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産後、「物忘れがひどい」「ぼーっとする」…もしかして「マミーブレイン」かも? 産婦人科医が解説

産後の女性にみられることのある、集中力や記憶力の低下。「マミーブレイン」と呼ばれているこの症状について、産婦人科医に聞きました。

「マミーブレイン」とは?
「マミーブレイン」とは?

 産後に、「忘れっぽくなった」「ぼーっとすることが増えた」といった症状が現れることを指す「マミーブレイン」という言葉があります。産後の女性にみられることのある変調で、物忘れが増えたり、思考力が低下したりするなど、「頭が回らない」感覚に陥る状態のことをいうそうです。

 実際に「記憶力が落ちた気がする」「集中力が続かなくなった気が…」といった声も聞かれる「マミーブレイン」とは何なのでしょうか。神谷町WGレディースクリニック院長で産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

妊娠による“一過性”の認知機能の低下

Q.「マミーブレイン」とは何ですか。

尾西さん「『マミーブレイン』は、産後に記憶力が低下するなどの症状が出ることですが、“病気”ではなく、正式な医学用語もありません。

原因はまだはっきりとは分かっていませんが、過去の複数の研究から、妊娠によって記憶や遂行機能、処理能力などの『認知機能』が、妊娠中、一過性に低下することが報告されており、それがマミーブレインの症状として考えられています。一方で、妊婦さんの場合、妊娠していない女性と比較すると、表情への注意が増強するとの報告があることから、『社会認知機能』は向上していると考えられています。

産後のお母さんは、赤ちゃんの様子や表情から赤ちゃんの状態を感じ取り、赤ちゃんが要求していることに対して適切に応えなくてはなりません。このようなときに必要な能力が『社会認知機能』と呼ばれ、子育てにおいてとても重要になってくるのです。

つまり、妊娠において、子どもを育てるのに必要な社会認知機能が向上し、一方で記憶や遂行機能といった認知機能は低下させるという脳の使い方のシフトが起きていることが原因ではないか、との見解が有力です」

Q.マミーブレインの症状が出やすい女性の特徴はありますか。

尾西さん「きちんとしたデータは現在、研究が進められている段階ですが、子育てに関するストレスが大きい人、寝不足の人、家族の協力を得にくい状況にある人などは、マミーブレインのリスクが上昇すると考えられています」

Q.マミーブレインと思われる症状を自覚した場合、どうすればよいですか。放置しても問題ないのでしょうか。

尾西さん「いわゆる『マミーブレイン』であれば、数カ月で症状は徐々に軽快していきますが、似たような症状が出るものに『産後うつ』があり、注意が必要です。

『今まで好きだったことが楽しめない』『理由もなく涙が出る』『子どもをかわいいと思えない』『消えてしまいたいと思う』などの症状がある場合は、産後うつの可能性があるので、病院を受診しましょう」

Q.マミーブレインと思われる症状が出た場合、どんな対処法が考えられますか。

尾西さん「まずは『一時的なものである』ということを本人も周りも理解して、その時期を“乗り切る”方法を考えましょう。例えば、『何でもメモする』『大事なことはLINEやメールなど、後で確認できるように残す』『睡眠を取れるときに取る』なども有効なので、試してみてください」

(オトナンサー編集部)

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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