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気合や我慢の“根性論”では無理? 高齢者の願い「子どもに迷惑をかけたくない」を実現する、たった一つの方法

「子どもに迷惑をかけなくて済む」環境を

 内閣府の「高齢社会白書」(2019年版)によれば、介護が必要になった主な原因の上位は、「認知症」「脳血管疾患(脳卒中)」「高齢による衰弱」「骨折・転倒」となっています。であれば、子どもに迷惑をかけないためには、これらを防止、あるいはこれらへの素早い対処体制があればよいということになります。

 会話や社会参加、運動が盛んな場所にいれば認知症の防止になりますし、高齢による衰弱も予防できます。脳卒中になったときにも、すぐに助けが呼べて対応してくれる人がいれば、後々の症状が全く違ってきますし、段差や階段が少ない家、歩きやすい環境に住めば、骨折や転倒も未然に防げるでしょう。

 子どもに迷惑をかけないためには、気合や我慢といった根性論で終わらせるのではなく、「要介護になりにくい環境に住まう」という具体的な行動が必要だということです。もちろん、年を取って家財道具を整理したり、環境を変えたりするのは大変でしょうが、住み替えを含めて高齢期にふさわしい環境を整えた高齢の方々は、何年にもわたって子どもに負担を負わせ続ける可能性を考えて、その大変さを乗り越えられたのだろうと思います。

 子どもに負担を負わせず、不安を与えない高齢期を実現するには、高齢期の心身の状態や高齢期特有のリスクに見合った環境や住まいを手に入れることが、おそらく最も重要であり、筆者には他の方法が見当たりません。そして、高齢期にふさわしい環境は、「子どもに迷惑をかけない」だけでなく、自立した暮らし、自律的な生活や尊厳、人間関係の維持と帰属、承認欲求の充足といったさまざまな要素も満たすことになるはずです。

(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)

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川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

NPO法人「老いの工学研究所」理事長、一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

1964年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルートグループで人事部門を中心にキャリアを積む。退社後、2012年より高齢者・高齢社会に関する研究活動を開始。高齢社会に関する講演や執筆活動を行うほか、新聞・テレビなどのメディアにも多数取り上げられている。著書に「年寄りは集まって住め ~幸福長寿の新・方程式」(幻冬舎)、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「チームづくりのマネジメント再入門」(メディカ出版)、「速習! 看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「なりたい老人になろう~65歳から楽しい年のとり方」(Kindle版)、「なが生きしたけりゃ 居場所が9割」(みらいパブリッシング)、「老い上手」(PHP出版)など。老いの工学研究所(https://www.oikohken.or.jp/)。

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