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ホワイトデーのお返しに女性が「3倍返し」を要求 法的問題は?

ホワイトデーのお返しに、チョコレートの3倍の値段や価値があるプレゼントを贈る「3倍返し」の考えがあるようです。「3倍返し」を求めることは、法的にはどのような位置付けになるのでしょうか。

気持ちを込めてお返ししたいホワイトデーだが…
気持ちを込めてお返ししたいホワイトデーだが…

 3月14日は、ホワイトデーです。2月14日のバレンタインデーのお返しに、男性から女性へプレゼントを贈る日とされていますが、チョコレートの3倍の値段や価値があるプレゼントを贈る「3倍返し」という考えが残っているようです。景気のよいバブル経済期に広がった考えのようですが、義理チョコでこの考えのお返しを求められると、男性の中には「つらい」と思う人もいるのではないでしょうか。ホワイトデーのお返しで「3倍返し」を求めることは、法的にはどのような位置付けになるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

同等でも3倍でもお返しの法的義務なし

Q.義理チョコを含め、バレンタインデーに男性が女性からチョコレートをもらうことは、法的にはどのように定義されるのでしょうか。

牧野さん「バレンタインデーに男性が女性からチョコレートをもらうことは、当事者の一方(女性)が、財産(チョコレート)を無償で相手方(男性)に与えることを提示し、男性がそれを受け取ることについて、合意するものです。これは、民法上の『贈与契約』にあたります」

Q.「ホワイトデーのお返しは3倍返し」を要求するのは、過剰に金銭や価値のある物を要求しているように思います。法的に問題はないのでしょうか。

牧野さん「男性がチョコレートをもらうことは、先述したように『贈与契約』にあたります。贈与は、財産(チョコレート)を無償で女性から男性へ与えた時点で法的な効力は終了します。そのため、チョコレートをもらった男性側に、お返しをしなければならない法的義務は発生しません。

つまり、女性から『3倍返し』を要求されて、過剰に金銭や価値のある物をお返しする法的義務はありません」

Q.逆に、男性からのお返しのプレゼントが、女性が男性に贈ったチョコレートよりも、金額や価値が明らかに低いと分かる物であった場合、法的に問題はないのでしょうか。

牧野さん「女性から男性にチョコレートを贈ることは贈与ですが、逆に、男性から女性にお返しをすることも贈与になります。また、贈与において、幾らでお返ししなければならないという法的な義務はありません。そのため、お返しのプレゼントが、女性が男性に贈ったチョコレートよりも、金額や価値の上で明らかに低いと分かる物であっても、法的に問題はありません」

Q.義理チョコも含め、バレンタインデーに女性からチョコレートをもらってもお返しをしない場合、法的に問題はないのでしょうか。

牧野さん「これまでと同様の説明になりますが、贈与になりますので、チョコレートをもらった男性が女性にお返しをしなければならない法的義務は、そもそも発生しません。しかし、法的に強制されるわけではありませんが、プレゼントをもらったのに何もしないというのは、いかがなものかと思います。道義的な義務は、もちろんあります」

Q.つまり、チョコに限らず、人から物を贈られたとき、お返しをしなくても法的には何ら問題にはならないということでしょうか。

牧野さん「こちらも確かに、法的にお返しを強制されるわけではありません。しかし、何かしらのお返しやお礼をする道義的な義務はあると思います」

(オトナンサー編集部)

【画像】マシュマロ、マカロンをホワイトデーのお返しにする意味

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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