オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

妊娠中の適切な「運動」とは? 産婦人科医に、母体や胎児への影響も聞いた

妊娠中の運動って、どうすればいいの? 産婦人科医の尾西芳子さんに、胎児への影響などについて、直撃!

妊娠中の運動って、どうすればいいの?
妊娠中の運動って、どうすればいいの?

 妊娠して、おなかが目立つようになってくると、なかなか運動しづらいもの。しかし、妊娠中でもある程度運動をしたほうが良いといわれています。そこで、妊娠期間中の運動に関する疑問について、産婦人科医の尾西芳子さんに直撃しました。

激しい運動は早産? 発育に影響?

Q.妊娠中に激しい運動をしてはいけない理由を教えてください。

尾西さん「理由は2つあります。まず、1つ目は物理的な問題です。通常、子宮の入り口は陣痛が始まるまでは固く閉じて、赤ちゃんが外に飛び出さないようにしています。しかし、お母さんが飛び跳ねたり、激しい運動をしたりすると、重力に従って下の方、つまり、子宮の入り口に赤ちゃんや羊水の重みがかかってしまい、何度も繰り返すと次第に開いてしまう危険性があります。

また、激しい運動によっておなかが張る、つまり、子宮が収縮することが増えるのですが、妊娠中の子宮は水の入った風船のようなものなので、収縮すると、弱い部分から水が出ようとします。この弱い部分にあたるのが子宮の入り口なので、こちらも破水したり、早産になったりする危険性が高まる原因となります。

2つ目は、発育に関連するものです。妊娠中、赤ちゃんは胎盤を通じて、お母さんの血液から酸素や栄養をもらっています。お母さんが激しい運動によって酸欠になったり、手足や心臓を動かすのに血液をたくさん利用したりすると、赤ちゃんに届く酸素や血液が足りなくなり、発育が妨げられてしまう危険性があります。こうした理由から、妊娠中の激しい運動は控えるようにいわれているのです」

NGの運動とは… 運動不足&しすぎを防ぐためのポイントも!

Q.妊娠初期や中期の「適度な運動」とは、どのようなものでしょうか。

尾西さん「妊娠初期は、基本的にはまだ赤ちゃんや羊水の重みが少ないので、それらが体への物理的な負担にはなりません。ただし、この時期は赤ちゃんの器官が作られる大切な時期であるとともに、安定期に入る前の時期なので、もともとの自然流産の危険性や出血のリスクも高いです。ウオーキングや短時間のスイミングなど、通常行う軽い運動は構いませんが、マラソンやテニスなど長時間の運動は避けましょう。

妊娠中期はおなかも大きくなり、重さの負担がかかってくる時期ですが、つわりが治まって脂肪が付きやすい時期でもあります。プールで軽く泳いだり、ウオーキングやヨガをしたりといった運動をしていきましょう。おなかが張ると感じたときは一休みしてください」

Q.「妊娠自体に気付かず、初期に激しい運動をしてしまった」と心配する女性も少なくないようです。このような場合、母体や胎児への影響は考えられますか。

尾西さん「基本的には、現在赤ちゃんやお母さんが元気であれば、何も問題はありません。妊娠に気付かず運動できたくらい、つわりもなく順調だったとポジティブに捉えましょう」

Q.妊娠中の運動量は、お産(陣痛、出産)にどのような影響を与えますか。

尾西さん「先述の通り、妊娠中に運動をすることで体重の過剰な増加を防ぐ他、体力が付くことで出産時にきちんといきむことができ、安産につながります。後期にはしっかり動いた方が、おなかが張りやすくなって陣痛の練習になりますし、子宮の入り口も開きやすくなります。そのため、運動を何もしない場合より、予定日付近にきちんと陣痛が来ることが多いです」

Q.妊娠中の「運動不足」「運動しすぎ」を防ぐためのポイントはありますか。

尾西さん「やはり、自分自身では判断が難しいと思うので、主治医に相談しましょう。目安として、初期は通常通りの生活・運動は問題なし、中期はおなかが張るような運動はせず、予定日の1カ月前に入ったら軽くおなかが張る程度の運動をするのがよいでしょう」

Q.その他、妊娠中に運動をする際に意識や注意をするべきことは。

尾西さん「妊娠中は脱水状態になりやすいため、水分補給をしっかり行いましょう。息が上がりやすかったり、脳貧血になりやすかったりするので、体調としっかり相談して行うようにしてください。また、無理は禁物です。『おなかが張る』『気分が悪いな』と感じたら、すぐに休むようにしましょう」

(オトナンサー編集部)

【写真】妊娠中でもできる“ヨガポーズ”って? お手軽な姿勢を紹介!

画像ギャラリー

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

コメント