健康診断の項目を解説! どんな病気や症状が発見できる?
病気の予防や早期発見に欠かせない健康診断。その基本的な情報や、検査で分かる病気・症状について解説します。

はじめに
皆さんは、定期的に健康診断を受けていますか。「まだ若いから大丈夫」「健康診断で何をするかわからない」「健康診断は高そう」など、さまざまなイメージや疑問がありますが、病気の予防や早期発見に健康診断は欠かせません。自分や家族が健康であり続けるためにも、健康診断について正しい知識を持ち、有効に役立てることが大切です。
ここでは「いつ」「どこで」「どのような」検査するのかといった、健康診断の基本的な情報や各項目検査でわかる病気や症状について、医師の市原由美江さんに聞きます。
そもそも健康診断とは
健康診断には、個人で病院や施設に申し込んで行うものと、働いている場合に職場で義務付けられているものがあります。
個人で健康診断を受ける場合、健診名は病院や施設によって異なることがありますが、検査する内容はほとんど同じです。個人で受けられる健康診断は、基本的に35~74歳の方が対象とされています。検査項目は、医師による診察、尿検査、血液検査、レントゲン検査など約30項目の全身的な検査です。さらに、女性は乳がん検診、子宮がん検診、子宮頸がん検診も併せて受けることができます。
一方、職場で必ず受けなければならない健康診断があります。これは、雇用主が労働者に年に1回、健康診断を受けさせる義務が労働安全衛生法で定められているためです。職場での健康診断で引っかかった場合、保健師からの指導を受けるか、職場によっては健康のための実技講習会が用意されています。
健康診断は、自分で病院や施設に行って受けることができます。職場で受診義務がある定期健康診断は、受診する項目が労働安全衛生法で定められていますが、自分で、病院や施設で健康診断を受ける場合、自分が必要と考える検査を選んで受けることができます。自費で健康診断を受ける場合の費用は病院や施設、検査内容によって異なりますが、多くは最小限の項目で1万円前後になります。職場の定期健康診断のほか、気になる項目があれば自分で定期的に健康診断を受けるのがオススメです。
さまざまな健康診断
【がん検診】
がん検診では、1次検査で異常が見つかった場合に2次検診(精密検査)を受けます。1次検診では通常、胃のX線検査、胸部レントゲン、腹部超音波、腫瘍マーカー、さらに、女性は乳房の触診やマンモグラフィー、子宮頸がん検査などを行い、異常が見つかれば、2次検査として胃の内視鏡検査やCT検査などを受けます。2次検査で「異常なし」となるケースも多いですが、1次検診で異常があると診断された場合は、すぐに精密検査を受ける必要があります。
【乳がん検診/子宮がん検診/子宮頚がん検診】
一般的に「婦人科検診」と呼ばれることがあり、主に20~40代の女性を対象にした検診です。乳がん検診ではマンモグラフィー検査が一般的です。腫瘍の塊を見つけるために、圧縮板で乳房を平らになるように挟みます。子宮がん検診は子宮体がんと子宮頸がんの2つに分けられ、それぞれ内診や細胞診が行われます。検査用のヘラで子宮の表面をこすることで細胞の状態をチェックするものです。
乳がん検診、子宮がん検診、子宮頸がん検診は産婦人科のある病院のほか、各地域にある検診センターで受けることができます。抵抗がある方は女性の専門医に診てもらうこともできるので、事前に希望を伝え確認することがオススメです。
【肝炎ウイルス検査】
肝炎ウイルス検査では、B型肝炎やC型肝炎の有無を把握することができます。肝炎ウイルス検査は血液検査によって診断されます。肝炎は、感染しても自覚症状がないため気づかないことが多い病気で、日本人の肝炎患者のうち3割が、自分が感染していることを知らないと言われています。肝炎は血液や体液によって感染するため、知らず知らずのうちに他人に感染させる恐れがあります。検査は任意ですが、就職で新しい環境に入る時など、定期的に検査を行うことが推奨されています。肝炎ウイルス検査は病院のほか、地域の保健所でも受診することができます。
【生活習慣病予防検診】
その名の通り、生活習慣病に関わるすべての項目を検査します。
<検査項目>
・身長
・体重
・ウエスト周囲径
・血圧
・脂質
・肝機能
・血液
・尿
・腎機能
・呼吸系
・心機能
・肺
・胃
・大腸
・眼底
・腹部超音波
・肝炎ウイルス
・子宮頸がん
・乳がん
眼底検診や子宮頸がん、乳がんは、すべての人が必ずしも必要というわけではないため、付加検診として追加したり、単独で受診したりすることができます。
