「無断転載は1ページにつき2万円請求する」 同人誌の奥付に書いた注意書きに法的効力は?
同人誌の無断転載に対する罰金がSNS上などで話題に。ある作家が「無断転載には1ページ2万円を請求」と記した同人誌の奥付を根拠に数十万円を請求しようというものですが、法的に可能なのでしょうか。

SNS上などで先日、同人誌の無断転載が話題となりました。ある作家が、自身の作品を無断転載しているサイトを発見し、「無断転載には1ページ2万円を請求する」旨を記した同人誌の奥付画像を根拠に、数十万円を請求するとツイート。これについてSNS上では、「抑止力になる」「戦ってほしい」「この程度の記述で有効なのか」などの声が上がっています。こうしたケースで、奥付の注意書きに法的効力はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
「事前の合意」があるかどうか
Q.同人誌の無断転載には、どのような法的問題や罰則がありますか。
牧野さん「同人誌の無断転載・無許可アップロードは、著作権のうち、公衆送信権や送信可能化権の侵害に当たります。また、同人誌が原作者の著作物の二次的著作物(二次創作物)であれば、原作者の著作権(公衆送信権や送信可能化権)も侵害することになります(著作権法28条)。著作権侵害が明らかになった場合は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金。また、損害賠償請求やアップロードの差し止め請求など民事上の救済を受けることも可能です。
ただし、二次的著作物の同人作家が原作者から許諾を得ていない場合には、著作権のうち複製権、翻案権、また著作者人格権のうちの同一性保持権の侵害により、同人作家が原作者から、損害賠償請求や差し止め請求など民事上の救済や刑事責任を求められるリスクもあります」
Q.今回のケースのように、製作者の任意で書かれた注意書きに法的効力はありますか。
牧野さん「例として『無断駐車は罰金1万円』と駐車場に張り紙をしていたケースで考えてみましょう。張り紙をしていても、無断駐車をした運転者は、無断駐車をした場合には罰金1万円を支払う条件に合意したとは言えません。したがって、法的には、無断駐車をした者が1万円を支払う義務はありません。ただし、駐車場を利用したのですから合理的な使用料を支払う責任は発生します。
本件の場合も『1ページ2万円』は無理ですが、著作物を利用して著作権侵害をしていますので、著作物の合理的な使用料(印税相当額など)を請求することはできるでしょう」
Q.実際に罰金を支払ってもらうために、法的に有効な文言などはありますか。
牧野さん「文言は契約の申し込みとして明確に記載する必要がありますが、重要な点は、無断転載をした人から同意を得ているかどうかです。同意を得なければ法的効力を持たせるのは難しいでしょう。
今回のケースは事前に同意がないため、訴訟などの法的措置を取っても『1ページ2万円』の使用料を回収することは難しいと考えられます。強硬に取り立てたりすると法的根拠がないのに金銭を要求しているとして、逆に恐喝や脅迫罪に問われる可能性があるので注意が必要です。
先ほどの無断駐車のケースですが、無断駐車した人を脅し、現金を脅し取ったとして駐車場管理人が恐喝容疑で大阪府警に逮捕された事例があります。この駐車場では『不法侵入厳禁、無断駐車は見つけ次第、罰金1万~3万円を徴収』という看板を掲げていました」
(ライフスタイルチーム)
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