実は“30歳”を境に脳が活性化 医師が主張する「学生脳」と「大人脳」の違い
30代と学生時代の脳の働きの違いについて、脳内科医の著書から読み解きます。
年齢を重ねると若い頃と比べて、「物事の習得の仕方が変わってきたな!」と思うことがあります。実は脳には年代別に効果の上がる学習法が存在します。脳の正しい使い方で効果が加速度的に変化するのです。今回は、「一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方」(サンマーク出版、加藤俊徳著)の中から、脳の使い方について紹介したいと思います。著者の加藤俊徳氏は、脳内科医であり医学博士、研究実績も豊富な脳の専門家です。
脳の機能が成長するのは30代以降
脳科学的には、20代までの“学生脳”は、器官として未熟で脳が持っている本来の力をちっとも発揮できない状態だと、加藤さんは著書で主張します。どういうことなのでしょうか。
「脳力を体力に例えてみましょう。子どものときと今を比べて、どちらが体力があったでしょうか? 子どものときですよね。私自身、学生時代は運動に打ち込んだのですが、学生時代の方が圧倒的に体力がありました。どんなに動いても疲れにくいし、ちょっと休んだだけで回復できる身体を持っていました」(加藤さん)
「しかし、体力はありましたが、できることは限られていなかったでしょうか。体力が有り余る5歳児も、時速100kmの球を投げることはできません。陸上でもテニスでも野球でもサッカーでも、プロアスリートは体力があった高校時代よりも、大人になってから全盛期を迎えます。一番の記録が生まれるのは、体力があった若い頃よりも、大人になってからです」(加藤さん)
誰もが、若い頃の方が元気だったと思います。しかし、脳になると話は別です。本当の“脳力”が発揮できるのは大人になってからです。つまり、頭がよくなるチャンスは「大人になってからの方が多い」と、加藤さんは続けます。
「脳が成人を迎える30歳を境に、脳の機能は成長していくため、本来の脳の力を発揮できるようになります。学生脳と大人脳を比較すると、大人脳に軍配が上がります」(加藤さん)
中高年の脳はポテンシャルが高い
学生時代に「あまり勉強をしていなかった」「勉強が得意ではなかった」「勉強が面白くなかった」という思い出はありませんか。または、「勉強をサボったことを深く後悔している。今だったらしっかり聞くのに」と後悔している人はいませんか。こうした現象は、脳科学的に当たり前だと加藤さんは言います。
「私は、かねてから脳の成人式は30歳と言ってきました。脳が構造上、『大人になった』という状態になるのは30歳だからです。個人差はありますが、学生時代の脳と30代からの脳とでは脳の働き方が変わります。よく知らないと、若いときの脳の方が、イキイキしていて、脳としてもよく働き、だから物覚えもよかったんだと思ってしまいますよね」(加藤さん)
「しかし、これは間違い。脳の働きから言えば、大人になってからのほうが断然よく働きますし、記憶力、判断力、決断力など、あらゆる面から見ても、“学生脳”より“大人脳”のほうがレベルが上なのです。つまり大人の勉強法があるのです」(加藤さん)
大人になってから、資格取得や昇級試験、語学の勉強など仕事で必要に駆られて勉強を始めたことはありませんか。ところが、昔みたいに覚えられないという人がいます。「あれ、暗記モノは得意だったのにと……」。
加藤さんは、この現象について、「学生時代と全く同じやり方で勉強しているなら、本当にもったいないことをしています。なぜなら、高校生くらいまでの自分と大人になってからの自分では、脳の働き方がガラリと変わってしまっているからです。残念ながら、大人になってから、学生時代の勉強法で勉強をしても、費やした時間に比例する効果は得られないのです」と、力説しています。
人生100年時代に楽しく過ごす
大人になってからの勉強につまずいている人がいます。今、30代を過ぎているならば、過去の栄光は一度忘れ、大人になった今の自分の脳に合う勉強法に切り替えていく必要があります。年齢はただの言い訳にすぎないのだと、加藤さんは言います。
“人生100年時代”を楽しく過ごすには、丈夫な足腰や体力も必要ですが、脳を元気に保つことが肝要です。自分の脳に備わった”脳力”を信じて、人生の幕を下ろす瞬間まで、脳を成長させていきたいものです。本書は、脳の仕組みについて知りたい人に役立つことでしょう。
(コラムニスト、著述家 尾藤克之)
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