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肥満だと「歯周病」になりやすい!? 歯科医師が「本当」と強調する3つの理由

ネット上では「肥満の人は歯周病になりやすい」という内容の情報がありますが、本当なのでしょうか。歯科医師に聞きました。

肥満だと歯周病になりやすい?
肥満だと歯周病になりやすい?

 日本人のおよそ8割が歯周病にかかっているといわれています。歯周病予防のために、食後の歯磨きの際にデンタルフロスや歯間ブラシを使っている人も多いと思います。ところで、ネット上では「肥満の人は歯周病になりやすい」という内容の情報がありますが、本当なのでしょうか。肥満と歯周病の関係について、コンパス内科歯科クリニック赤羽(東京都北区)院長で、歯科医師の越智英行さんに聞きました。

肥満だと体内の炎症性物質が増加

Q.肥満の人は歯周病になりやすいといわれていますが、本当なのでしょうか。

越智さん「はい、本当です。肥満の人は歯周病(歯肉炎や歯周炎)にかかるリスクが高いとされています。主な原因として、次の3点が挙げられます」

(1)軽度の慢性炎症状態
肥満は「軽度の慢性炎症状態」にあるとされています。それによって、「TNF-α」「IL-6」など、炎症性サイトカインと呼ばれる体内の炎症性物質が増加します。これらが歯周組織の炎症を助長させ、歯周病の進行を促進させます。

(2)インスリン抵抗性との関連
肥満に伴うインスリン抵抗性も歯周病リスクを高めます。インスリン抵抗性とは肥満によってインスリンの働きを阻害してしまうことにより、高血糖状態が継続され糖尿病リスクを上げてしまう状態です。糖尿病と歯周病は互いに悪影響を及ぼす「相互関係」があるとされています。

(3)免疫機能の低下
肥満は免疫機能にも影響します。炎症性サイトカインの増加により免疫機能が低下することで、歯周病菌に対する防御力が低下します。それにより歯周病が進行するとされています。

これらの理由により、肥満と歯周病との間には相関関係があると報告されています。

Q.では、肥満ではなくても、以前よりも体重が増加傾向にある場合も歯周病に注意が必要なのでしょうか。

越智さん「はい、注意が必要です。体格指数である『BMI(ボディ・マス・インデックス)』が25以上だと肥満と判定されます。ただし、BMIが25未満であっても『体重増加→内臓脂肪の増加→炎症状態の悪化』へとつながります。体重の増加は、代謝の変化や生活習慣の乱れを反映していることが多いです。それに伴い、歯周病のリスクが高まると考えられます。特に次の項目が当てはまったら注意が必要です」

(1)短期間で急激に体重が増えた
(2)運動習慣が減少した
(3)食生活が糖質、脂質中心になった
(4)生活習慣が不規則

Q.肥満の人が減量した場合、歯周病のリスクは減少するのでしょうか。

越智さん「はい、減少する可能性があります。体重を減らすことで、炎症性サイトカインが減少し、全身の炎症改善が期待されます。それにより、歯周組織への炎症助長リスクが軽減し、歯周病リスクが低下すると考えられています。

また、食事の見直しや運動習慣など、減量に伴って生活習慣が改善されること自体も、歯周病予防に関わると考えられます」

Q.歯周病を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。効果的な対策について、教えてください。

越智さん「次のような総合的な対策が効果的です」

(1)日常の口腔(こうくう)ケアを徹底する
歯周病を予防する上で重要なのが、日々のセルフケアといわれています。1日2回以上の正しいブラッシングのほか、デンタルフロスや歯間ブラシといった補助器具の併用が有効です。そのためにも、歯科医院で自身の口腔内に合わせた清掃方法の指導を受けてください。

(2)定期的に歯科検診を受ける
半年ごとに歯科検診を受け、歯科医師に歯や歯茎の状態をチェックしてもらい、歯周病の早期発見、早期治療を行うことが大切です。また、歯科検診では、先述のブラッシング指導以外にもセルフケアできれいにしきれなかった部分のケアを受けることができます。日頃からセルフケアをしっかり行うとともに、歯科検診でケアを受けてください。

(3)生活習慣の改善
喫煙は歯周病の重大なリスク因子といわれているため、禁煙が推奨されます。また、「適度に運動する」「質の高い睡眠を取る」「ストレスを管理する」「食生活を整える」などの取り組みも歯周病の予防に有効です。

(オトナンサー編集部)

【要注意】「えっ」 これが肥満の人が「歯周病」になりやすい“3つの原因”です

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越智英行(おち・ひでゆき)

コンパス内科歯科クリニック赤羽(東京都北区)院長、歯科医師

2010年に昭和大学歯学部卒業後、東京女子医科大学 歯科口腔外科 初期研修医に。2014年に昭和大学大学院 歯学研究科 臨床系歯科麻酔科学 入学。2018年、同大学院 歯学研究科 臨床系歯科麻酔科学 修了。

その後、昭和大学 歯学部 全身管理歯科学歯科麻酔科 助教を経て、2019年に医療法人社団コンパス 副理事長 補佐に。2022年 医療法人社団コンパス 常務理事に就任。現在、コンパス内科歯科クリニック赤羽(東京都北区)院長を兼任。

保有資格は、歯科医師 歯学博士、日本口腔外科学会 認定医、日本外傷歯学学会 認定医。所属団体は日本口腔外科学会、日本インプラント学会、日本歯科麻酔科学会、日本外傷歯学会。コンパス内科歯科クリニック赤羽(https://www.compass-dc.jp/akabane/)。

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