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定員4人の「軽自動車」に5人乗ってる…“違法”じゃないの!? 実は例外も 弁護士に聞く

もし車の「乗車定員」を超える人数を乗せて車を運転した場合、運転手が法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

車の「乗車定員」を超える人数を乗せて運転したらどうなる?
車の「乗車定員」を超える人数を乗せて運転したらどうなる?

 ゴールデンウイーク中に家族や友人と車で行楽地に出掛ける人は多いと思います。車を運転する際は安全運転を心掛ける必要があります。ところで、車を運転する人の中には、4人乗りの軽乗用車に自身を含め計5人乗った状態で、車を走らせている人もいるようです。こうしたケースについて、SNS上では「軽自動車に5人乗ったらダメだろ」「軽自動車、5人乗れるの?」などの声が上がっています。

 もし車の「乗車定員」を超える人数を乗せた状態で車を運転した場合、運転手が法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

反則金を納付すれば公訴を提起されず

Q.そもそも、車の乗車定員は法律で定められているのでしょうか。

佐藤さん「車の乗車定員については、国土交通省の『道路運送車両の保安基準の細目を定める告示』において、『乗車定員は、運転者席、座席、座席に準ずる装置および立席の定員の総和とする』と定められています(同基準237条)。車種や車の大きさによって乗車定員は異なるので、定員が気になる場合は、車検証を確認するようにしましょう」

Q.もし乗車定員が4人の車に運転手を含め、計5人が乗ったとします。この状態で車を運転した場合、運転手が法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。罰則の有無も含めて、教えてください。

佐藤さん「乗車定員を超える人数を乗せて車を運転すると、道路交通法57条1項に違反することになり、5万円以下の罰金に処される可能性があります(同法120条2項2号)。

ただし、定員外乗車違反は、交通反則通告制度の対象のため、反則金(行政上の一種の制裁金)を納付することで公訴を提起されなくなります(道路交通法128条2項)。定員外乗車違反の点数は1点、反則金は小型特殊車、原付車で5000円、普通車、二輪車で6000円、大型車で7000円です」

Q.乗車定員を超える人数を乗せて車を運転中に事故に遭った場合、運転手の責任は重くなるのでしょうか。

佐藤さん「人身事故を起こすと、『自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律』の5条に基づき、事故の態様に応じて過失運転致死傷罪などの罪に問われ、刑事責任を追及されます。この場合、定員外乗車であったことによる加重規定は置かれておらず、乗車定員を超えていたからといって、直ちに運転手の刑事責任が重くなるわけではないでしょう。

ただし、けがを負った被害者が同乗者であるかといった事故態様、定員外乗車することになった経緯などによっては、情状において不利に働く可能性があります」

Q.車の乗車定員を超える人が乗車しても法的責任を問われないケースはありますか。例えば、小さな子どもを乗せたり、ペットを乗せたりした場合、法的に問題はないのでしょうか。

佐藤さん「道路交通法では、一部、貨物自動車に関する例外も定められていますが、一般的な乗用車の場合、乗車定員を超えれば法的責任を問われます。

国交省の『道路運送車両の保安基準』によると、『12歳未満の子どもは、1.5人に相当するもの』と定められていることから(同基準53条2項)、12歳未満の子どもを乗車させる場合は、『12歳未満の子ども1.5人=大人1人』として定員を計算するようにしましょう。

自動車教習所によっては、『(乗車定員-大人の人数)×1.5=12歳未満の子どもの定員』(小数点以下は切り捨て)という内容の計算式を教えています。例えば、乗車定員4人の車に大人2人が乗っている場合、この計算式を使って計算すると12歳未満の子どもの定員は3人となります。また、大人が運転手1人だけの場合は4.5人となり、端数を切り捨てると子どもの定員は4人です。つまり、これらのケースだと乗車定員4人の車でも5人乗ることができます。

また、ペットは、乗車人数にはカウントされません。そのため、定員との関係でペットを意識する必要はありませんが、ペットを膝に乗せて運転するなど、運転手の視界やハンドル操作が妨げられる状態で運転すれば、道路交通法違反に問われる可能性があるので注意しましょう」

Q.ちなみに、軽トラックの荷台に人を乗せて運転する人がいますが、法的に問題はないのでしょうか。

佐藤さん「道路交通法上、運転者は、乗車のために設備された場所以外の場所に乗車させて運転してはならないことになっています(同法55条1項)。そのため、軽トラックの荷台に人を乗せて運転することは、原則として違法です。

ただし、もっぱら貨物を運搬する構造の自動車で、貨物を積載しているものについては、貨物を看守するため必要最小限度の人員を荷台に乗車させて運転することができます(同法55条1項ただし書き)。また、警察署から許可があれば、許可された人員の範囲内で貨物自動車の荷台に人を乗せて、貨物自動車を運転することができます(同法56条2項)」

 乗車定員4人の軽自動車の場合、「大人2人、12歳未満の子ども3人」もしくは「大人1人、12歳未満の子ども4人」という組み合わせだと、5人乗っても例外的に法的責任を問われないということです。ただ、軽自動車は基本的にシートベルトが4つしか設置されていないため、安全面を考えると、このような方法で車に乗るのはあまり現実的ではないかもしれません。

(オトナンサー編集部)

【要注意】これが、車の運転時に「道交法」違反に問われる可能性のある“服装”です(画像6枚)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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