チョコのカロリー、「ミルク/ビター/ホワイト」、どれが高い?
バレンタインデーといえばチョコレート。主にミルク、ビター、ホワイトの3種類が知られていますが、カロリーや栄養素の違いはあるのでしょうか。管理栄養士に聞きました。

2月14日はバレンタインデーです。街中のお店にいろんなチョコレートがあふれる時季ですが、チョコレートの定番といえば、「ミルク」「ビター(ブラック)」「ホワイト」の3種類。風味がそれぞれ異なるため、人によって好みがあると思いますが、中には「チョコレートは体にいいと聞くけど、やっぱり太るイメージが拭えない」「一番カロリーが高いのはどれなんだろう」など、チョコレートのカロリーを気にする人も少なくないようです。
ミルク、ビター、ホワイトの各チョコレートに含まれるカロリーや、特徴的な栄養素について、管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。
カカオマスの割合が高いと高カロリー
Q.まず、ミルク、ビター、ホワイトの各チョコレートについて、栄養素以外の特徴を教えてください。
岸さん「これら3種類のチョコレートにおける、原材料や味わいの特徴は次の通りです」
【ミルクチョコレート】
発酵させたカカオ豆を焙煎(ばいせん)してすりつぶした「カカオマス」に、砂糖と、全脂粉乳や脱脂粉乳などの乳原料を加えたチョコレートのことです。代表的な商品の多くが、このミルクチョコレートにあたります。カカオマスの比率は20~40%程度ですが、明確な規定はありません。甘く、まろやかなミルクの風味が特徴で、万人受けするチョコレートといえます。
【ビターチョコレート】
基本的には乳原料を使わず、カカオマスの含有量が40%~60%と高いチョコレートを指します。ミルクチョコレートと比較すると、よりカカオの香りを感じることができ、カカオマスの割合が高いほど苦い味わいが強くなります。
【ホワイトチョコレート】
苦みや、チョコレートの色のもとであるカカオマスが配合されておらず、カカオマスを圧縮して抽出した液状の脂肪分である「ココアバター」に、乳製品や砂糖などを加えて作られます。そのため、ホワイトチョコレートは白色をしています。ココアバターは、口に含むとすっと溶ける性質がある他、苦みがないため、甘く食べやすい味わいが特徴的です。
Q.これら3つのそれぞれに含まれる栄養素の特徴はありますか。
岸さん「チョコレートの原料であるカカオ豆には、抗酸化作用を持つ『カカオポリフェノール』、リラックス効果のある『テオブロミン』、腸内環境を整える食物繊維の一種『リグニン』など、カカオ豆特有の栄養素が含まれます。これらの成分はカカオマスに含まれているため、ミルクチョコレートよりもカカオマス含有率が高いビターチョコレートや、いわゆる『高カカオチョコレート』と呼ばれるものを食べることで、多く摂取できます。
一方、ホワイトチョコレートに使用されるココアバターには、これらの成分が含まれていないので、カカオ豆の健康効果を得ることはできません。しかし、通常、チョコレートに含まれているカフェインがごく少量しか含まれていないため、そのことがメリットになる場合もあるでしょう。
ただ、どのチョコレートも、脂質が栄養成分の半分以上を占めるほど含まれている他、砂糖による糖質も高い食品なので、食べ過ぎには注意してください」
Q.ミルク、ビター、ホワイトではどれが最もカロリーが高いのでしょうか。
岸さん「商品ごとに微妙な差はありますが、ミルクチョコレートの板チョコ1枚(50グラム)の場合、280キロカロリー前後が相場となっているようです。ビターチョコレートは苦味が強いためにカロリーが低いと思われがちですが、カカオマスは脂質が高いため、カロリーはミルクチョコレートよりも少しだけ高くなります。同じ50グラムの板チョコでも、約280~350キロカロリーと幅があり、特にカカオマスの割合が高いものはカカオマス由来の脂質が高くなるため、カロリーも高くなる傾向があり、3種類の中で最もカロリーが高くなってしまうこともあります。
ホワイトチョコレートは、ミルクチョコレートとだいたい同じく、板チョコ1枚(50グラム)280キロカロリー程度のものが多いです。しかし、たっぷりのココアバターと砂糖、粉乳を主として作られるため、カロリーが若干高めになることもあります」
Q.近年は、「チョコレートは体にいい」ともいわれるようになりましたが、どういった点が体にいいとされているのですか。
岸さん「先述したように、チョコレートに含まれる機能性成分の一つであるカカオポリフェノールは抗酸化作用が高く、血圧低下、動脈硬化予防、美肌効果、アレルギーの改善、脳の活性化など、さまざまな効果が期待できるといわれています。
カカオポリフェノールはカカオ豆に含まれるポリフェノール類の総称で、チョコレートの渋み成分です。カカオマス含有率が高いほどカカオポリフェノールも多く含まれます。これが、カカオ70%以上の『高カカオチョコレート』が『体によい』といわれる理由です。また、テオブロミンはカフェインの代謝産物です。こちらもカフェインの仲間に属する苦み成分で、神経を興奮させる作用はカフェインよりも緩やかです。自律神経を整える作用もあり、集中力や記憶力を高めたり、リラックスさせたりする効果があります」
Q.一方で、チョコレートの食べ過ぎによる弊害としては、どのようなことが考えられますか。
岸さん「カカオポリフェノールやテオブロミンの効果を期待して取り過ぎてしまうと、頭痛や腹痛、下痢、便秘、胃もたれを起こす原因になります。どんなものでも食べ過ぎればこれらの症状は起こり得ますが、特にテオブロミンは自律神経に働き掛ける成分でもあるため、注意が必要です。また、カフェインが含まれることから、妊娠中・授乳中の人は健康被害へのリスクが高まります。そして当然、脂質や糖質の摂取過多になれば、肥満や体重増加につながってしまうこともあるでしょう」
Q.栄養面やカロリー面からみた、チョコレートの1日あたりの摂取限度量は。
岸さん「『食事バランスガイド』(厚生労働省・農林水産省)では、菓子・嗜好(しこう)品の目安量は1日200キロカロリー程度とされています。カカオ70%以上のチョコレートでは、30グラム(板チョコ半分ほど)で約180キロカロリーです。同量だと、ミルクチョコで約168キロカロリー、ホワイトチョコで約177キロカロリーと大きな差はありませんが、当然、商品の種類によって異なるため、栄養成分表示を確認して、適量の範囲で食べるようにしましょう。
先述した、チョコレートの苦味成分であるテオブロミンは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きを助けます。セロトニンには精神を安定させ、食欲をコントロールする働きがあるため、チョコレートを食べると満腹感が得られやすくなります。もちろん、食べ過ぎれば太りますが、少量を食べて気持ちを落ち着かせることは、過食やストレス防止、気分転換にもつながります。活動量が少なくなる夕食後や寝る前にチョコを食べることは避け、活動量があり、脂肪にもなりにくいとされている午後2~4時くらいの間に食べるのがよいでしょう」
(オトナンサー編集部)
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