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靴下など「下」の付くものは相手を見下す意味→贈ってはダメ…投稿話題に、専門家に聞く

靴下など「下」が付くものは「相手を見下す」意味があるので贈ってはいけない、というテレビ番組の内容を紹介する投稿が話題となっています。その真偽を、マナーの専門家に聞きました。

贈り物に「靴下」はNG?

 テレビ番組で先日取り上げられた「贈り物のマナー」について、SNS上で話題となっています。番組を見たという投稿者によると「『下』の付いた品物(靴下とか)は相手を見下す意味になるので贈ってはならない」と紹介されていたとのこと。これに対し「そんなマナーあるんですか」「礼法学んでたけど見下す意味はなかったと思う」など疑問の声が多数上がりましたが、実際のところはどうなのでしょうか。

「マナーは互いをプラスにするもの」をモットーに、国内外の企業や大学などで人財育成教育やマナーコンサルティングを行うほか、NHK大河ドラマなどのドラマや映画で俳優や女優へのマナー指導を行い、日常生活における円滑な人間関係の構築などに関するマナー本が国内外で70冊以上(累計100万部超)のマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに聞きました。

ポイントは相手を不快にしないかどうか

Q.そもそも、マナーの基本的な考え方について教えてください。

西出さん「マナーとは相手の立場に立つこと、これが大前提にあります。その上で、相手が不快にならないように配慮する心をもって接したり、相手が喜ぶことをして差し上げたりすることです。マナーを日本語にすると『礼儀』となります。礼儀の『礼』は思いやり、『儀』は形式や型と言えます。思いやりの心は目に見えません。そのため、その気持ちを伝えるために、形として、目に見え、耳に聞こえる言葉で伝えていきます。マナーは、相手への思いやりの気持ちや心を形に変えて伝えるものです。ですから、マナーは決して形式や決まり事ではなく、一番大切なのは相手への思いやりの心です。そして、思いやりを受けた相手側も相手に感謝し、お返しをする。マナーとは互いをプラスに、ハッピーにするものです」

Q.そのマナーの定義からして「靴下を贈ってはならない」というのは事実でしょうか。

西出さん「前述の通り、マナーとは相手の立場に立つことですのでこの基本にのっとって考えた時、贈り物の品物選びは相手が喜んでくれるものか、あるいは相手に不快な思いをさせてしまわないかが重要なポイントと言えます。したがって、今回のケースでいくと、靴下を贈られた相手が喜ぶのであればオーケーですし、失礼だと思うのであればNGです。『靴下を贈るのはNG』ということが、マナー関連本などで紹介されているのは事実です。ただし、厳密に言うと『目上の方へ贈るのはNG』と言われている場合が多いと思います。日本人は元々、相手に対する敬意から、気遣いや配慮を重んじる礼儀、すなわちマナーを大事にしてきた民族です。昔、日本は階級社会であったため、特に目上の方に対する贈り物などには、現代以上に気を遣っていたことが推測されます。その流れで、靴下を着用するのが一般的になった頃から、靴下は床などを『踏みつける』ものと考えることもでき、目上の方に贈ると『あなたを踏みつけます』という意味に受け取られかねないので『贈らない方が無難』と言われ始め、それが書籍などを通じて今も伝えられています。つまり、元々は『贈らない方が無難ですね』という程度であったものが、現在では『~してはいけない』と強い否定の言い方になっているのが問題だと思います」

Q.「靴下は『下』が付いているから好ましくない」というのは事実ですか。

西出さん「靴下など『下』が付いたものは相手を見下すことになるので贈ってはならない、ということが正しいかどうかについて、マナーの視点からは『諸説あるのではないか』という結論になるかと思います。相手に失礼のないものを贈るという、『マナーの心』を考えた時に、大切なのは、世の中にはさまざまな考え方の人がいることを意識し、もしかするとそうした理由から失礼だと感じたり、不快に思ったりする人がいるかもしれない、などと想像することだと思います。そして、一般的なマナー本にはこう書いてあったな、ということを知識として持ち、目上の方に靴下を贈らない方がよいという選択肢を持った上で、相手との関係性や状況を考慮して決めるべきだと思います。こうした知識を持つことで、千差万別の相手を不快にさせるかもしれないリスクを未然に回避できるかもしれません。以上の理由から、贈る相手が同世代の友人や後輩などであれば、靴下を贈ることに問題はないと言えます。お返しの品として贈る場合も、この原理原則に変わりはないと思います」

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西出ひろ子(にしで・ひろこ)

マナーコンサルタント、マナー解説者、美道家

ヒロコマナーグループ代表。一般社団法人「マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会」代表理事。大妻女子大学卒業後、国会議員などの秘書職を経て、マナー講師として独立。マナーの本場英国へ。オックスフォードにて、オックスフォード大学大学院遺伝子学研究者のビジネスパートナーと1999年に起業し、お互いをプラスに導くマナー論を確立させる。帰国後、名だたる企業300社以上にマナーコンサルティングなどを行い、他に類を見ない唯一無二の指導と称賛される。その実績はテレビや新聞、雑誌などで「マナー界のカリスマ」として多数紹介。「マナーの賢人」として「ソロモン流」(テレビ東京)などのドキュメンタリー番組でも報道された。NHK大河ドラマ「龍馬伝」をはじめ、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない 富豪村」、映画「るろうに剣心 伝説の最期編」などのドラマや映画、CMのマナー指導・監修者としても活躍中。著書は28万部突破の「お仕事のマナーとコツ」(学研プラス)、16万部を超える「改訂新版 入社1年目 ビジネスマナーの教科書」(プレジデント社) など監修含め国内外で100冊以上。「10歳までに身につけたい 一生困らない子どものマナー」「かつてない結果を導く 超『接待』術」(共に青春出版社)など子どものマナーから、ビジネスマナー、テーブルマナーなどマナーのすべてに精通。ヒロコマナーグループ(http://www.hirokomanner-group.com)。
※「TPPPO」「先手必笑」「マナーコミュニケーション」「真心マナー」は西出博子の登録商標です。

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