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「標準体型の人は『空腹』を、太った人は『食欲』を満たすために食べる」投稿が話題に、専門家に聞く

「標準体型の人は空腹を、太っている人は食欲を満たすために食べる」との投稿がSNS上で話題になっています。人が「食べる理由」は体型によって異なるのでしょうか。専門家に取材してみました。

「食べる理由」は体型によって異なる…?

 空腹と食欲に関する投稿が先日、SNS上で話題となりました。その内容は「標準体型の人と太っている人は食べる理由が違う」というもので、投稿者は「標準体型の人は空腹を満たすために、太っている人は食欲を満たすために食べる」「満腹だと好物すら食べたくないのが標準体型の人。満腹でも好物は食べたいのが太っている人」「太っている人のダイエットの敵は空腹ではなく食欲」と分析。これに対し「納得」「心当たりある」「苦しくても食べたいと思うから私はデブなのか」「大事なのは体重を落とすのではなく食欲を落とすことなんですね」「どうやったら食欲に勝てるの」など、さまざまな声が上がっています。

 体型と食欲の関係性とはどのようなものでしょうか。オトナンサー編集部では、自然科学研究機構生理学研究所の箕越靖彦さん(生体機能調節研究領域)に聞きました。

ホルモンや神経の働きが悪化している…?

Q.標準体型の人は空腹を満たすために、太っている人は食欲を満たすために食べるというのは本当でしょうか。

箕越さん「投稿にある内容を『標準体型の人はおなかが空いた(体のエネルギー源が低下した)ら食べるが、太っている人(高度肥満の人)はおなかが空かないでも食べる』という意味で解釈すれば、部分的に正しいと言えるでしょう。特に『太っている人はおなかが空かないでも食べる』というのは事実で、高度肥満の人は、体にエネルギー源が十分あるにもかかわらず、常に『食べたい』と感じることが多いようです」

Q.高度肥満の人が常に『食べたい』と感じるのはなぜですか。

箕越さん「たとえば、人はおなかが空いた状態で食べ物の写真を見ると、食欲に関係する脳の活動が高まります。標準体重の人はその後、食事をして満腹になると食べ物の写真を見てもあまり反応しなくなりますが、高度肥満の人は食事をした後でも、その脳の活動は長い間高いままなのです。その原因として、体の栄養状態を脳に伝えるホルモンや神経の働きが悪くなっていること、またその情報を受け取る脳の働きが鈍っていることが考えられます。しかし、なぜそうなるのかはまだ不明な点が多く、肥満研究における重要な研究テーマの一つです。最近、高度肥満の人の脳、特に摂食を調節する脳部位で炎症が起こっていることが分かり、食欲の調節がうまくいかない原因として注目されています。炎症が本当に原因かどうかはまだ結論が出ていませんが、多くの研究者が注目しています」

Q.標準体型の人はおなかが空いたら食べるとのことですが、高度肥満の人と何が違うのでしょうか。

箕越さん「先に『部分的に正しい』と述べましたが、その理由は、標準体型の人も通常の食事では『体のエネルギー源が低下したから食べる』わけではないからです。たとえば、朝ご飯を十分食べても、お昼時になるとおなかグルグルと鳴り、昼食が欲しくなります。これは決して体のエネルギー源が枯渇したからではなく、体が食事の時刻を覚えていて、おなかを鳴らすことによって食事を促しているからです。標準体型の人(長期間、やせも太りもしない人)は、体内で使用した、またはこれから使うであろうエネルギー消費量を脳が正確に把握しており、それに見合った量だけを摂取することができるため、やせも太りもしないのです。その調節は非常に厳密で、食べる量と体が使う量の誤差は1%以下。厳密に言うと、1%の誤差があると10年後には10キロ近く太ってしまう計算になるので、何十年間も太りもやせもしない人はさらに誤差が小さいことになります。言い換えると、10年間で10キロ太る人も、実際にはかなり精密に食べる量と使う量を調節しており、その誤差が『少し大きいだけ』とも言えるのです」

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