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気持ちよくてつい…指や首の関節を“ポキポキ”鳴らす癖、悪影響はない?

手の指の「関節」をポキポキと鳴らすことが癖になっている人がいます。関節をポキポキと鳴らすと気持ちいいようですが、体に悪影響はないのでしょうか。

関節を鳴らす癖、問題は?
関節を鳴らす癖、問題は?

「手の指の関節をポキポキと鳴らすことが癖になっている」という人は少なくないと思います。「関節」をポキポキと鳴らすと「気持ちいい」「何となくリラックスできる」と感じる人もいるようですが、中には「関節を痛めそう」「悪影響はないの?」「ポキポキ鳴らす癖は直した方がいいのかな」などの疑問を抱く人も少なくありません。

 関節をポキポキと鳴らし続けることで、何らかの悪影響は考えられるのでしょうか。お茶の水セルクリニックの寺尾友宏院長(整形外科)に聞きました。

反復で捻挫のような状態にも

Q.人体において、関節はどのような役割を果たしているのですか。

寺尾さん「関節は骨と骨とのつなぎ目にあたる部分です。関節があることで、さまざまな動作が行えるようになっています。全身には約260の関節がありますが、大きく動く関節もあれば、少ししか動かない関節もあります。

関節はおおむね、骨、軟骨、靱帯(じんたい)、関節包(関節を囲んでいる袋状の膜)で構成されており、骨の表面に軟骨があります。軟骨の表面はスケートリンクと同じくらい滑りやすいといわれていて、そのおかげでスムーズに関節を動かすことができます。

関節を安定させるため、周囲に靱帯があります。関節包は関節を包み込んで、周囲とは隔離した環境をつくっています。関節包で囲まれた空間の中に水分があることで、軟骨が滑らかに動けるようになっているのです」

Q.意識的/無意識的問わず、何らかの動作をしたときに関節が「ポキッ」などと音を立てることがありますが、この音の正体は何でしょうか。

寺尾さん「関節を動かしたときの音は、さまざまな原因で起こります。膝であれば、軟骨や半月板が周囲の組織に引っかかった際に音がすることがあり、肩であれば、筋肉が骨とこすれる音を『ポキッ』という音に感じることがあります。

手の指をポキポキ鳴らすときの音は、関節内で圧力が変化し、『キャビテーション』という現象が起こることで生じるといわれています。キャビテーションとは、圧力によって短時間で泡の発生と消滅が起こる現象です。関節内の水分から発生した泡がはじけるときの音を『ポキッ』という音に感じるようです」

Q.手の指の関節をポキポキと鳴らす癖のある人には、音が鳴るときに関節が動く感覚はあっても、痛みをあまり感じていないケースが多いように思います。本来、関節が音を立てるとき、痛みは伴うのでしょうか。

寺尾さん「キャビテーションによる音の場合、痛みを感じないことが多いです。一方、半月板などが周囲の組織に引っかかった場合、軽い引っかかりでは痛みを感じないですが、強く引っかかるようになると痛みを感じます。音が頻繁に鳴る場合でも、多くの場合、問題ありません。ただ、半月板などの組織が引っかかって、頻繁に音を出すような場合は治療が必要なこともあります。心配な場合は医療機関で検査を受けることをおすすめします」

Q.日常的に関節をポキポキと鳴らし続けていることで、何らかの悪影響やリスクはあるのでしょうか。

寺尾さん「関節をポキポキ鳴らすこと自体は、それほど問題となることはありません。ただ、あまりにも頻繁に行い過ぎて、関節を痛めてしまわないように気を付ける必要はあるでしょう。関節を鳴らすとき、関節に強い負荷をかけてしまうことがあり、繰り返しているうちに捻挫のような状態になってしまう可能性があるためです。

捻挫を繰り返すと関節が硬くなってしまったり、逆に緩くなってしまったりします。そうなると関節への負担が大きくなってしまい、将来的に関節の変形を促してしまう可能性もあるのです。

また、首を鳴らすときは神経を刺激してしまうリスクもあります。首の関節のすぐ近くには神経が通っているため、首の関節を鳴らした際に神経を圧迫してしまい、痛みなどの刺激が出ることがあります。神経は長期間刺激を受け続けるとダメージが残ってしまうこともあります。首を鳴らした際に背中、肩、腕にビリっとする痛みが走った場合は神経を刺激している可能性があるので、注意が必要です」

Q.手の指や足の指、首などの関節は特に「音を鳴らすと気持ちいい」「凝りやだるさが軽くなる気がする」と感じる人もいるようですが、これはなぜだと思われますか。

寺尾さん「『音を鳴らすことでリラックス効果が出たり、凝りやだるさが解消されたりする』というデータは見たことがありません。ストレッチの効果のように、普段刺激を受けない部分に刺激が加わることで『気持ちいい』と感じるのかもしれません。また、音を鳴らす動作を行うことで関節の小さなズレが解消して、スッキリしたように感じる可能性も考えられます」

Q.特に手の指の関節に関して、「ポキポキ鳴らし続けると指が太くなる」と聞くことがありますが本当でしょうか。

寺尾さん「私見にはなりますが、可能性はあると思います。関節を鳴らし続けることで関節が捻挫状態を繰り返してしまった場合、関節が太くなってしまうことはあり得ます。また、キャビテーションが起こると弱い超音波が発生するのですが、超音波には骨を増殖させる効果もあるため、骨が太くなった結果として関節が太くなってしまうこともあり得るのではないでしょうか」

Q.関節をポキポキ鳴らすのが癖になっている人が多いようですが、整形外科医の目から見て、この癖は改善した方がよいと思われますか。

寺尾さん「痛みなどの症状を伴わないのであれば、改善しなくてもよいと思います。鳴らすこと自体に特にメリットがないので、積極的にすすめるわけではありませんが、努力してやめる必要もないと思います。

私も以前は指を鳴らす癖がありましたが、いつの間にかやらなくなっていました。鳴らしていたのはストレスが強い時期だったので、ストレスに対する反応として行っていたのかもしれません。関節を鳴らす・鳴らさないについてはあまり気にし過ぎなくてよいと思います」

(オトナンサー編集部)

寺尾友宏(てらお・ともひろ)

医師(整形外科)

お茶の水セルクリニック院長。東京医科大学医学部卒業。東京医科大学付属病院整形外科、東京警察病院整形外科、京都大学大学院医学研究科を修了後、洛陽病院整形外科にて研さんを積み、現在に至る。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本再生医療学会再生医療認定医。お茶の水セルクリニック(https://ochacell.com/)。

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