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「四十肩」と「五十肩」って同じもの? 予防できる? 整形外科医に聞く

肩や腕が動かしにくくなり、場合によっては激しい痛みも伴う「四十肩」や「五十肩」。両者は同じものなのか、肩こりとはどう違うのか…整形外科医に聞きました。

四十肩と五十肩、同じもの?
四十肩と五十肩、同じもの?

 肩に慢性的な違和感があったり、腕が上がらなくなったりしたとき、「もしかして四十肩(五十肩)かも…」と思ったことがある人は多いのではないでしょうか。四十肩や五十肩になると、肩や腕を動かしにくくなる他、痛みが起こることもあり、日常生活に支障を来すケースもあるようです。これについて、「四十肩と五十肩は同じもの?」「肩こりとはどう違うの?」「完治するのかな」「予防はできる?」など、疑問の声が多くあります。

 四十肩と五十肩にまつわるさまざまな疑問について、お茶の水セルクリニックの寺尾友宏院長(整形外科)に聞きました。

肩こりとの違いは「痛みを感じる場所」

Q.そもそも、「四十肩」「五十肩」とは何でしょうか。

寺尾さん「正式な病名は『肩関節周囲炎』です。40代で罹患(りかん)したら『四十肩』、50代で罹患したら『五十肩』と呼ばれているものの、基本的には同じ病気です。それぞれの年代で多く発症しますが、40代・50代以外の年代でも発症します。以前は、さまざまな病態の疾患をまとめて『四十肩』『五十肩』と呼んでいましたが、最近は、『腱板(けんばん)炎』といった別の病名がつく病態については、含めないようになってきています。

症状は痛みがメインで、肩を少し動かしただけでも強い痛みが起こる場合が多いです。また、痛みが減った後も、動かしにくさが残ってしまうこともあります。原因はさまざまですが、日々肩を使っている中でダメージが蓄積したり、細かい傷ができたりして起こる炎症が原因となることが多いです。一般的には自然の経過で改善することが多いのですが、痛みや動きの制限が強い場合には治療が必要になることもあります」

Q.四十肩・五十肩と肩こりはどう違うのですか。また、痛みを感じたとき、どちらによる痛みなのかを患者自身が判断することはできますか。

寺尾さん「肩こりと四十肩・五十肩では、痛みを感じる場所が違います。肩こりは首に近い部分に張り感を伴った痛みが出ます。場合によっては頭痛などを併発することもあります。一方、四十肩・五十肩では、肩の関節部分で痛みが出ます。肩関節の前側や後ろ側で痛みを感じ、動かした瞬間に激痛を感じることも多いです」

Q.四十肩・五十肩を発症しやすい人の特徴はありますか。

寺尾さん「名前の通り、40代以降が発症しやすいです。先述したように、肩関節へのダメージや細かい傷が原因になることが多いため、肩の負担が多い人も発症しやすいと思います。なお、糖尿病の人は発症しやすいという話も聞きますが、因果関係は不明です」

Q.「四十肩・五十肩かも」と感じた場合、病院に行った方がよい症状の目安はありますか。

寺尾さん「痛みが強くて夜も寝られないような場合には、痛みをコントロールするために整形外科を受診した方がよいと思います。また、関節の動きが悪くなってしまった場合には、動きを改善するためのリハビリテーションを受けるために、受診することをお勧めします。

自宅で様子を見る場合、痛みが強いときにはアイシングが有効な場合があります。痛みが強くなければ、セルフエクササイズを行い、肩が硬くならないようにすることも重要です。肘で大きく円を描くような体操や、腕を軽く揺らす『コッドマン体操』という体操などを行うのがよいです」

Q.病院ではどのような治療を行うのですか。

寺尾さん「病態によって行う治療が変わります。発症初期の『炎症期』では、痛みの管理が治療のメインになります。消炎鎮痛薬や湿布などを使用し、痛みのコントロールが難しい場合にはステロイドなどを使って、強力に炎症を抑える治療を行うこともあります。

関節の動きが悪くなる『拘縮期』には、リハビリテーションをしっかり行い、動きの改善を目指します。動きの改善を補助するため、ヒアルロン酸の注射を行うこともあります。拘縮が取れない場合は、手術で関節包(関節を包んでいる袋状の被膜)を切開するような治療を行うこともありますが、これを行うのはまれです。炎症を起こした場所は硬くなりやすいため、強い炎症が長時間続くと、拘縮が起こりやすくなります。炎症期でしっかりと炎症をコントロールすることが大切です」

Q.四十肩・五十肩の発症を予防することはできますか。

寺尾さん「肩関節に負担をかけ過ぎず、傷ができないようにするため、関節の柔軟性を維持することが大切です。また、日常生活では、重たい物を連続で持つといった、負担がかかるようなことは、可能であれば避けるのがよいと思います」

(オトナンサー編集部)

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寺尾友宏(てらお・ともひろ)

医師(整形外科)

お茶の水セルクリニック院長。東京医科大学医学部卒業。東京医科大学付属病院整形外科、東京警察病院整形外科、京都大学大学院医学研究科を修了後、洛陽病院整形外科にて研さんを積み、現在に至る。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本再生医療学会再生医療認定医。お茶の水セルクリニック(https://ochacell.com/)。

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