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「褒める」or「甘やかす」で忍耐力のない大人になる?子育ての専門家に聞いた

「褒める子育て」を肯定的に捉える風潮がある一方、「忍耐力が欠如した大人になってしまう」など、否定的な声もあります。真偽はどうなのでしょうか。

「褒める」or「甘やかす」どちらの子育てが正しい?
「褒める」or「甘やかす」どちらの子育てが正しい?

 世の中には、「褒める子育て」を肯定的に捉える風潮がある一方、「注意や叱責に耐えられない」「思い通りにならないと心が折れる」などSNS上には、忍耐力が欠如した大人になってしまうという否定的な声もあります。その真偽などについて、子育て心理アドバイザーの雨宮奈月さんに聞きました。

「褒める」と「甘やかす」は違う

Q.「褒める」子育てをすると忍耐力が欠如した大人になるのではないか、と懸念する人がいるそうです。実際、そうなると思われますか。

雨宮さん「褒める子育てが直接の原因で、忍耐力が欠如した大人になるとは思いません。成長の過程で、失敗や挫折の経験値が足りないと忍耐力が欠如するかもしれませんが、『叱られること』が失敗や挫折とは限りません。たくさん褒められても、あまり叱られなくても、たくさんの経験をして忍耐を学ぶことはできます」

Q.「褒める子育て」が「甘やかす子育て」と同じように思われていることが、否定的な声が出る理由のように思います。この二つの子育ての違いは何でしょうか。

雨宮さん「『褒める子育て』と『甘やかす子育て』は根本的に違います。褒める子育ては、褒める部分と叱る(過ちを指摘する)部分を使い分けて褒めることで、よい行動を明確にしていく子育てです。

一方、甘やかす子育ては、子どもが何をしても、かわいければよい、今が良ければよい、と何でも受け入れてしまう子育てです。このような子育てをすると、よい行動と駄目な行動を理解するチャンスを得られないまま大きくなってしまいます。子どもの頃、誤った行動をしたとき、それを指摘されずに育ってしまうと、大人になってから他者の指摘に耐えられなくなるかもしれません。

駄目なことは、なぜ駄目だったのかを教えてきちんと叱り、その上で『ごめんなさいができたこと』『お話をきちんと聞けたこと』などの頑張りを褒め、認めてあげるのが本当の褒める子育てです」

Q.子どもを褒めるときに気を付けるべきことはありますか。

雨宮さん「褒めるのにもポイントがあり、何でもかんでも褒めればよいわけではありません。

例えば、幼児に自分でお着替えができるようになったことを褒めたとします。一度できるようになったことをいつまでも褒められても、少しもうれしくありません。腕をシャツに通せるようになったら、次はボタンが留められるようになって、おなかをしっかりとしまうことができるようになって…と行動のステップアップを一つずつ褒めてあげるのもよいです。

ただ、その行動ができた“事実”だけではあまり心に響かなくなってくるので、一人で着替えようとしたことの頑張った心情の部分を褒めるとよいでしょう」

Q.叱るときに、気を付けるべきことはありますか。

雨宮さん「叱るときは『急な道路への飛び出しは危ないから駄目』『立ち止まらないで危ない行動をしたね』などと駄目だった行動そのものを叱るだけにとどめるとよいです。『なぜ、そんなことも分からないの』『だからあなたは駄目なんだ』など子どもの人間性を否定するような駄目出しは心が傷つくだけで、反省を促しにくくなってしまいます」

Q.子育てにおいて、「褒める」ことと「叱る」ことはどのようにバランスを取ればよいのでしょうか。

雨宮さん「お父さんやお母さんはきっと、子どもはたくさん褒めてあげたいし、叱るのを極力減らしたいと考えているでしょう。ただ、毎日慌ただしく生活していると、叱ってしまうことがどうしても多くなってしまいます。『起きよう』『次はこれをしよう』という指示の言葉には『叱り要素』を含まないように、『これ以上なら叱る』というボーダーラインを決めておくとよいでしょう。

Q.具体的には、どのような叱り方ですか。

雨宮さん「例えば、3回注意しても直らないようなら叱ると回数で決めたり、言葉遣いが悪くなっても自分で決めたNGワードが出ない限りは叱らなかったり…などのマイルールを決めることです。

そして、きちんと褒めるポイントで気付いて声に出して褒めてあげること、つい小言が多くなってしまうときは、行動そのものだけを叱ることに留意して、気を付けていってほしいと思います。

『褒めるのは子どもの心情、叱るのは行動そのもの』です。子どもの年齢や性別(思春期が来るタイミングが異なる)、性格によっても常に進化していきますので、親の中のマイルールは常にアップデートして、バランスを取っていってください」

(オトナンサー編集部)

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雨宮奈月(あめみや・なつき)

教育・子育て心理アドバイザー

IQとEQを育てる総合学習教室HEC Kids Educationを主宰。コミュニケーション能力とロジカルシンキングを伸ばす英語コース、知開コース、表現コースをオリジナルのメソッドで指導。子どもの英語劇やミュージカルをプロデュース。子育てや学習の環境を「丸ごと指導」するカウンセラーでもあり、米国で幼少期を過ごした帰国子女、3児の母でもある。HEC Kids Education(https://heckidsedu.com)。

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