「3食昼寝つきでいいじゃないか」 育児をしない“暴言夫”を「イクメン」に変えた妻の“好判断”
夫の暴言をきっかけに、状況を180度変えたタフな妻
紀子さん(36歳、仮名)は看護師。夫の隆弘さん(45才、同)は営業マンです。産後間もない当時、隆弘さんは部署が変わったばかりで、猛烈に忙しい日々を過ごしていました。昇進がかかる大事な時期。そのため、育休を取ることは全く考えていませんでした。
そのため産後、隆弘さんはほとんど育児を手伝うことがなく、紀子さんはワンオペ状態。腰が痛み、頭がボーッとするなど身体的、精神的つらさを度々、隆弘さんに吐露していました。
そんなある日、夜泣き対応で眠れていない紀子さんが「しんどいわ」と話し始めると、隆弘さんはこう言いました。
「3食昼寝つきで、かわいい子どもと一緒にいられるんだからいいじゃないか。俺がどんな思いをして働いていると思っているんだよ。代われるもんなら代わりたい」
それを聞いた紀子さんの何かがプツンと切れました。怒りを通り越し、この状況を変えようと決めました。「だったらそうしてあげる」と隆弘さんに告げます。
自分の育休は早々に切り上げる。その後は、保育園に入るまでは隆弘さんが育休を取ってくれ、と。自分の働き先にはそのように伝えて、復帰の手続きを進めるから、あなたもそうしてほしい、と。
慌てたのは隆弘さんです。急にそんなことができるわけがない、と紀子さんに謝り、なだめました。確かに自分が復帰した方が、お互いにとっても、子どもにとってもよいと判断した紀子さんは、聞く耳を持ちません。
隆弘さんが会社へ育休を申請したところ、勤務先が男性育休推進企業であったため、すんなりと希望は受け入れられました。隆弘さんは拍子抜けしたそうです。
「あのとき、夫に育休を取ってもらうという判断をして本当によかったです。当時は本気でブチ切れましたが。それが、今となっては全ていい結果につながりました。
子どものことは本当に50:50でできています。かかりつけの病院なども『どちらかしか知らない』なんてこともないですし。保育園の情報伝達も完璧です。夫も、自分がやらないといけないと気負っていた仕事が、あっさり他の人へ引き継がれるのを目の当たりにして、仕事への考え方が変わったそうです。『俺はコマの一つやったんか』と。暴言を吐いてもらって本当によかったです。いいけんかでした」
何がきっかけになって、いい結果を生むことになるかは分かりません。大切なことは、夫婦で沸点に達するくらい言い争ったときに我慢することなく、納得のいく結果になるよう働きかけることなのではないでしょうか。もちろん、具体的に筋道を立てて。大事なのは予測力と決断力です。
育休の仕組み、育児の大変さに理解のない夫なのだとしたら、どうすれば気付いてもらえるか。状況を変えることができるのは、他の誰でもない自分だけなのです。
(「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美)
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