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「里帰り出産」をすること、しないこと それぞれのメリット/デメリットは?

慣れ親しんだ故郷で出産する「里帰り出産」。コロナ禍の影響もある中、里帰り出産を選択すること、しないこと、それぞれのメリット・デメリットについて、産婦人科医に聞きました。

「里帰り出産」メリット、デメリットは?
「里帰り出産」メリット、デメリットは?

 妊娠したら、決めなくてはいけないのが「里帰り出産をするかどうか」です。里帰り出産には、慣れ親しんだ故郷で実家のサポートを受けながら出産できるメリットがありますが、一方で、「里帰り先での産院選びに悩む」「パートナーとのコミュニケーションが少なくなりやすい」などの不安要素もあります。また、昨今はコロナ禍の影響で「里帰り」自体が難しくなり、普段の居住地での出産を選択せざるを得なかった妊婦さんも少なくありません。

 ネット上では「やはり、実家のサポートは強力」「転院せず、同じ先生のもとで産めるのは安心できる」など、里帰り出産をすること、しないこと、それぞれのメリット・デメリットを挙げる声が多くありますが、実際のところはどうなのでしょうか。産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

コロナ禍で新たな問題点も

Q.そもそも、里帰り出産とはどのようなものですか。

尾西さん「里帰り出産はもともと、妊婦さん夫婦の生活拠点ではなく、妊婦さんの実家へ“里帰り”して出産することをいいますが、最近は妊婦さんがパパ(夫)の実家へ行って出産することもこう呼んでいます。出産をする病院は妊娠初期のうちに決めるケースがほとんどなので、里帰りするかしないかもその時期に決まってきます。

厚生労働省の『子ども・子育て支援推進調査研究事業』の調査研究(2017年度)によると、里帰り出産をした人は50.1%、しなかった人が48.8%とほぼ半々になっています。また、里帰り期間はまちまちですが、育児情報誌『miku』が2016年に実施したアンケートでは『1カ月~2カ月』の人が22.6%と最も多くなっています」

Q.里帰り出産を選択するメリット/デメリットとして、それぞれ考えられることは何でしょうか。

尾西さん「最大のメリットは出産前後の忙しく、体調も安定しない時期に両親の手を借りられることです。一方、デメリットはその期間、パパは里帰りしないケースがほとんどなので、離れて暮らすことになる点でしょう。実際に、妊婦さん・パパともに『寂しい』という意見が聞かれます。また、妊婦さんからは『(実家の)両親の育児方針を押し付けられて困った』という話もよく聞きます。

コロナ禍では『里帰り出産をする予定だったのに、里帰り直前になって、東京からの移動を断られた』『里帰り後、2週間の自宅待機をしてからの受診と言われ、その間に出血があり、受診できなくて困った』など、普段とは違った問題点も見えてきました」

Q.一方で、里帰り出産をしないメリット/デメリットはどうでしょうか。

尾西さん「里帰り出産をしないケースで両親が近くに住んでいない場合、出産前後の体調の悪い中、パパや上の子のご飯の支度・買い出し、その他の家事をしなくてはいけないことがデメリットですが、そこはパパと相談して、うまく乗り切る夫婦も多くいます。一方のメリットは家族がずっと一緒に過ごし、新しい赤ちゃんを迎えられることでしょう。生まれてすぐ会えることで、男性側もパパになった実感がより湧きやすいといわれています」

Q.妊婦さんの状況によっては、産婦人科医から里帰り出産を勧めたり、勧めなかったりすることもあるのでしょうか。

尾西さん「里帰り出産自体を医師側から勧めたり、勧めなかったりすることはほとんどありませんが、例えば、切迫早産の可能性が危惧される場合など“早めに”里帰りするように勧めることはあります。ただ、相談された際、第2子以降の場合はやはり上の子の問題があるので、パパがいつでも動けるような状況でなかったり、すぐに手伝ってもらえる人が近くにいなかったりする場合は里帰りを勧めることもあります」

Q.里帰り出産をするかしないか悩んだとき、どのようなポイントについて考えるとよいでしょうか。

尾西さん「(1)妊婦さん自身、どこにいるのが最もくつろげるのか(2)第1子なのか、第2子以降なのか(3)パパの仕事は融通がききやすいのかどうか(4)近くに義両親などがいて、すぐに手伝ってもらえる環境なのかどうかがポイントになってきます」

Q.昨年から今年にかけて、コロナ禍の影響により、里帰り出産が難しい状況になったと思います。実際の産婦人科医院では、どのような状況でしたか。

尾西さん「私のクリニック(東京都内)で一番多かったのは、里帰り間近になって、『東京からの里帰りはお断り』されることでした。妊婦さんも私たちも、都内で分娩(ぶんべん)できる病院探しに奔走しました。結果、東京では多くの大きな病院が『受け入れ病院』として機能し、大混乱にならなかったのだと思います。

また、『里帰り後、2週間の自宅待機を経てからの通院許可と言われたため、その間に出血や何かあった場合にはどうすればよいか』という問い合わせも多く、里帰りを取りやめた人も多くいらっしゃいました」

Q.コロナ禍の影響により、「里帰り出産を希望していたけど諦めざるを得なかった」という女性や、現在、里帰り出産について悩みを抱えている妊婦さんもいるようです。

尾西さん「コロナ禍での妊娠や胎児への影響、ワクチンを打つのか打たないのか、そして、里帰りできるのかなど不安が尽きないことと思います。里帰り先が地方の場合、人混みを避けるという意味で、里帰りで、よい妊娠生活を送れることもあるでしょう。

一方で『今までは両親しか頼るところがなかったけれど、この経験をきっかけに市町村のサービスなど、これまでと違うところに頼ることができると分かった』というお話も聞いており、こうした『自分たちだけで何とかできた経験』はこれからの子育てに大きな自信をもたらしてくれると思います。里帰りをする/しない、できる/できないは時期やケースによると思いますが、最後は場所ではなく、自分たちの気持ち次第です。

コロナ禍でも、おなかの中の命をしっかり守った自分に自信を持ちましょう」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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