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文章がうまいだけじゃダメ!? 売れる作家、売れない作家の“決定的な違い”

売れる作家と売れない作家の違いについて、コラムニストが現役作家の著書を基に考察します。

売れる作家と売れない作家の違いは?
売れる作家と売れない作家の違いは?

 出版不況と言われて久しいですが、それでも作家になりたいと願う人は多くいます。今回は「作家とお金」(本田健著、きずな出版)を紹介します。売れる作家と売れない作家の違いのほか、作家に必要な心構えがよく分かる本です。

「内容」「分かりやすさ」「独自性」「面白さ」が重要

 売れる作家と売れない作家とでは、何が違うのでしょうか。本田さんは両者の違いについて、「面白い本が書けるかどうか」「人の役に立つかどうか」だと主張します。

「あなたも、いままで読んだ中で、面白くて、読むのをやめられなかった本のことを思い出してください。ページをめくるのがもどかしいぐらい、『次どうなるの??』と思わせるような、ワクワクしたり、すごく共感したり、面白い内容の本です。誰かの役に立ち、人を感動させたり、喜ばせたり、ためになる本は、必ずと言っていいほど、売れるものです」(本田さん)

「本が売れないのは、内容が薄いか、分かりにくいか、二番煎じか、つまらないかのいずれかです。一般的に言って、作家になりたいと思う人は、独りよがりな傾向が強いようです。人と上手にやっていけないから、文章に思いをぶつけるわけで、人間関係が苦手だったり、そういう人は、自分のことを分かってほしいという思いから、文章を書きがちです」(同)

 本が売れないのは「内容が薄い」「分かりにくい」「二番煎じ」「つまらない」のいずれかが原因であるということです。売れない作家は自分を分かってほしいという気持ちで文章を書きがちですが、それでは人の役に立ち、面白いと思ってもらえるような本にはならないと本田さんは指摘します。

「それはベクトルが、自分の方に向かっているからです。『私のことを分かってほしい。だって、こんなに苦しいんだから。こんなにつらくて悲しいんだから』といったことを延々と書かれても、読んでいる方は戸惑います。たとえば、両親との葛藤を抱えた作者が、虐待などの赤裸々な思い出を延々と書き連ねていくと、読者は苦しくなってしまいます」(本田さん)

「作者が絶望の中から、希望を見出して再生していく様子が描かれていると、読者もまた、希望を見出すことができます。売れる作家は、自分の中にある葛藤、苦しみ、悩み、絶望を自分の中で熟成させて、作品に昇華しています。作家の内面で起きた浄化プロセスのおかげで、紡ぎ出される世界に、読者は心をわしづかみにされ、共感や感動を覚えるのです」(同)

派手なキャッチコピーに要注意

 出版業界の調査研究機関である、公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所が1月24日、2024年の出版市場規模を公表しました。同研究所によると、紙と電子書籍を合わせた出版市場(推定販売金額)は前年比1.5%減の1兆5716億円で、3年連続の前年割れだといいます。ただ、紙の書籍については既存店で回復傾向が見られ、文芸書、学習参考書、ビジネス書が好調だということです。

 出版不況と言われながらも、出版には根強い人気があります。有名な著者が開催するセミナーは満員御礼で、出版コンサルタントと名乗る人たちも増えました。

 話はそれますが、書店で本を買うときの注意点について解説します。ビジネス書は自分の知識やスキルを向上させるための有益なツールですが、中には品質の低いものや、実際に役に立たないものもあります。特に、ビジネス書を選ぶときには、内容の薄い派手本に注意しなければいけません。

 最近の本は、カバーデザインや色のバリエーションが豊富です。書店で少しでも目立たせるために原色カラーを使ったり、エンボス加工をしたりするものも少なくありません。見た目が魅力的なのはいいのですが、内容が伴わない、派手なタイトルや帯だけに惑わされないことが肝要です。

 “タイトル詐欺”にも注意しましょう。ビジネス書の場合、ヒットした本があると、その本のタイトルや内容をコピーしたような類似書が次々と出版される傾向にあります。例えば「~が9割」「~がよくわかる本」などです。二番煎じの本がヒットするのはまれです。タイトルは大事ですが、タイトルだけで売ろうとする本にも注意してください。

 帯には、「仕事の効率が100倍アップ」「誰でも簡単に億を稼ぐ」「たった1分で人生激変」といった刺激的なフレーズが使われているものがあります。しかし、これらはあくまで読者を引きつけるための宣伝文句であり、本の内容や品質を保証するものではありません。タイトルや帯だけで本を選ばず、中身や著者の経歴などをチェックすることが大切です。

 高い評価を得ている本は、普遍的な真理を教えてくれるものが多いと思います。何を読むかは個人の自由ですが、同じジャンルの本に飽きてしまった場合は、自分の得意ではない分野や新しいトレンドに関する本にも挑戦するのもいいでしょう。

 本書では、作家になって20年以上になる著者が、日本のみならず、海外での出版経験、世界中を講演している経験から知った出版事情を紹介しています。作家という仕事のほか、その働き方について非常に参考になる本です。作家志望の人はぜひ読んでみるのをお勧めします。

(コラムニスト、著述家 尾藤克之)

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尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、著述家 尾藤克之

コラムニスト、著述家。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。代表作として『頭がいい人の読書術』(すばる舎)など21冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も絶賛公開中。

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