夏に「冷え性」なぜ? 甲状腺&血管に問題も 改善法8選を専門家が解説
気温が高い夏に冷え性になるのはなぜなのでしょうか。冷え性の原因や改善法について、東洋医学にも詳しい薬剤師が解説します。

「冷え性」と聞くと、秋から冬にかけてなりやすい印象がありますが、中には、夏に冷え性に悩まされる人がいます。この場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。冷え性を改善するには、どういった取り組みが有効なのでしょうか。気温が高い時期に冷え性になる原因や改善法などについて、東洋医学にも詳しい、薬剤師の箕浦雅子さんに聞きました。
自律神経が乱れると体温調節機能が低下
Q.気温が高い夏に冷え性に悩まされる人がいますが、どのような原因が考えられるのでしょうか。
箕浦さん「東洋医学に用いられる五行学説では、夏は『火』の季節であり、心臓と小腸の経絡が影響を受けやすいとされています。また、五行学説の観点から見ると、過度な熱が冷えと結びつくこともあります。
例えば、暑さに対応するために、体が過剰に冷やそうとしたり、逆に熱を持ち過ぎてエネルギーが消耗されたりすることで、結果として体の冷えが生じることもあります。一般的に夏に冷えが起きる原因として、次のようなことが挙げられます」
(1)冷房の影響
夏はエアコンや扇風機を使用することが多いですが、冷房の冷たい空気は下に落ちるため、特に足元が冷え過ぎることがあります。また、室内と屋外との温度差が大きいと、体温調節が難しくなり、体が冷えやすくなります。
(2)冷たい飲食物の摂取
暑い時期は、熱中症予防のために冷たい飲み物やアイスクリームなどを多く摂取しがちです。しかし、これらは体を内側から冷やし、血流を悪くすることがあり、結果的に冷えを引き起こすことがあります。
(3)汗による冷え
夏場にたくさん汗をかくと、その汗が蒸発する際に体温が下がり、体が冷えることがあります。特に汗をかいた後、エアコンの効いた場所に入ると、急激に体温が下がりやすいです。
(4)自律神経の乱れ
夏は気温や湿度の変化が激しく、自律神経が影響を受けやすい季節です。自律神経が乱れると、血液循環や体温調節がうまく機能しなくなり、体が冷えやすくなります。
Q.夏に冷え性になりやすい場合、何らかの病気の可能性はあるのでしょうか。
箕浦さん「冷えそのものが病気というわけではありませんが、体調のバランスが崩れているときに、体が冷えることがあります。また、冷えは万病のもとといわれているため、注意が必要です。
夏に冷え性になりやすい場合、『自律神経失調症』『甲状腺機能低下症』『貧血』などが関係している可能性があります。順番に説明します」
(1)自律神経失調症
自律神経失調症とは、自律神経がうまく働かない状態を指し、これにより体温調節機能が乱れやすくなります。すると、夏の気温変化に体が対応できず、冷えやすくなることがあります。自律神経失調症は、ストレスや生活リズムの乱れによっても引き起こされることがあります。
(2)甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンが不足すると代謝が低下し、体が冷えやすくなります。特に夏でも寒さを感じる場合、甲状腺の機能に問題がある可能性があります。
(3)貧血
血液中のヘモグロビンが不足すると、酸素を全身に十分に供給できなくなり、手足が冷えやすくなります。夏でも冷えを感じる場合、貧血が疑われることがあります。
(4)低血圧
血圧が低いと血液の循環が悪くなり、特に手足の末端部分が冷えやすくなります。夏場に冷房の効いた場所に長時間いると、さらに症状が悪化することがあります。
(5)糖尿病
糖尿病によって血管や神経が損傷すると、血流が悪くなるため、夏でも手足に冷えを感じやすくなります。
(6)循環器系に問題
心臓や血管に問題があると、全身に十分な血液が送られず、冷えを感じることがあります。これは特に高齢者や既往症のある人に見られることがあります。
(7)更年期障害
特に女性の場合、更年期に入るとホルモンバランスが崩れ、体温調節が難しくなります。その結果、夏でも冷えを感じることがあります。
(8)栄養不足
栄養が偏った食事を続けると、エネルギー不足や代謝の低下が起こり、冷えやすくなることがあります。ビタミンやミネラルの不足は、エネルギー代謝に影響することがあります。
これらの症状がある場合は、自己判断せずに医師の診療を受けることをお勧めします。冷え性が続く場合のほか、疲労感やめまい、体重の変動など、他の症状とともに冷え性が現れる場合は、早めの診断と適切な治療が重要です。
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