“こってり”ラーメン、ホットチョコレート…「寒いと濃い味の食べ物が欲しくなる」は本当? 味覚の専門家に聞いてみた
寒くなると、こってりとした味付けのラーメンや、ホットチョコレートやココアなどの甘くて濃厚な物が欲しいと感じるようになるのは本当なのでしょうか。専門家に聞きました。

連日、寒さが厳しい日が続いていますが、冬は夏に比べて、みそや豚骨といったこってりとした味付けのラーメンのほか、ホットチョコレートやココアなどの甘くて濃厚な物が食べたくなる人が増えるようです。SNS上では「寒い日には、こってりしたみそラーメンが身に染みる」「冬に濃厚チョコレートが食べたくなる」「寒いから濃厚なものがおいしい」などの声が上がっています。
寒いときほど、こうした濃い味の食べ物が欲しいと感じるようになるのでしょうか。一般社団法人日本味覚協会の水野考貴さんに聞きました。
「温度」と「消化機能」が関係か
Q.冬は夏に比べて、こってりとした味付けのラーメンのほか、ホットチョコレートやココアといった甘くて濃厚な物が食べたくなる人が増えるようです。寒いときほど、濃い味の食べ物が欲しいと感じる傾向にあるのでしょうか。
水野さん「この現象は、『温度』と『消化機能』が関係していると考えます。そもそも、冬は、夏に比べて温かい食べ物を好む傾向にあります。温度と味覚の関係で、人は高温の食べ物の味を弱く感じる傾向にあるので、温かい食べ物の場合、濃い味の料理をよりおいしく感じるのではないでしょうか。一方、夏はいわゆる『夏バテ』と呼ばれるように消化機能が低下しやすいため、あっさりしたものが好まれる傾向にあります。
基本的に、酸味や塩味は、口に含んだ際に味を強く感じる『先味タイプ』、甘味やうま味は、口に含んでから徐々に味を感じる『後味タイプ』と言われています。あっさりした味は『先味が強い』または『コクがない』と感じやすい特徴があることから、冬は、後味が強く、コクがある食べ物が好まれることになります。よって、冬は甘味やうま味が含まれ、コクがある食べ物がより好まれやすいのではないかと考えます」
Q.では、料理の温度によって、味の感じ方に違いが出るということでしょうか。
水野さん「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味といった『基本五味(ごみ)』のうち、酸味は、温度による影響をほとんど受けないと考えられていますが、塩味と苦味は料理の温度が低いほど強く感じ、甘味とうま味は、料理の温度が人の体温と同程度の場合に一番強く感じると言われています。いずれの味も、料理が高温のときは強く感じないという特徴があります」
Q.寒いときに濃い味の食べ物を食べ続けた場合、味覚にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
水野さん「一般的に、味覚向上のためには、薄味の食べ物の味をしっかりと感じるよう意識することが重要であると考えられているので、濃い味の食べ物を食べ続けることが味覚に良い影響を与えるとは言い難いです。ある調査によると、夏と冬では、冬の方が味覚感度が低下するという報告もあります。
濃い味の食べ物を食べることで、すぐに著しく味覚が低下し、味覚障害になるとは考えにくいですが、長い時間をかけて少しずつ味覚が低下していき、その結果として味覚障害と呼ばれるレベルまで落ちてしまう可能性はあると思います」
Q.寒いときに濃い味の食べ物を食べ過ぎないためには、日頃からどのような対策が有効なのでしょうか。
水野さん「人間の本能として、冬に温かく、濃い味の食べ物を好みやすいのはやむを得ないと思います。温かい食べ物は味付けが濃くなりやすいことをきちんと自覚すれば、『料理を作る際に、調味料の量を少なめにする』と、自然に意識できるようになるのではないでしょうか。
うま味や甘味は、同じ味を持つ複数の物質を掛け合わせると、味の強さが10倍、20倍になる『相乗効果』が起こります。例えばうま味の場合、昆布だしとかつおだしの組み合わせなどです。このように、少ない調味料でも味を強く感じるような工夫をするのも有効です」
(オトナンサー編集部)
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