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生活&ビジネスに支障も…「夫婦同姓」はいつから導入された? 歴史的背景は? 妻の名字に変更した評論家が解説

女性の95%が結婚で名字を変更

 今回の経団連の要望は、パスポートの氏名とビジネスネームが一致しないことで、海外出張先のホテルで宿泊を断られるなど、具体的なビジネスの場面で障害があることを訴えたものですが、これは以前から名字を変えた側の名義変更の負担として指摘されていました。 

 先述の内閣府の調査では、52.1%の人が、夫婦同姓について「何らかの不便・不利益があると思う」と答え、その8割以上が「名義変更の負担があるなど、日常生活上の不便・不利益がある」と答えています。

 実態として、結婚して名字を変える人は女性が圧倒的に多く、内閣府によると、全体の約95%を占めるということです。

 ちなみに筆者は、結婚して名字を変えた5%の男性のうちの一人です。名字の変更後に起こった出来事は、大半の女性にのしかかる負担を考える上で貴重な経験でした。まず、両親から「婿養子になるのか」「なぜこちらが名字を変えるのか」と言われたことが印象に残っています。

 最終的に両親は妻の名字に変更することを受け入れてくれましたが、家族内または家族同士のトラブルに発展するケースも少なくないと聞きます。どちらかの家族が名字を変えることに反対して、それが結婚の障壁になったり、男女の仲に亀裂が入ったりするのです。当然、仕事に支障を来すため、双方が「変えたくない」と主張し、平行線をたどる場合もあります。

 筆者の場合は、免許証や通帳、社会保険など、諸々の手続きが思いのほか手間がかかったほか、職場で旧姓を「通称」として使用することを選んだこともあり、いろいろと面倒な確認作業が生じました。もしこの名義変更に伴う社会的なコストを計算すれば、心理的なストレスも含めて相当なものになるのではないでしょうか。

 仮に現在提案されている選択的夫婦別姓制度が実現すれば、行政の窓口など公的な手続きをはじめとする膨大なコストの削減となり、個々の負担も驚くほど解消されると思います。改正点としては、夫婦同姓と夫婦別姓のいずれかを選べるようにするだけです。これまで通り同姓が良い人はそれを選び、別姓が良い人はそれを選ぶだけです。

 それでもまだ不安な人たちは存在することでしょう。「夫婦別姓の人ばかりが増え、家族や夫婦の形がおかしくなるのではないか」と考える人たちです。これにはまったく根拠がありません。先述のように明治以前は、庶民に名字はなく、明治になってもしばらくは夫婦別姓だったのですから。

 さらに言えば、制度の改正で夫婦別姓が急増するとも思えません。女性の場合、夫の名字に変えることで結婚を実感する人も多いからです。夫婦別姓が可能になった場合にそれを選ぶかどうかを聞いた民間の調査があります。特に女性の夫婦同姓に対する憧れが強いという結果が出ており、夫婦別姓を選ぶと回答したのは男女とも2割程度でした(※4)。

 古くから続いてきた制度のひずみを修正したり、変更したりする際、まるでその制度によって特定の価値観が支えられてきたような誤解がよく起こります。文化や慣習は非常に強固なものなので、通常、オプションが1つ増えた程度では容易に変わりません。なぜ不安を口にする人がいるのでしょうか。

 それは「これが当たり前で普通のこと」というように、自分を正当な場所に位置付けることで得られる安心感が失われつつある時代だからです。けれども、私たちにとって、これは自由に自分を定義できるという利点と表裏一体のものです。そのような社会変化の必然をしっかりと見据えた上で、誰かを批判したくなる誘惑と向き合う必要があるようです。

【参考文献】
(※1)「家族の法制に関する世論調査(令和3年度)」(内閣府)
(※2)「法学セミナー」152号/「民法改正二十年(回想録捨遺集)」(日本評論社)
(※3)「参議院議員糸数慶子君提出選択的夫婦別姓に関する質問に対する答弁書」
(※4)「20代~30代独身男女、『夫婦別姓』賛成5割、実際に『別姓にしたい』は2割~女性の5人に1人は夫婦同姓に憧れないと回答~」(QOM総研)

(評論家、著述家 真鍋厚)

【画像】「知らなかった!」これが“夫婦同姓”のデメリットです

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真鍋厚(まなべ・あつし)

評論家・著述家

1979年、奈良県生まれ。大阪芸術大学大学院修士課程修了。出版社に勤める傍ら評論活動を展開。著書に「テロリスト・ワールド」(現代書館)、「不寛容という不安」(彩流社)、「山本太郎とN国党 SNSが変える民主主義」(光文社新書)。

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