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45歳ひきこもり長女が「抑うつ」症状出ても受診拒否、親子共倒れの危機…絶望する母に社労士が教えた“意外な突破口”

受診の話を切り出すには?

 母親の話を聞く限り、明子さんは今まで精神科も心療内科も受診していないことが分かりました。

 障害年金を請求するためには、医師の診断書が必要になります。つまり、明子さんはこれから初めて病院を受診することになるということです。

 なお障害年金は原則、その障害で初めて病院を受診した日である「初診日」から1年6カ月を経過した日以降に請求することができます。つまり、病院を受診してすぐに障害年金が請求できるわけではないのです。請求できるその時が来るまで、できるだけ受診は継続しておかなければなりません。

 そこで、まずは明子さんに事情を説明し、明子さん本人が自分の障害を受け入れ、受診に同意してもらう必要があります。言葉でいうのは簡単ですが、それは容易なことではありません。

 母親も同じ気持ちのようで、私の説明を聞いて険しい表情になりました。

「私たち両親も高齢になり、長女には頼れる兄弟姉妹がいません。そこで親の体が動く間にできることはしておきたいと思っているのですが、なかなか長女に話をするタイミングがつかめません。せめて何かきっかけがあればよいのですが…」

 確かに話を切り出すには何かしらのきっかけを必要とすることもあるでしょう。長年、あまり話をしてこなかった親子であればなおさらです。この状況が続くと、親子共倒れになる危険性が高まります。

 そこで私は次のように話しました。

「ご家族に大きな出来事があった時は、話を切り出すきっかけになりやすいです。きっかけになりそうなものとしては、『親が退職した』『親が退職を間近に控えている』『親が入院した』『親が高齢者施設に入居した』『一方の親が亡くなった』などがあります」

 母親は残念そうに言いました。

「今のところ、それらの出来事に当てはまるようなものはありません。やはりそこまで待たなくてはいけないのでしょうか…」

「これらはあくまでも一例なので、この際、きっかけは何でもよいと思います。せっかく講演会に参加されたのですから、お母さまからお嬢さまに『今日、講演会でこんな話を聞いてきたんだけど』と言って、講演会の資料をお嬢さまと一緒に読み合わせてもよいかもしれません。これだけでも十分話をするきっかけにはなると思います。本日の資料は講演会に参加しなかった人でも読めば内容が分かるように作成してありますので、ぜひご活用ください」

「そうですね…。話を切り出す理由は何でもよいかもしれませんね。あとは私の勇気だけですね。さっそく自宅に帰って長女に資料の話をしてみます。本日はお話を聞いていただき、どうもありがとうございました」

 明子さんが母親の説得に応じ、受診をすることができるよう、私は祈ることしかできず、会場を後にする母親の背中をずっと見送っていました。

 ひきこもりの人に発達障害や精神疾患の疑いがある場合、放置すれば日常生活に支障を来したり、症状が悪化したりする可能性が考えられます。本人の将来のためにも、可能であれば、異変に気付いた段階で家族が速やかに医療機関を受診させる必要があります。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

【画像】要注意! これが、ひきこもりの人にやってはいけない“NG行為”です

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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