先生も「様」? 「さん」は失礼? メールの「敬称」で気をつけるべきこと
ビジネスマナーにのっとった、正しい「敬称」の使い分けとはどのようなものでしょうか。メールの宛名の書き方について、マナー講師に聞きました。
メールの宛名の「敬称」について先日、SNS上で話題になりました。敬称には「様」「殿」「先生」などさまざまなパターンがあり、「いつも迷います」「先生に『様』はだめ?」「『さん』だと失礼なの?」など、さまざまな声が上がっています。
メールにおける敬称について気を付けるべきことは何でしょうか。「マナーは互いをプラスにするもの」をモットーに、国内外の企業や大学などで人財育成教育やマナーコンサルティングを行うほか、NHK大河ドラマなどのドラマや映画で俳優や女優へのマナー指導を行い、マナー評論家として国内外で80冊以上のマナー本を出版しているマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに聞きました。
オールマイティーな「フルネーム+様」
Q.個人宛てのメールにおける、敬称のマナーについて教えてください。
西出さん「マナーは『絶対的な決まりごと』ではなく、全員にとっての正解というものはありません。ビジネスパーソンの場合、敬称の書き方についても、会社や組織ごとにそれぞれのルールがあるものです。まずは、上司や先輩から自社の方針を学び、それにならうとよいでしょう。
最もオールマイティーに使える敬称は、『様』です。『様』には、目上の方に使用する『樣』という漢字もあり、使い分ける人もいます。最近、『様』を『さま』と平仮名で書く人が増えていますが、受け取る側としては、『様』の方が敬いの印象が強まる傾向にあります。平仮名の『さま』は、柔らかい印象を与えるので、それを好む人もいますが、マナー的観点からすると、目上の方には控える方が無難です。
『殿』は一見、目上の方に対する丁寧な敬称のように思われますが、本来は目下の人に使用するものと言われています。官公庁関連では現在も使用されることがありますが、一般的なビジネスシーンにおいては使わない方が賢明でしょう」
Q.特に気を付けるべきケースはありますか。
西出さん「例外として、教師や弁護士、医師などの『師士業』に携わる人に対しては、『様』ではなく『先生』と書くのが一般的です。士業の中には、敬称に対して敏感な方が少なくありませんから、気を付けて使い分けましょう。『相手の立場に立つ』ことがマナーの大前提です。
一方、『先生』と書かれる側もおごりは禁物だと考えます。学生からのメールで『様』と書かれ、不快感を覚える教員もいるようですが相手は若者です。そうした時は、学生に社会人としてのマナーを教え導くのが、教員のあるべき姿ではないでしょうか。
特に、文字だけのコミュニケーションとなるメールでは、口頭で伝えるより真意が伝わりにくく、誤解が生じる場合もあります。どのような立場や職業であっても、相手を思いやった言葉を使い、お互いにとってプラスとなる心配りをすることが大切です」
Q.相手の名前はどのような書き方が適切でしょうか。
西出さん「最初に書く相手の名前は、苗字のみよりもフルネームを書く方が丁寧です。メールの末尾に、署名を挿入している人は多いと思いますが、その署名には自身のフルネームが書かれていると思います。自分の名前がフルネームならば、相手の名前もフルネームにする方が、敬う気持ちを表したマナーと言えます。
さらに、初めてメールを送る場合は、相手の社名・部署・肩書を全て書くと、より丁寧な印象が伝わるでしょう。2回目以降のやり取りは氏名のみで問題ありません。
ただし、自社の方針や相手が苗字だけでよいという場合などは、この限りではありません。特に海外の方とのメールなどでは、何度かやり取りをしている相手であれば、名前だけの方が親しみやすさがあるということで、好まれることもあります」
Q.その他、メールにおける敬称について注意すべきポイントはありますか。
「繰り返しになりますが、マナーは、絶対にそうしなければならないという決まりではありませんし、相手の受け取り方次第でその型は変わります。だからこそ、誰が見てもマイナスに感じることのない丁寧な書き方を心掛けることで、リスクを減らすことができるのです。
メールは元々、簡易で効率のよいコミュニケーションを取るために広く利用されるようになったわけですが、時代の変化と共に、丁寧なコミュニケーションも必要となってきました。ビジネスシーンにおいては、いわば書面と同等の存在となり、メールにも“きちんと感”が必要とされる時代になってきたのです。
敬称を気にしたり、フルネームで書いたりすることが面倒と思う人もいるかもしれませんが、ひと手間かけることを積み重ねていくことで、印象が格段にアップすることもあります。ひいては、それが良好な関係性に発展していくことでしょう。メールがお互いにとってプラスのツールとなることを願っています」
(ライフスタイルチーム)
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