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うつ病の25歳ひきこもり女性 就労困難なのに「障害年金」請求できない!? 社労士が明らかにした“制度の盲点”

障害年金の請求には2つのパターンがある

里香さんの初診日を21歳11カ月目とした場合
里香さんの初診日を21歳11カ月目とした場合

 障害年金(障害基礎年金および障害厚生年金)は、原則、初診日から1年6カ月を経過した日以降に請求できます。この初診日から1年6カ月を経過した日を「障害認定日」といいます。

 母親によると、里香さんは21歳ごろに心療内科の受診を中断してから24歳になるまでの間、心療内科も精神科も受診していなかったということでした。

 また、里香さんは20歳から学生の納付猶予(学生納付特例)の手続きをしていたので、21歳ごろの初診当時まで国民年金保険料は未納状態でないことも分かりました。また、里香さんの国民年金保険料は現在、父親が納付しているとのことです。

 以上のことから、里香さんは障害基礎年金を請求することになります。

 そこまで確認が取れた私は、次のような説明をしました。

「仮にお嬢さまの初診日が21歳11カ月目だったとします。すると、障害認定日は1年6カ月後の23歳5カ月目になります。お嬢さまが障害認定日による請求をするためには、23歳5カ月目以降3カ月以内の現症日(そのときの障害状態を証明した日付)で診断書を作成してもらう必要があります。ですが、お嬢さまは24歳になるまで病院を受診していなかったので、その当時の診断書は入手できません。ここまではよろしいでしょうか」

 母親がうなずいたので、私は説明を続けました。

「お嬢さまは障害認定日による請求ができないため、事後重症による請求をすることになります。事後重症による請求では、請求書類一式を提出した翌月分から障害年金が発生します。例えば、請求が3月なら4月分から発生、請求が5月なら6月分から発生するということです。以上のことから、事後重症による請求はできるだけ速やかに行うことが望ましいです」

 すると、母親が質問しました。

「娘の場合、障害認定日による請求ができないのは分かりました。それでも過去にさかのぼるような別の請求はできないものでしょうか。例えば、うつ病と診断された24歳当時の診断書を書いてもらって請求するなどです」

「残念ながらそれはできません。障害年金の請求方法は、障害認定日による請求か事後重症による請求の2つしかありません。事後重症による請求は過去にさかのぼって請求するものではなく、現時点で請求するものだからです」

 以上の話をまとめるとこのようになります。

■里香さんの初診日を21歳11カ月目とした場合
・21歳11カ月目に心療内科を受診。適応障害と診断。

・障害認定日は23歳5カ月目
里香さんはこの頃に受診せず。障害認定日から3カ月以内、つまり23歳5カ月目から23歳8カ月目までの間の診断書が入手できないので、障害認定日による請求ができない。

・24歳
精神科を受診。うつ病と診断。

・現在、25歳
ここで事後重症による請求をすることになる。

 一通りの説明を聞き終えた後、母親は言いました。

「結局、私たち家族は何から始めればよいのでしょうか」

「まずは21歳ごろに受診した心療内科で初診日の証明書、つまり受診状況等証明書を作成してもらうことになります。さらに現在の精神科で診断書を作成してもらい、同時並行でその他の必要書類をそろえていくことになります」

「何だか大変そうですね…」

「お嬢さまから同意が得られれば、私も請求に向けてお手伝いすることができます。ご安心ください」

「それは心強いです。娘にも伝えてみます」

 私との面談後、母親は里香さんに事情を話し、同意を得ることができました。里香さんの委任状を入手した私は速やかに行動を起こし、障害基礎年金の請求を完了させました。

 請求から3カ月がたった頃。母親から無事に障害基礎年金の2級が認められたという報告を受けました。

 今回のケースのように初診日が過去にさかのぼってしまうと、障害認定日による請求が難しくなってしまうこともあります。事後重症による請求では、請求した翌月分から障害年金が発生するため、できるだけ早く請求する方が望ましいです。

 ご家族だけで請求をしようとすると書類の整備に時間がかなりかかってしまうこともあるので、場合によっては専門家である社会保険労務士に相談することも検討してみましょう。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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