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現代の高齢者は“若返っている”? 元気と健康を維持する、たった一つの「若さの秘訣」

昔に比べて若々しい、現代の高齢者。筆者はその背景に、高齢者と若い世代の触れ合いにみられる“変化”があると指摘します。

“若々しい高齢者”が増えた背景とは…
“若々しい高齢者”が増えた背景とは…

 昔に比べて今の高齢者がとても若々しいのは、見た目だけでなく、体力検査などの数値においても明らかになっています。その要因の一つとして、NPO法人「老いの工学研究所」理事長を務める筆者は、3世代同居が激減した(1986年の約45%から、2021年は約9%となった)ことが大きいと見ています。

 一つには、子や孫と一緒に住んでいて「何でもしてもらえた環境」から、高齢者だけで住むようになることで「何でも自分でしなければならない環境」へと変化し、頭や体を日常的に使うようになったこと。もう一つは、高齢者だけで住んでいると、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ばれたり、年寄り扱いされたりする機会が減って、年を取った実感がなくなり、気持ちが若くいられるということがあるでしょう。

 現代の高齢者の“若返り”の理由が、「人の助けを借りずに自分でやるようになったこと」「年寄り扱いされなくなったこと」だとすると、高齢者が若々しくいる秘訣(ひけつ)は、「同世代で集まる」暮らしではないかと思います。世代間交流がダメだというわけではありませんが、若い人との触れ合いは、「頭と体を使わなくなる(何でもやってもらえる)」「年寄り扱いされる(老けた、衰えたと感じやすい)」という点で、デメリットもあるということです。

高齢者が同世代で集まるメリット

 高齢者が同世代で集まるメリットは、他にもたくさんあります。

 まず、心身の痛みやつらさをシェアすることができます。年を取れば誰でも体のどこかに不調が出てきますし、さまざまな喪失経験で精神的なダメージを受けるケースも増えます。そんなときに、同じような経験を持って共感してくれたり、情報やアドバイスをくれたりする仲間は同世代に限られます。

 また、同世代で集う機会は規則正しい生活につながります。仕事や子育て、学校に通うといったルーティンを持つ人たちと高齢者では生活時間が異なりますが、同世代なら生活時間が似ていて時間が合わせやすいので、集まって何かをすることを、習慣として日常に組み込むことが可能になります。集まれば、他者の視点を意識しますから、身だしなみを整えたり、清潔感や健康状態に気を配ったりすることにもつながり、生活習慣はよりよくなっていきます。

 他にも、同世代で集まれば「参考になる」「尊敬できる」「目標になる」といった人がいるでしょうから、そうした出会いはこれから先の人生に張りをもたらします。先日、80歳で韓国語を学んでいる女性に「立派!」と申し上げたら、その語学スクールの同じクラスにいる92歳の男性が勉強熱心で、クラスで一番成績がいいので、いつも励みになっているとのことでした。同世代だからそう思えるわけで、若い人の成績がいいなら「若いからできるのね」で終わってしまいそうです。

 同世代で集まると、役割や居場所が生まれます。若い人たちとの集まりだと、「ここは私たち若者がやりますから、ゆっくりしていただいて…」と年寄り扱いされますし、高齢者側も「自分がしゃしゃり出なくても、若い人たちに任せて…」と遠慮してしまいますが、高齢者だけで集まったら、そういうわけにはいきません。集まってやる内容の企画や段取り、さまざまな雑用を、皆で手分けして行わねばならず、自然に集団の中での役割や居場所が生まれてきます。役割や居場所は“褒め合い”や“認め合い”となり、承認欲求や効力感を満たしていきます。

 最後に、同世代で集まると健康習慣の継続・強化が期待できます。同世代は同じような体力なので、例えばウオーキングをするにしても、互いに加減することなく同じようなペースで歩けますし、負けん気が出てきて「もうちょっと頑張ろう」という気になります。若い人たちとでは、そうはいきません。また、一人でウオーキングを続けようと決意しても、天気が悪かったり、気が進まなかったりすれば「今日はやめておこう」となりがちですが、皆でやっていると、そんな日でも参加する気が湧いてくるでしょう。

 もちろん、「1人で気ままに過ごしたいので、集まるなんておっくうだ」という人が、特に、高齢男性に少なくないのは知っています。そして、それが悪いと言っているわけではありませんし、無理にでも集まるべきだとも思いません。確かに、「孤独は体に悪い(健康寿命を縮める)」という研究結果もありますが、だからといって、身体的健康を維持するために無理やり他者と交流するのもいかがなものかと思いますし、「それで衰えが早くなっても構わない」という生き方まで否定するつもりはありません。

 伝えたいのは、筆者がお会いしたたくさんの人たちを思い浮かべると、若々しい高齢者、健康を維持し続けておられる高齢者の共通点は、「同世代の集まりに参加している」「同世代で集まりやすい環境で暮らしている」以外に、思いつかないということです。元気や健康、若々しさを求める高齢者に向けて、健康食品やサプリメント、健康器具、化粧品などのさまざまな宣伝が行われていますが、何よりも効果的なのはただ一つ、「同世代で集まること」であると、筆者はほとんど確信しているということです。

(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

NPO法人「老いの工学研究所」理事長、一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

1964年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルートグループで人事部門を中心にキャリアを積む。退社後、2012年より高齢者・高齢社会に関する研究活動を開始。高齢社会に関する講演や執筆活動を行うほか、新聞・テレビなどのメディアにも多数取り上げられている。著書に「年寄りは集まって住め ~幸福長寿の新・方程式」(幻冬舎)、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「チームづくりのマネジメント再入門」(メディカ出版)、「速習! 看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「なりたい老人になろう~65歳から楽しい年のとり方」(Kindle版)、「なが生きしたけりゃ 居場所が9割」(みらいパブリッシング)など。老いの工学研究所(https://www.oikohken.or.jp/)。

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