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裁判員制度「地方に住む人は裁判員に選ばれにくい」説、本当なの? 弁護士に聞いた結果

2009年に始まった「裁判員制度」。ネット上では「地方に住んでいると選ばれにくい」といった推測をする声も聞かれます。実際はどうなのか、弁護士に聞いてみると……。

地方に住んでいると選ばれにくい…? ※画像はイメージ
地方に住んでいると選ばれにくい…? ※画像はイメージ

 国民から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加する「裁判員制度」。裁判員は有権者から選ばれるため、選挙権をもつ人であれば誰でも選ばれる可能性があります。2009年に始まったこの制度ですが、ネット上では「裁判員制度、始まったときはドキドキしてたけど全然来ない」「裁判員に選ばれた人、身近にいないんだけど…」「本当に選ばれるの?」「一生に一度来るか来ないかのレベルかな」といった声をはじめ、「都市部在住の方が選ばれやすそうって勝手に思ってる」「地方住みだから選ばれないとかある?」など、住んでいる地域による違いを推測する声もあるようです。

 実際のところ、「地方に住んでいると、裁判員に選ばれにくい」といったことはあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士にお聞きしました。

「一定の重大犯罪」が対象のため…

Q.まず「裁判員制度」について教えてください。

佐藤さん「裁判員制度とは、刑事裁判に国民が参加する制度です。裁判員は裁判官と一緒に、裁判にかけられている被告人が有罪なのか、無罪なのかを考えたり、有罪の場合、この事件の場合どのくらいの刑罰がいいか決めたりします。裁判員裁判では原則、裁判員6人と裁判官3人が1つの事件を担当します。

裁判員制度が導入されたのは、裁判の進め方やその内容に国民の視点や感覚が反映されることで、裁判全体に対する国民の理解が深まり、司法に対する国民の信頼を高めることにつながるからです。

裁判員裁判が行われるのは、全ての犯罪ではなく、一定の重大犯罪の疑いで裁判になった事件に限られます。例えば、殺人罪、現住建造物等放火罪、強盗致死傷罪などです」

Q.裁判員にはどのような人が、どういった方法で選ばれるのですか。

佐藤さん「裁判員は、衆議院議員選挙の有権者から選ばれることになっています。18歳以上の国民であれば、いつ選ばれてもおかしくないということです。ただし、弁護士などは裁判員になることができません。一般国民の意見を刑事裁判に反映させることが目的なのに、法律家が裁判員になってしまっては意味がなくなるからです。

裁判員は、無作為にくじで選ばれます。まず、地方裁判所ごとに、管内の市区町村の選挙管理委員会により、選挙人名簿から翌年1年間の『裁判員候補者』がくじ引きで選ばれ、裁判員候補者名簿が作成されます。そして、事件の審理が始まる前に、その事件を担当する『裁判員』を裁判員候補者名簿の中からくじ引きで選びます。

裁判員の辞退は原則認められませんが、70歳以上であることや学生であることなど、辞退事由が認められれば、1年間裁判員候補者として裁判所に呼び出されることはなくなります」

Q.裁判員について、ネット上では「都市部に住んでいる人の方が選ばれやすそう」「地方に住んでいると選ばれにくそう」と考えている人もいるようですが、実際のところはどうなのでしょうか。

佐藤さん「先述したように、裁判員候補者名簿から裁判員が選ばれるのは、一定の重大犯罪が起こってからになります。

過去に、裁判員裁判の対象となる一定の重大犯罪が起こった事件数を見てみると、地域差があり、大都市圏などで多く発生する傾向がみられます。従って、事件が起こりやすい地域では裁判員に選ばれやすく、事件が起こりにくい地域では裁判に選ばれにくい傾向が生じるのではないかと思います」

Q.ちなみに、裁判員に選ばれる確率とは、おおむねどのくらいなのでしょうか。

佐藤さん「法務省によると、裁判員等に選ばれる確率は、全国で『1年あたり約0.01%』ということです」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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