オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

高校生に「ギャンブルは娯楽」と説く大阪府市のリーフレット議論に、制作の意図は?

日本書紀にも登場した賭博

 日本のギャンブルの歴史と法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

Q.日本で賭博が禁止されている根拠法と、歴史的経緯を教えてください。

牧野さん「日本では、刑法185条(賭博)と186条(常習賭博及び賭博場開張等図利)で禁止されています。

『185条 賭博をした者は、50万円以下の罰金または科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない』『186条 1.常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。2.賭博場を開張し、または博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する』

ギャンブルは、人の射幸心をくすぐり、時に中毒的な依存状態を招き、破産や人格崩壊に至り、果てには自殺や殺人に及ぶ場合もあります。こうした事実を根拠に、ギャンブルは禁止されています。

日本における賭博は、日本書紀に書かれているものが最古といわれています。西暦685年、天武天皇が賭博(双六=すごろく)を見物したという記述があります。その後、689年、持統天皇は、『賭博に熱中して農作業などがおざなりになってしまう』として、双六禁止令を発表します。罰則も厳しく、賭博をした下級役人は鞭(むち)打ち100回の刑、それ以上の役人はクビと財産没収といった重罪に処せられました」

Q.競馬、競輪、競艇などの公営ギャンブルはなぜ、容認されているのでしょうか。

牧野さん「刑法186条の例外として、競馬法(けいばほう、1948年7月13日法律158号)を根拠として、日本中央競馬会または都道府県(=地方競馬)は、競馬を行うことができます(同法1条の2)。他に、モーターボート競走法(競艇)、自転車競技法(競輪)、小型自動車競走法(オートレース)といった根拠法があります。また、当せん金付証票法(宝くじ)、スポーツ振興投票の実施等に関する法律(スポーツ振興くじ)もあります。

これらは、一部のギャンブルを合法にして、国や地方公共団体の財源にしようとしてきた経緯があります」

Q.パチンコはギャンブルのように思えますが、摘発されることはありません。なぜでしょうか。

牧野さん「パチンコは、法律的にはグレーゾーンになっています。パチンコは、風営法が適用されて営業していますが、パチンコで得られる景品の一部が、パチンコ店外にある、都道府県公安委員会の許可を受けた景品交換所で金銭と交換できるようになっています」

Q.仲間内でのマージャンやゴルフで賭けをしたという話を聞くことがあります。違法にはならないのでしょうか。

牧野さん「金額の大小に関係なく、賭け麻雀や賭けゴルフは、刑法の賭博罪や常習賭博に該当します。2006年に、会社の事業部内でゴルフコンペを行った際に賭博を行ったとして、社員43人と関連会社社員18人の計61人が書類送検される事件がありました。

ただ、刑法185条には、『ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない』とも書かれており、その場で使い切る程度、たとえば缶ビール1本やたばこ1箱くらいは許容されます。この場合、わずかな額でも金銭でやり取りしたら違法です」

Q.IR推進法で解禁されるカジノと、現行の賭博を禁じる法律は、なぜ矛盾しないのでしょうか。

牧野さん「刑法35条は、『法令または正当な業務による行為は、罰しない』と規定しており、法律の規定するところに従って行われる行為は、法令行為として違法性が阻却されるからです」

Q.では、時折摘発される街中のカジノも容認されるのでしょうか。

牧野さん「街中のカジノは、法律の根拠がなく行われているので、原則に戻って、刑法の賭博罪や常習賭博が適用されることになります」

Q.パチンコ店がギャンブルとして摘発された事例があればご教示ください。

牧野さん「景品との交換により金銭が得られることから、パチンコのギャンブル性が指摘されていますが、これまでパチンコ業界では、風営法に基づいて営業している店が摘発されたことはありません」

(オトナンサー編集部)

1 2 3

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

コメント