「なぜ私だけ?」と不満も…母親が子どもを叱るとき、父親も一緒に叱るべき?
母親が子どもを叱っているとき、父親はどのように対応すればよいのでしょうか。専門家に聞きました。

母親が子どもを叱る際、近くにいる父親は口出しをせずに成り行きを見守ることもありますが、それに対し、「何もしてくれない」「なんで私だけが叱らないといけないの?」と不満を覚える女性もいるようです。年末年始は家族全員で過ごす時間が増えるため、子どものしつけを巡り、夫婦間で対立するケースも考えられます。
母親が子どもを叱るとき、父親はどのような対応を取る必要があるのでしょうか。子育て心理アドバイザーの雨宮奈月さんに聞きました。
叱っている人を孤立させないこと
Q.そもそも、子どもが悪いことをしたとき、両親で叱った方がよいのでしょうか。それとも、いずれか一方が叱れば十分なのでしょうか。
雨宮さん「一般的に、『両親で叱ってしまうと、子どもの逃げ場がなくなるからいけない』などと言われていますが、叱る側も孤立するとよくありません。また、叱っている人は『心が狭い』などと子どもに勘違いされないためにも、両親とも同じ意見だという姿勢を示してほしいと思います。
両親の総意であり、『今叱っている人は代表者として話しているだけだ』ということを子どもに伝える必要があります。例えば、母親が叱っている場合、父親は余計な口出しをせず、『お父さんは基本的にはお母さんと同じ思いだ』と一言添えるだけで、お母さんの言葉の重みは変わります」
Q.母親が子どもを叱っているとき、父親はどのように対応すればよいのでしょうか。また、父親が叱っているときの母親の対応は。
雨宮さん「叱っている母親をフォローしてあげてください。『その程度でそんなに言わなくてもいいじゃないか』など思うことがあれば、子どものいないところで叱った人に意見として伝えてください。子どもの態度が悪いときは『ちゃんと話を聞きなさい』、話の終わりには『ちゃんと謝りなさい』などと子どもに伝えると、なおよいでしょう。
逆に父親が叱っているとき、母親はなるべく口出しせずに見守り、必要であれば、子どもと父親の両方をフォローしてあげるとよいでしょう。父親がせっかく叱ったのに立つ瀬がなくならないように、子どもの前で叱った内容を否定しないことが大事です。
また、『同意見である』と言いつつ、『いつもはもう少しできているのにね』と普段の子どもの頑張りをフォローしてあげると、父親が叱り過ぎてしまうことを防ぐことができます」
Q.育児に不慣れな男性の中には、「言うことを聞いてくれない」などと叱ることに苦手意識を感じる人もいると思います。うまく叱れる方法はあるのでしょうか。
雨宮さん「育児に不慣れな男性は、子どもとの信頼関係を構築している最中なので、まずは一貫性を持って話すことが望ましいです。時と場合にもよりますが、今日と昨日で話した内容が違ってしまうと子どもは混乱してしまいます。
また、難しい話ですが『自分ができないことは強く言わない』『子どもが素直に聞き入れられるよう話し方を工夫する』の2点が重要です。いつも奥さんに『靴下脱ぎっ放し、シャツ置きっ放しにしないで!』と注意されているお父さんに『置きっ放しにするな、片付けろ!』と言われても、子どもは『お父さんだってできていないじゃん!』と感じてしまいます。
そこで、『置きっ放しにしないようにしよう、片付けよう!』と、子どもに行動を促す言い方に切り替えるだけでもうまくいくことがあります。叱るのはとても労力が要ることです。言い逃げにならないように、話がきちんと着地するまで付き合う必要があります。叱り始めたら、ゴールにたどり着くまで責任を持ってください」
Q.子どものしつけについて、夫婦間でもめないために必要なことはありますか。
雨宮さん「夫婦は元々、別の家庭で育ってきたということを忘れず、事前に価値観を共有し、意見をまとめておくとよいでしょう。『そこは別にいいんじゃない?』『ここはもっと厳しく伝えるべきだ』など、善しあしだけではなく加減もある程度統一しておくとよいでしょう。例えば、『あいさつは大事』とする教育方針の中で子どもがあいさつできなかったとき、以下のような形で指導することがあります。
・『次回からはあいさつしなさい』と後で注意するだけでOK
・その場で、ちゃんとあいさつできるまではOKとしない
・『はい』と声に出さなくてもうなずいていればOK
これらは、実際に今まで出合った価値観の一部です。何が正解かということではなく、夫婦間であらかじめ正解を決めておくと、叱るときに一貫性を保つことができます」
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