ストライキも今は昔…「春闘」ってそもそも何? 労働組合のない会社で賃上げ交渉できる?
「春闘」の時期になりましたが、大企業に勤める人はともかく、「春闘」といってもニュースで見るだけという人も多いと思います。そもそも春闘とは、どういうものなのでしょうか。

今年も「春闘」の時期になりました。が、大企業に勤める人はともかく、「春闘」といってもニュースで見るだけという人も多いと思います。昔はこの時期、鉄道のストライキも風物詩的な存在でしたが、今はすっかり聞きません。そもそも春闘とは、どういうものなのでしょうか。フェリタス社会保険労務士法人(神奈川県厚木市)代表で、特定社会保険労務士の石川弘子さんに聞きました。
賃金だけでなく労働環境改善もテーマ
Q.そもそも「春闘」とはどういうものでしょうか。歴史的なことも含めて、教えてください。
石川さん「春闘とは、毎年2月から3月に行われる、労働組合と企業による団体交渉のことです。各労働組合が、全国中央組織の労働団体や産業別組織の指導・調整のもとに、賃金アップなどの要求を各企業に提出し、行う団体交渉です。
始まりは、1955年1月に東京で開催された『春季賃上げ共闘総決起大会』とされています。当時の日本では、朝鮮戦争の特需が終わって不況となり、企業で人員整理などが行われていました。そのため、労働者側の対抗手段として、産業別に労働組合がまとまって、企業にさまざまな労働者側の要求を訴えるようになっていきました」
Q.春闘は、労働組合がある会社だけのものなのでしょうか。その場合、組合のない会社で賃上げを求めたいと思ったら、どのようにすればよいのでしょうか。
石川さん「春闘は労働組合と企業の団体交渉であることから、労働組合に加入している労働者が対象となります。昨今は、企業の労働組合組織率が低下していることから、『自分の勤めている会社に労働組合がない』という人も多いと思います。そういった人が、『団体交渉で賃上げを要求したい』という場合、一定地域ごとに組織されている合同労組(ユニオン)に個人で加入することは可能です。合同労組に加入し、労働条件について合同労組から会社に対して交渉してもらうのです」
Q.労働組合の組織率は2割にも満たないといわれます。それなのに、なぜ春闘がニュースになるのでしょうか。
石川さん「そもそも、春闘に対する関心は年々下がってきていると思います。昔は、春闘の影響力は大きく、鉄道会社などがストライキで企業と交渉し、春闘をリードしてきました。しかし、長引く日本経済の低迷や、働き方の多様化によって労働組合の組織率も下がっており、春闘と聞いても『大企業のもの』という印象を持つ人も多いと思います。
しかし、春闘をリードしている大企業の労働組合の交渉結果は、その他の中小企業の労働条件に及ぼす影響も少なくなく、景気の指標の一つとしてニュース等で取り上げられるのだと思います」
Q.春闘は賃上げ交渉が特に目立ちますが、ほかの要素もあるのでしょうか。
石川さん「春闘では主にベア(ベースアップ。年齢・勤続年数、能力に関わらず、全体的な賃金水準の引き上げを求めるもの)と定期昇給が要求されますが、近年は労働環境などについても交渉されます。過重労働や過労死などが社会問題化する中で、労働時間減少や職場環境の改善を求める交渉なども行われます」
Q.ロシアのウクライナ侵攻から波及した原油や穀物などの値上がりが、企業業績に影響することも想定されます。今年の春闘にウクライナ情勢は影響しそうでしょうか。
石川さん「ウクライナ情勢によって、厳しい業績が予想される企業も少なくないと思います。実際に経営側から労働組合に対して、そういった事情に対し、理解を求めたというケースも聞きます。春闘は労働組合と企業の労使交渉ですから、企業側の交渉材料として、ウクライナ情勢が影響することもあると思います」
(オトナンサー編集部)
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