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「中立」から「主張」へ 進むナレーションの“自由化”はテレビ成熟の証し?

「中立」から「主張」へ、ナレーター以外の起用…など、テレビのナレーションの世界で進む自由化について、筆者が概観します。

りゅうちぇるさん。本業ではないタレントが起用されるケースも増えた
りゅうちぇるさん。本業ではないタレントが起用されるケースも増えた

 テレビで耳にする「ナレーション」に「常識破壊」が起きているといいます。「中立」から「主張」へ▽ナレーター以外の起用▽ナレーションの書き手も本職以外が担当――。今回は、進むナレーションの自由化を探ります。

背景にSNS? 主張するナレーション

 これまで中立性が重んじられていたナレーション。これに変革をもたらした番組を挙げるならば、「世界の果てまでイッテQ!」「月曜から夜ふかし」(ともに日本テレビ系)と「水曜日のダウンタウン」(TBS系)の3番組で異論はないでしょう。

「イッテQ」では、NEWSの手越祐也さんがチャレンジに失敗するたび、ナレーターが「イエーイ」と歓喜。7月25日の「水曜日のDT」では、「ロケ回りの許諾に寛容でおなじみ・熱海」と、どこか別の場所が寛容ではないことを遠回しに揶揄(やゆ)する言い回しも見受けられました。

「夜ふかし」でも、渋谷で出会った色が黒すぎる日本人男性に「女性ウケは?」と質問。「超悪いんスよ~!」と笑うと、ナレーターから「でしょうね」。視聴者のツッコミを先回りして笑いにする、これもまた既存の考え方にはなかった形です。

 こうした、作り手個人の感情が乗っても許容されるようになったのは、SNSの発展と無関係ではないでしょう。上記のようなナレーションは、まさにツイッターのつぶやきさながらの、人が心の奥底に隠していた本音。“悪感情”たっぷりのナレーションが浸透したのは、以前は考えられませんでしたが、国民がSNSによる炎上を大なり小なり経験したり、見聞きしたりすることで免疫がつき、ある意味「笑える」余裕も出てきた証拠ではないでしょうか。

ナレーションが「ねたフリ」「ボケ」まで担当

 さらに、ナレーションの役割が拡大していることが見て取れる番組があります。それが「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)です。

 7月31日の同番組では、大久保佳代子さんと、いとうあさこさんがシンガポール旅へ。その途中で出てきた現地の煮込み料理「バクテー」の味を解説中、ナレーターが「じっくり長時間煮込むことで肉の雑味がなくなり、旨味だけを凝縮。ほろほろした肉の食感とあふれる旨味。さらに濃密なスープ」と言った後、続けて「ウエンツさんもサンシャイン池崎さんになっちゃうほど」と、スタジオにいたウエンツ瑛士さんに“ものまね”をリクエストしたのです。

 ウエンツさんは、特にこのロケには関係のない立場でしたが求めに応じ、「ジャスティス!」とワイプの中で池崎さんのギャグを放ち、笑いを誘っていました。もちろん、この数秒間はVTRの中でもナレーションもなく、ウエンツさんのネタ待ちをしていました。

 また、Hey! Say! JUMPの有岡大貴さんがグルメロケをしているVTRで、ナレーターから飛び出した言葉は「小学生アイドルが試食する」。童顔で少年らしさが残っているため付けられたあだ名ですが、これを見ていたスタジオの有岡さんが「待て待て!」とツッコミを入れる場面もよく見られます。

 さらに、いとうさんに対してナレーションは「あさこが生まれたのは大正時代」とボケてみせ、スタジオのいとうさんも「105歳です」とボケに乗るなど、ナレーションがまるでMCのような立場で出演者を翻ろうし、クロストークを成立させています。

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河瀬鷹男(かわせ・たかお)

芸能ライター

キャリアスタートはテレビ番組の制作。2014年頃から、Yahoo!ニュースやLINEニュースなど多くのニュースサイトに記事を配信している。主に、芸能系の分析を得意とする。