辛味は脳内で“痛み”と認識されている? 辛い物が得意な人や好きな人は何が違う?
辛い物は脳内で「痛み」と認識されるので、それを緩和させるための物質が分泌される、という趣旨の投稿が話題になっていますが、実際のところはどうなのでしょうか。味覚の専門家に聞きます。
食べ物の「辛味」に関して先日、SNS上などで話題になりました。辛い物を食べた時、人の脳内では「辛さ=痛み」と認識され、その痛みを緩和させるための物質が分泌されるといいます。これについて「辛い物が好きな人の脳内はどうなってるの」「ワサビのツーンとした辛さも痛みなのかな」などさまざまな声が上がっていますが、辛い物を食べた時の反応や辛い物が好き(得意)な人の特徴とはどのようなものでしょうか。オトナンサー編集部では、一般社団法人日本味覚協会の水野考貴さんに聞きました。
エンドルフィンとドーパミン
Q.辛味はどのようなメカニズムで感じるものなのでしょうか。
水野さん「まず、辛味は大きく2種類に分けることができます。トウガラシやコショウなどの『ホット系』と、ワサビやカラシなどの『シャープ系』です。一般的に、辛味以外の味覚(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味)は、味蕾(みらい)と呼ばれる細胞の集合体によって感知されますが、ホット系の辛味は熱刺激受容体、シャープ系の辛味は冷刺激受容体という、別の受容体がそれぞれ感知するのです。このように、感知する受容体が異なるため、辛味は味覚ではなく痛覚の一種であると言われています」
Q.辛い物を食べた時、人の脳は辛さを「痛み」と認識し、それを緩和させるための物質を分泌しているのですか。
水野さん「はい、そうです。ノースウェスタン大学の雑誌でブログの『Helix』によると、ホット系の辛いものを食べることにより、脳内物質のエンドルフィンとドーパミンが放出されます。エンドルフィン(β-エンドルフィン)は苦痛などの痛みを感じた時に放出される物質で、鎮痛作用があると同時に多幸感をもたらします。一方、ドーパミンは快感を増幅させる作用があります」
Q.辛い物が得意な人と苦手な人の違いは何でしょうか。
水野さん「エンドルフィンとドーパミンの出やすさには個人差があると言われており、正確なところはまだ分かっていませんが、辛い物が得意な人はエンドルフィンやドーパミンが出やすく、苦手な人は放出されにくい、と言えるのではないでしょうか。なお、シャープ系の辛味については文献や実験データが確認できないため、必ずしもこの通りではない可能性がありますが、エンドルフィンは痛みに対して放出される物質であり、おおむね、同様のことが言えるのではないかと考えられます」
(ライフスタイルチーム)
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