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具体的な金額を知らせずに「サービス料」請求…法的問題はある? 弁護士の見解

高級レストランやホテルでは、飲食料金や宿泊料金とは別に、「サービス料」を請求されることがありますが、客に具体的なサービス料の金額を知らせず請求することに、法的問題はないのでしょうか。

サービス料の支払いを拒否することは可能?
サービス料の支払いを拒否することは可能?

 高級レストランやホテルでは、飲食料金や宿泊料金とは別に、「サービス料」を請求されることがあります。しかし、具体的にどれくらいのサービス料の支払いが必要なのか事前に知らされず、サービス料の支払いを求められて納得できない人もいると思います。高級レストランやホテルのサービス料について、客に具体的なサービス料の金額を知らせず請求することに、法的問題はないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

原則、サービス料の支払いは拒否できる

Q.「サービス料」は、実際に飲食したり宿泊したりした料金とは別に支払うものです。サービス料を設定することに問題はないのでしょうか。

牧野さん「サービス料は、日本の高級レストランやホテル・旅館に特有の料金制度です。元々は、欧米のチップ制度の代わりに利用料に対して、10~15%ほどをサービス料として請求するものです。例えば、居酒屋ではお通しの代金や席料として、控えめな金額で請求されることがあります。

基本的に、価格決定権は高級レストランやホテル・旅館側にあり、飲食料や宿泊料とは別にサービス料を設定すること自体に、違法性はありません」

Q.客が、サービス料の具体的な金額を知らないこともあるようです。金額を知らせずに請求することに、法的問題はないのでしょうか。

牧野さん「サービス料も、高級レストランとの飲食の契約や、ホテル・旅館との宿泊契約の一つであり、店側がサービス料の具体的な金額を知らせず、一方的に請求することは原則としてできません。サービス料を支払うことに同意していないので、サービス料を支払う部分について、『契約』が成立していないからです。

サービス料がどれくらいの金額であるかを客側に口頭、あるいは『サービス料○○%を頂戴します』とメニューや宿泊契約書の目立つところに記載するなど、原則として、客からの同意や承諾を得ることが必要です」

Q.サービス料の支払いを「過剰に料金を請求している」として拒否した場合、客側に法的責任が生じるのでしょうか。

牧野さん「客はサービス料の支払いを拒否することはできます。しかし、価格決定権は高級レストランやホテル・旅館側にあるので、サービスを提供してもらえない、あるいは、退席を求められることになるのではないかと思います」

Q.高級レストランやホテル側が、「料金とは別途、サービス料をいただきます」とメニューや規約に明示していて、客側が見落としていた場合、客側はサービス料を支払わないといけないのでしょうか。

牧野さん「客側が見落としていた場合、承諾を得るために高級レストランやホテル・旅館側は、分かりやすく説明する必要があります。法的には、客の承諾を得なければ契約は成立しませんので、原則として、客はサービス料の支払いを拒否することができます。

しかし、高級レストランやホテル・旅館であれば、サービス料を請求されて客が支払うことが慣習として定着しています。大衆的なお店でサービス料を請求する場合とは異なり、“黙示の承諾”があったと解釈される場合が多いでしょう。その場合、客はサービス料の支払いを拒否することは難しいでしょう」

Q.代金とは別にサービス料を請求することから、問題が発生すると思います。「サービス料を請求する場合、できるだけ代金にその金額を含めた表示にすべき」というような法律はないのでしょうか。

牧野さん「例えば、消費税の支払いについては、消費税法や規則で、価格に含めるべき総額表示の義務があります。しかし、サービス料については、現状ではそのような規制はありません」

(オトナンサー編集部)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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