丸形、角形…ペットボトル飲料、形はどう決まる? “底の突起”知られざる役割 キリン&サントリーに聞く
ペットボトル飲料の形は、どのような基準で決められているのでしょうか。メーカー2社に聞きました。
コンビニエンスストアやスーパーに行くと、「丸形」「角形」など、さまざまな形のペットボトル飲料が売られています。炭酸飲料は丸形のペットボトル、ジュースは角形のペットボトルがそれぞれ採用されている印象がありますが、実際にペットボトル飲料の形は、どのような基準で決められているのでしょうか。飲料メーカーのキリンとサントリーに聞きました。
炭酸飲料は「丸形」で変形を防止
キリンホールディングス(東京都中野区)R&D本部 パッケージイノベーション研究所 主務の大久保辰則さんに聞きました。
Q.ペットボトル飲料は商品によって形が異なりますが、どのような基準で決められているのでしょうか。
大久保さん「当社の場合、主に以下の3点を基準にペットボトル飲料の形を決めています」
(1)内容液に応じたボトルを採用
炭酸飲料やホット販売の商品の場合、炭酸ガスや加温の影響を受け、ペットボトルの内側は、外側よりも気圧が高い状態となります。すると、ボトルの内側の表面全体が均等に圧力を受け、球状に膨張しようとします。そこで、丸形のボトルを採用し、表面への圧力を均等にすることで変形を抑止しています。もし炭酸飲料やホット販売の商品を角形のボトルに入れると、円形に変形する可能性があります。
(2)ブランド戦略に合わせたボトルを採用
ブランド戦略として、お客さまに提供したい価値を踏まえてボトルの形状を決めています。例えば、ダイヤモンドのような凹凸が特徴の「午後の紅茶 ストレートティー」のボトルは、当社独自の感性工学を用いた解析により、“紅茶飲料ナンバーワンブランドとしての正統感・上質感”というイメージにふさわしい形状デザインを100種類以上の組み合わせから抽出し、2018年に開発しました。
(3)販売形態に合わせて、ボトルのデザインを変更
例えば、「午後の紅茶」の500ミリリットル商品は、店頭販売用と自動販売機用があります。このうち、自動販売機用の商品については、機内への補充や購入時の取り出しを円滑にするため、ボトルの高さや太さ、デザインを変更しています。
Q.炭酸飲料が入ったペットボトルの底には突起がありますが、どのような役割があるのでしょうか。
大久保さん「炭酸飲料用のボトルの底に設けられている5つの硬い突起は、『ペタロイド』と呼ばれており、品質を維持する上で重要な部分です。炭酸飲料は内容液に溶け込んだ炭酸ガスの影響で、ボトルの内側から外側へ圧力が強くかかるため、通常のペットボトルでは底が出っ張り、縦に置くのが困難となります。そこで、ボトルの底部の強度を高めつつ、縦に置けるようにするために、ペタロイドを設けています。
ちなみに、当社製品のペットボトルキャップに記載されている『KIRIN』のロゴは、銀色と金色の2種類です。銀色のロゴは炭酸飲料に使用しており、炭酸ガスの圧力に耐える『耐圧性能』があります。一方、金色のロゴのキャップは、炭酸飲料以外の商品に使用しております。ロゴを色分けしているのは、炭酸飲料とそれ以外の飲料を見分けるためです」
Q.「生茶」のペットボトルは、角形で先端付近が細長くなっています。なぜこの形のボトルを採用したのでしょうか。
大久保さん「当社が『生茶』ブランドに角形の『グリーンエコロジーボトル』を採用した理由は、ペットボトル単体ならびにケース梱包(こんぽう)状態での持ち運びやすさや商品の保管・輸送効率を重視したためです。2022年4月から採用を開始しましたが、これによりラベルの短尺化や、ラベルが簡単にはがせる『ロールラベル』化が可能となったほか、プラスチック使用量とGHG(温室効果ガス)排出量の削減に成功しました。
525ミリリットルサイズの場合、パレット(荷役台)1台当たりの積載効率が従来の1.25倍に向上し、保管・輸送効率を改善することができました。
また、先端付近が細くなったペットボトルを採用している理由ですが、2016年から採用した鶴首形状のボトルが、多くのお客さまから支持されたためです。そのため、現在もこの形状を踏襲しています。
このほか、生茶に限らず、大型サイズのペットボトル飲料においては、軽量化を進めており、使用するPET樹脂の量を少なくすることで環境負荷を低減しています。2リットルボトルについては、2019年に、2003年時点のボトルの半分以下の重さにまで軽量化を進め、国内最軽量を実現しました」
Q.角形のボトルから丸形のボトルに変更するなど、ペットボトルの形を変えた場合、飲料の味に変化が生じる可能性はあるのでしょうか。
大久保さん「基本的にペットボトルの形を変えても、飲料の味そのものに変化が生じることはありません」
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