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喫煙者を採用しない企業が増加…「賛同する」「差別」と賛否両論も、法的に問題ない?

「喫煙者は採用しない」という企業の方針について賛否が巻き起こっています。こうした方針に法的問題はないのでしょうか。

「喫煙者は採用しない」、法的には?
「喫煙者は採用しない」、法的には?

「今後、喫煙者は一切採用しないことを決めました」。今年4月、プログラミングの教育事業を手がけるIT会社の社長が投稿した“宣言”が話題になりました。喫煙者を採用しない理由として、「法の範囲で個人の生き方は自由」としつつも、「健康」「生産性」「周囲への影響」の3つの観点から、「会社にとって良いことが何もありません」と指摘しています。

 近年、「喫煙者は採用しない」条件を明示する企業は徐々に増えつつあり、「喫煙ゼロの会社で働きたい」「賛同する」という声がある一方、「差別」「嗜好を採用基準にするのは違法では」など喫煙者の反発も強く、賛否が巻き起こっています。

 喫煙者を採用しない企業の方針に、法的問題はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

経済活動の自由に基づく「採用の自由」

Q.求人募集の際、企業側が「喫煙者は採用しない」と宣言する行為について、法的問題はありますか。

牧野さん「喫煙を理由とする募集・採用差別は、法律で禁止されていないため、法的には問題ないと考えられています。企業には『企業の経済活動の自由(憲法22条及び29条)』を理由に、採用の自由が認められています(昭和48年12月12日三菱樹脂事件最高裁判決)。

ただし、性別を理由とする募集・採用差別は、男女雇用機会均等法で禁止されています。また、募集・採用時に年齢制限をつけることは、雇用対策法によって原則禁止されているため、注意が必要です。

しかし、喫煙の嗜好や、思想や信条(考え方)を理由として不採用とすることは特に禁止されていないため、原則として認められます」

Q.応募時もしくは採用時に「喫煙しない」旨を誓約させる企業もあるようですが、こうした行為はいかがでしょうか。

牧野さん「企業の経済活動の自由として、原則、問題ありません。しかし、応募者に憲法22条の『職業選択の自由』が認められるので、それを制限するには合理的な理由(タバコの煙が客に嫌われる、分煙設備の費用負担、企業責務として健康増進を推進するなど)が必要でしょう」

Q.喫煙行為以外の「完全なる個人の嗜好」を採用基準とする行為に問題はありませんか。

牧野さん「喫煙の嗜好と同様に、他の個人の嗜好を採用基準にすることや、思想や信条を理由として不採用とすることは、特に禁止されていないため、原則、認められるでしょう(昭和48年12月12日三菱樹脂事件最高裁判決)。

ただし、例えば『酒を飲む人は不採用』『釣りが趣味の人を採用』などといったケースは、合理的な理由を見つけることが難しいでしょう」

Q.喫煙者であることを理由に不採用となった場合、応募者は企業に対して何らかの法的措置を取ることができますか。

牧野さん「喫煙者であることを理由に不採用となった場合に、企業側に合理的な理由がある場合には、応募者は喫煙者差別を理由に法的措置を取ることは難しいでしょう」

Q.採用基準に関するトラブルについて、過去の事例・判例があれば教えてください。

牧野さん「トラブルではありませんが、例えば、星野リゾートは喫煙者でないことを条件に採用しています。禁煙は『作業効率低下』『分煙施設の設置』『喫煙者の余分な休憩による社員間の不公平感』などの問題を解決すると考えています。これらの合理的な理由があるので法的に問題ないでしょう」

(ライフスタイルチーム)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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