オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

“お笑い賞レース”はまだ増える? 定番「M-1」と新設「THE W」成功の意味

「THE W」で見られた女性への配慮

 ただし、当然というべきか、各番組には課題があり、現在の隆盛がいつまで続くかは未知数。前述した4番組のうち最も歴史の長い「M-1」は、視聴者が質の高さを感じ、演出面も洗練されていますが、ほかの3番組は問題点を指摘する声が少なくありません。

 近年、視聴者の間では、「『R-1』と『キングオブコント』に優勝しても売れない」「今年のチャンピオンって誰だっけ」などと、芸人やネタの質を問う声が上がっていました。一方、業界内でも、「毎年放送されることで芸人とネタがすり減っている」「質のバラつきをなくせるかが今後を左右しそう」と言われているのです。

 また、新設された「THE W」には、大会が終了した今も「女性という参加基準は男性芸人、女性芸人の両方に失礼」「LGBTの人はどうなるのか」などの声がやみません。元々、お笑い賞レースの参加基準は、芸歴や人数のみであるケースが多く、「THE W」は異例中の異例。事実、女性に特化した番組だからか、「芸歴、芸風、人数は自由」「審査員が芸人(笑いのプロ)ではない」「笑い声の音量が大きい」「MCが穏やか」などの配慮が随所に見られました。

「M-1」がヒリヒリするようなバトルなら、「THE W」は明るいお祭り。前述した質の高さはどちらも求められそうですが、演出面でのすみ分けは今後さらに進むのではないでしょうか。

テレビ東京のお笑い賞レースは誕生するか

 最後に触れておきたいのは、民放で唯一、お笑い賞レースの番組を持っていないテレビ東京の動向。同局は今年、「池の水ぜんぶ抜く」が大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)を、「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」が「めちゃイケ」(フジテレビ系)を視聴率で上回るなどの躍進を見せただけに、新たな賞レースを立ち上げる可能性はあるのか気になるところです。

 実際、「その可能性は十分ある」と言えるでしょう。テレビ東京はお笑い番組の制作や若手芸人の起用に熱心であり、プライムタイムで「にちようチャップリン」(毎週日曜22時~)というネタ番組を放送しています。

 ちなみに現在同番組では、9週連続企画「お笑い王決定戦2017」が放送中。前述したお笑い賞レースのファイナリスト芸人たち、すなわち質の高い芸人たちがしのぎを削っているのです。このような企画がリニューアルされ、予算面さえ整えば……いつ新たな賞レースが誕生しても不思議ではないでしょう。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

1 2

木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間20本強のコラムを提供するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、新番組と連ドラはすべて視聴するなど1日のテレビ視聴は20時間超(同時含む)。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

コメント