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もう古い? 結婚時の「嫁入り道具」は現代でも必要なのか、そもそもの始まりは?

6月は「ジューンブライド」シーズン。昔から結婚に際し、女性側が用意するものに「嫁入り道具」がありますが、現代でも必要なのでしょうか。

現代の「嫁入り道具」事情とは?
現代の「嫁入り道具」事情とは?

 新しい時代の幕開けとともに婚姻届を提出する「令和婚」が注目されましたが、6月も「ジューンブライド」シーズンで、結婚の準備を整えているカップルも多いと思います。結婚に際して女性側が用意するものといえば「嫁入り道具」ですが、現代ではその事情も変化しているようです。

 ネット上では「おばあちゃんの時代のイメージ」「現代でも用意した方がいいの?」「何をそろえればよいか分からない」など、さまざまな声が上がっています。嫁入り道具の“今と昔”について、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。

新生活で困らないように持たせた

Q.そもそも「嫁入り道具」とは何でしょうか。

齊木さん「日本において、伝統的に行われている婚礼儀式の一つであり、嫁ぐ側の家族が『娘が新生活で困らないように』と持たせる家財道具のことをいいます。昔は『女性の結婚=男性側の家に嫁として入ること』として、結婚を『嫁入り』と呼んでいました。また、嫁入り道具は男性から嫁方に贈与された『結納』に対するものであり、いわば『持参金』に似た役割を持っています。

そもそも、日本の結婚式の始まりは1885年といわれています。皇族の結婚式が神前式だったことが、広まるきっかけでした。しかし、江戸時代はまだ『婿入り』が多く、嫁入り婚が行われていたのは武家の間のことでした。嫁入りや嫁入り道具が主流になるのは昭和初期からとされています」

Q.嫁入り道具に地域差はありますか。名古屋は特に派手と言われますが、事実でしょうか。

齊木さん「各地域によって異なります。例えば、香川県の西部地域の西讃(せいさん)では、古くから欠かせない嫁入り道具として、もち米で作られる餅菓子『おいり』があります。カラフルな7色が特徴のかわいらしいお菓子で、『おいりがきれいだとお嫁さんも美しい』といわれ、大切にされていました。

また、『名古屋は特に派手』というのは本当です。嫁入り道具に紅白の帯を結び、それを満載した『嫁入りトラック』で嫁ぎ先に向かいます。道中、運転のバックは『出戻り』を連想させることから、してはならないという決まりがあります。また、かつては荷台がガラス張りで中がよく見える『寿トラック』や嫁入り道具のレンタル業者まで存在するほど、名古屋では派手に行われていました。

ステータスを決定づける最も大きな要素が嫁入り道具であり、いかに豪華な婚礼家具を用意できるか、それをいかにご近所さんへ派手に見せびらかすかが、名古屋の嫁入りの醍醐味(だいごみ)です。

ちなみに、海外の例を見るとシリアでは、海外でも人気が高い有田焼の器が代々受け継ぐものとされ、富裕層の嫁入り道具とされています」

Q.伝統的な嫁入り道具とは、どのようなものでしょうか。

齊木さん「次の3つに大きく分かれます」

【婚礼家具】

代表的なのが『桐たんす』『鏡台』です。桐たんすは、かつて日本では女の子が生まれると庭に桐の木を植える習慣があり、女の子が大人になった時にその桐を使ってたんすを作り、嫁入り道具として持たせたという習わしが元になっています。また、桐たんすは丈夫で寿命が長く、時間がたつにつれて風合いを増すため、嫁入り道具としてふさわしいとされていました。

鏡台は、三面鏡と引き出しがセットになっている家具です。昔はよく着物を着ていたので、どの方向からも見ることのできる三面鏡が使われていました。

【婚礼布団】

高級な生地を使った、華やかでボリュームのある布団です。親戚や近所の人を集めて婚礼布団を披露する風習の地域もあり、見栄えが重視されていたようです。また、冠婚葬祭の際に必要になる客用布団と座布団も多めに用意していました。

【着物】

結婚してからの冠婚葬祭で着る黒留袖や喪服、訪問着などの着物です。着物は結婚後のお付き合いに欠かせないものとして、一式あつらえていました。

Q.現代では、伝統的な嫁入り道具をそろえる家庭は減っているように思われます。その理由や背景は。

齊木さん「『嫁入り』という言葉に表されるように、昔は『男性の家に嫁が入る』という考えが強く、男性の実家で新生活を始める(同居する)女性が大半でした。そこでは、親戚付き合いや近所付き合いも多く、単に嫁ぎ先の家族の一員になるというだけでなく、嫁ぎ先の“地域の一員”として迎えられる、という意味も強くありました。そして、嫁ぐ際に必要な家財や、お付き合いに必要な着物を『嫁入り道具』として用意したのです。

現代において、伝統的な嫁入り道具をそろえることが減っている理由として、2つの要素が考えられます。一つは『男性の家に嫁ぐ』『その地域の一員になる』というよりは『2人で新たな生活を始める』生活様式に変化しています。

そして、もう一つは現代における住まいの変化です。マンション暮らしが中心となった現代では、スペースの効率化を重視する傾向にあります。ウオークインクローゼットがたんすの代わりとなり、洗面台が鏡台の代わりになっています。そもそもの伝統的な嫁入り道具が現代にそぐわない、というのも一つの傾向といえそうです」

Q.現代でも、嫁入り道具は必要でしょうか。

齊木さん「嫁入り道具はご家庭により考え方が異なりますが、現代では『新生活を始める二人が必要とするもの=嫁入り道具』としてそろえることが多くなってきています。そうした意味では、新生活に必要なものがあるのならば、嫁入り道具は“必要”といえます。特に、家具・家電・キッチン用品などの生活必需品を用意する傾向があります。

それぞれが1人暮らしをしている場合も多いので、二人でよく話し合って、お互いのものを持ち合う際に『どれが必要で、どれを新しくそろえるか』をディスカッションすることも、新生活に花を添える現代の在り方ではないでしょうか」

(オトナンサー編集部)

齊木由香(さいき・ゆか)

日本礼法教授、和文化研究家、着付師

旧酒蔵家出身で、幼少期から「新年のあいさつ」などの年間行事で和装を着用し、着物に親しむ。大妻女子大学で着物を生地から製作するなど、日本文化における衣食住について研究。2002年に芸能プロダクションによる約4000人のオーディションを勝ち抜き、テレビドラマやCM、映画などに多数出演。ドラマで和装を着用した経験を生かし“魅せる着物”を提案する。保有資格は「民族衣装文化普及協会認定着物着付師範」「日本礼法教授」「食生活アドバイザー」「秘書検定1級」「英語検定2級」など。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yukasaiki)。

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