政治の話をカジュアルにできるようになった』という声があります。『センキョ割』をお客さんに説明することになると、自然と『投票行ったよね』という話になります。フラットに政治について語り合える雰囲気ができているようです。

『政治のことが分からないのに、投票する人を増やしているのでは』という批判もありますが、それは想定済みです。一回も投票に行ったことがない人に行動を起こさせることに意義があります。最初は政治や選挙のことが分からなくても、投票行動を繰り返す中で成熟した投票行動になるだろうと期待しています」

Q.投票率アップの効果は表れていると思いますか。

佐藤さん「効果測定はできないので客観的にデータは示せないのですが、『センキョ割』がないよりはアップの効果があると個人的には思っています。『一風堂でやってるんだったら選挙に行く』という人がいます。実感としてはアップしていると思います。外国では選挙の時、投票所に屋台が出るところもあります。楽し気な雰囲気をつくり、政治をカジュアルに語り合える雰囲気をつくることが定着している国もあるのです」

Q.本来は、センキョ割が必要ない世の中の方がよいのではないでしょうか。

佐藤さん「『投票する権利があるから使った方がいいよね』と自然に選挙へ行く社会が理想だとは思います。しかし、なかなかそうはなりません。一方で、投票を義務にして行かせるというのも問題だと思います。投票する入り口として、義務感や市民の権利意識だけでなく、『面白そうだ』という非日常感から投票に行くことがあっていいし、『センキョ割』がずっと続いてもいいと思います」

 佐藤さんらは、公職選挙法上の問題が起きないように、弁護士と話し合ってルールを作成。類似名称の使用で問題が起きないように『センキョ割』を商標登録し、ルール順守を約束した商店や団体に無料で使ってもらっているそうです。

(オトナンサー編集部)

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