【雇用時の健康診断】
職場に就職し、業務が開始される際に、事業者は労働者に健康診断を受けさせることが労働安全衛生法によって定められています。
<検査項目>
・既往歴/業務歴の調査
・自覚症状や他覚症状の有無
・身長
・体重
・ウエスト周囲径
・視力
・聴力
・胸部X線
・血圧
・貧血
・肝機能
・血中脂質
・血糖
・尿
・心電図
また、有害物質を扱う環境における作業の場合、上記の診断項目に加え、特殊健康診断、じん肺検診、歯科医師による検診も受ける必要があります。
【定期健康診断】
年に1回の実施が、労働安全衛生法によって義務付けられています。事業者は労働者に対して定期健康診断を実施する義務があり、また労働者も事業者が行う健康診断を受ける義務があります。
<検査項目>
・既往歴、喫煙歴、服薬歴、業務歴の調査
・自覚症状の調査
・身長
・体重
・視力
・ウエスト周囲径
・聴力
・胸部X線
・血圧
・尿
・貧血
・肝機能
・血中脂質
・血糖
・心電図
健康診断の主な検査項目
ここでは、健康診断の主な検査項目について解説します。
【身長/体重/ウエスト周囲径】
健康診断の基本的な検査項目では、身長と体重から算出するBMI(Body Mass Index)があります。男女ともBMIが25以上の場合「肥満」または「過体重」と判断されます。また、ウエスト周囲径が男性85センチ/女性90センチ以上の場合は、メタボリックシンドロームの診断基準の一つを満たしており、ほかに高血圧、高血糖、脂質異常症のうちの2つを満たせばメタボリックシンドロームと診断されます。BMIとウエスト周囲径から「肥満」や「メタボリックシンドロームの疑い」と判断された場合、保健師からの指導が入ることが多くあります。
【GOT/GPT】
検査結果の欄に「GOT(またはAST)」や「GPT(またはALT)」という文字があります。これは肝臓病の有無を把握するための検査です。基準値はGOT(AST)もGPT(ALT)も35IU/l以下とされています。36以上の数値が出た場合、肝臓に炎症が起こっており、肝臓病や肝硬変の恐れがあるなど数値の大きさによって病変を把握することができます。
さらにGOTとGPTの関係では、GOT>GPTの場合にアルコール性肝障害、肝硬変、肝臓がん、心筋梗塞が疑われ、GOT<GPTの場合は慢性肝炎、脂肪肝が疑われます。
【尿検査】
尿検査では、主に腎臓の異常の有無を把握することができます。尿検査で行われる検査項目は多数ありますが、それぞれに基準があります。
尿たんぱく、尿糖、尿ビリルビン、尿潜血反応、尿中ケトン体は「陰性」が基準となります。尿pHは4.8~7.5が正常範囲内です。健常時、尿は弱酸性なので、pH7.6以上だとアルカリ性となり尿路感染症や腎疾患が疑われます。尿沈査では赤血球、白血球、上皮細胞すべてにおいて、1視野に1~3個以内が正常範囲です。異常があった場合は膀胱炎(ぼうこうえん)などの尿路感染症、尿路結石、尿路系のがんなどが疑われます。
そのほか尿量は500~2000ml、尿比重は1.010~1.025が正常範囲です。
【脂質検査】
血液検査により血中の脂質の量を測定し、異常の有無を確認します。脂質検査の項目には総コレステロール(TC)、中性脂肪(TG)、HDLコレステロール、LDLコレステロールが主な判断材料となります。
総コレステロールは150~219mg/dlが正常範囲とされ、低すぎる場合は肝機能、甲状腺機能も併せて見る必要があります。中性脂肪は50~149mg/dlが正常範囲で、中性脂肪の値が高いと肥満、脂肪肝の原因になります。HDLコレステロールは40~96mg/dlが正常範囲です。HDLコレステロールは善玉コレステロールであるため、数値が高い方がよいことになります。LDLコレステロールは70~139が正常範囲です。LDLコレステロールが高いと、動脈硬化を進行させ、将来的に脳梗塞や心筋梗塞を発症する恐れがあります。
脂質は肥満だけでなく、さまざまな病気の原因となります。脂質のバランスが良くなるような食事や運動を心がけることで数値が改善します。
定期的に健康診断を受けよう
「健康診断にはさまざまな種類があり、多くの検査項目があります。年に1回の定期検診のほか、希望する項目のみを医療機関や検診施設で受診することもできます。病気の予防や早期発見のために、定期的に健康診断を受け、気になる項目について数値を把握できるようにしておきたいものです」(市原さん)
(オトナンサー編集部)
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