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55歳ひきこもり長男を抱える母親、期待する公的年金の「繰り上げ受給」とは?

60歳繰り上げ受給と65歳受給 どちらが正解?

年金を60歳から受給した場合と65歳から受給した場合の比較
年金を60歳から受給した場合と65歳から受給した場合の比較

 長男の年金加入状況は次の通りです。

20歳から45歳まで 国民年金納付
45歳から60歳まで 国民年金全額免除(60歳まで全額免除の予定)

 このデータを基に、筆者は60歳繰り上げ受給と65歳受給の大まかな金額を試算しました。

【60歳から繰り上げで受給する場合】
老齢基礎年金 月額約4万円
老齢年金生活者支援給付金 月額約7100円(※)
※繰り上げ受給をしていても、65歳からの支給となる

60歳から65歳まで 月額4万円
65歳から 月額約4万7100円

【65歳から受給する場合】
老齢基礎年金 月額約5万2600円
老齢年金生活者支援給付金 月額約7100円
合計 月額約5万9700円

 比較した金額を見た母親は、筆者に質問しました。

「60歳繰り上げ受給の方がよいのか。65歳受給の方がよいのか。長男にとって、どちらの方が有利なのでしょうか」

「受給合計額だけで考えると『ご長男がどのくらい長生きされるか』で変わってきます。具体的には60歳繰り上げ受給をした場合、逆転年齢は80歳11カ月目になります」

 母親はよく分からないといったような表情を浮かべたので、筆者はさらに、「年金を60歳から受給した場合と65歳から受給した場合」についての表を書きました。

「80歳10カ月目までなら、60歳繰り上げ受給の方が受給合計額は多くなります。一方、80歳11カ月目以降は65歳受給の方が受給合計額は多くなります。つまり、ご長男が80歳10カ月よりも早く亡くなるようでしたら60歳繰り上げ受給の方が有利。80歳11カ月以上長生きされるようでしたら、65歳受給の方が有利だったと言えます」

「長男がどのくらい長生きするかは分かりませんよね…。繰り上げ受給と65歳受給、どちらが正解なのでしょうか」

「どちらが正解でどちらが間違いということはありません。ご家庭の価値観はさまざまなので『繰り上げ受給の方がよい』というご家庭もあれば『やっぱり65歳受給の方がよい』というご家庭もあるでしょう。結局は、『ご長男やお母さまが納得できるかどうか』ということになります。なお、繰り上げ受給の請求は60歳の誕生日の前日から行うことができます。ご長男が60歳になるまであと5年ほどありますから、その間にご検討いただくことになるでしょう」

「はい、分かりました。長男ともよく話してみます」

 母親はそのように答えました。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

【画像】60歳から受給した方が得? 老齢基礎年金の受給額を比較

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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