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ピリピリ痛い「口唇ヘルペス」、なぜできる? できやすい人は?

唇の周辺に小さな水ぶくれができる「口唇ヘルペス」。ピリピリ、チクチクとした不快な痛みが特徴ですが、なぜ発症してしまうのでしょうか。皮膚科医が解説します。

ピリピリして痛い…口唇ヘルペス、なぜできる?
ピリピリして痛い…口唇ヘルペス、なぜできる?

 唇の周りに、小さな水ぶくれのようなものができる「口唇ヘルペス」。ピリピリ、チクチクとした痛みを伴うため、不快に感じる人も多いと思います。口唇ヘルペスに悩まされたことのある人からは、「一度できると繰り返しできるようになった」「疲れがたまっているときによくできる気がする」といった声や、「家族にうつしてしまわないか不安」「病院に行く時間が取れなくて…放置しても大丈夫?」など、疑問の声もあるようです。

 不快な痛みが特徴の「口唇ヘルペス」はなぜ、できてしまうのでしょうか。アヴェニュー表参道クリニックの佐藤卓士院長(皮膚科・形成外科)に聞きました。

感染すると一生、神経節にウイルス

Q.「口唇ヘルペス」とは、どのような病気ですか。

佐藤さん「口唇ヘルペスは、唇やその周辺に小さな水ぶくれができる病気で、単純ヘルペスウイルスによる感染症です。このウイルスは、口や目、性器などの粘膜、皮膚の小さな傷から侵入して、神経に潜伏します。初感染の場合は無症状であることが多く、気付かないケースもありますが、成人の半数以上が『子どもの頃に、既に感染している』とされます。

発症するとまず、皮膚にピリピリやチクチクとした違和感、痛みなどの自覚症状が出ます。その後、数時間してから違和感の出た部位が赤く腫れてきます。自覚症状が出現してから数日後には、赤く腫れた部位に水ぶくれが多数でき、1〜2週間ほどでかさぶたとなって治癒します。

小さいブツブツは一見すると、ニキビやかぶれの皮膚炎と間違えやすいですが、ニキビは膿(うみ)がたまっているので乳白色(不透明)であるのに対し、口唇ヘルペスの水ぶくれは無色透明です。また、かぶれなどの皮膚炎は、口唇ヘルペスのようなチクチクした痛みはなく、かゆみの症状が強いです」

Q.口唇ヘルペスができやすい人の特徴とは。

佐藤さん「症状が出ていなくても単純ヘルペスウイルスが潜伏している人は多く、成人で半数以上、また年齢が高くなるにつれてその感染率は高くなり、70歳以上ではほとんどが感染しているといわれています。ただ、実際の発症率は10%といわれており、既感染者でも発症しない人もいます。また、女性の方が発症しやすい傾向にあるようです。

先述の通り、多くは子どもの頃に感染し、無症状で気付かない場合も多いですが、大人になってから初めて感染すると症状が重いことが多く、繰り返し再発しやすいです。アトピー性皮膚炎や免疫異常を来す基礎疾患のある人も発症しやすく、不規則な生活習慣や食生活が続き、過労や免疫力の低下を来すと発症しやすくなります。なお、ウイルスが原因の感染症なので、遺伝とは無関係です」

Q.口唇ヘルペスの再発について、さらに詳しく教えてください。

佐藤さん「単純ヘルペスウイルスは一度感染すると、症状が落ち着いても、脳神経の一つである『三叉(さんさ)神経節』に潜伏してすみつきます。普段は活発に活動せず、神経節にじっと潜んでいるので症状はありません。しかし、ストレスや疲労、発熱、生理、紫外線などで体力や抵抗力が落ちたときに再び活性化してウイルスが増殖し、神経細胞の中を通って唇やその周辺で発症します。残念ながら完治することはなく、終生、神経節に潜むため、一度感染すると再発する可能性があるのです」

Q.口唇ヘルペスを発症した場合、他人にうつしてしまうこともあるのでしょうか。

佐藤さん「あります。接触感染や、物を介した感染でうつります。口唇ヘルペスの水ぶくれの中にはたくさんのウイルスがいるので、患部を触ったり、破ったりしないように注意し、患部に触れたときは手をよく洗いましょう。接触感染を避けるため、症状があるときは頬ずりやキス、性行為は避けてください。また、ウイルスが付着した食器やタオルなどから他の人にうつる可能性もあるため、共用せず、使用後は洗剤でよく洗いましょう」

Q.すぐに病院に行けない場合、そのまま放置しても問題ないのでしょうか。

佐藤さん「口唇ヘルペスは何もしなくても自然治癒していきますが、治るまでに2週間以上かかったり、2次感染を起こして化膿(かのう)したり、治癒後しばらく痕が目立ったりすることがあります。早い段階から治療を始めると悪化しにくく、治りも早いため、ピリピリやチクチクなどの違和感を自覚したら、できるだけ早く治療しましょう。また、かぶれやニキビといった他の疾患の可能性もあるため、診断のためにも、すぐに病院(皮膚科)にかかるのがよいでしょう」

Q.皮膚科ではどんな治療や処方を行うのですか。

佐藤さん「抗ウイルス薬の飲み薬や外用薬を使用します。症状が軽い場合は外用薬を塗布しますが、通常は飲み薬を5日間服用します。なお、抗ウイルス薬の飲み薬はドラッグストアなどで市販されておらず、医師の処方が必要です」

Q.口唇ヘルペスの発症をなるべく防ぐために、日常生活の中でできることとは。

佐藤さん「先述したように、単純ヘルペスウイルスはずっと体内に潜伏していますが、普段は自身の免疫力で再発が抑えられています。体力や免疫力が低下したときに再発することが多いため、日頃より休養をしっかりと取り、規則正しい生活やバランスのよい食事を心掛けるとともに、ストレスや疲労をため込まないことが予防につながります」

(オトナンサー編集部)

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佐藤卓士(さとう・たかし)

医師(皮膚科・形成外科)・医学博士

アヴェニュー表参道クリニック院長。京都大学農学部卒業。九州大学医学部卒業。岡山大学医学部、杏林大学医学部、都立大塚病院形成外科にて研鑽(けんさん)を積み、現在に至る。日本形成外科学会認定専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。日本形成外科学会、日本皮膚科学会、日本美容外科学会、日本レーザー医学会、日本手外科学会、日本創傷外科学会所属。アヴェニュー表参道クリニック(https://www.a6-clinic.com)。

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