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川へ「洗剤」「油汚れ」を流す行為、違法にはならない?

川や河原にごみを捨てることは違法行為ですが、川へ意図的に洗剤を流したり、油汚れを落として流したりすることは違法行為に当たらないのでしょうか。

バーベキュー後、洗剤や油汚れを川に流すと…
バーベキュー後、洗剤や油汚れを川に流すと…

「岐阜県内の川で、油で汚れた調理器具や食器を若者が洗剤を使って洗っている」とされる写真がネット上で話題になりました。写真は数年前のもののようですが、河原でバーベキューをした後だったとみられます。川や河原にごみを捨てることは違法行為であることが知られていますが、川へ意図的に洗剤を流したり、油汚れを落として流したりすることは違法行為に当たらないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

洗剤や油汚れも「廃棄物」

Q.たとえ、量が少なくとも、川や河原にごみを捨てることは違法行為と思われます。どのような刑罰が科される可能性がありますか。

牧野さん「川や河原にごみを捨てることは違法行為です。政令の『河川法施行令』や『廃棄物処理法(正式名称『廃棄物の処理および清掃に関する法律』)』『軽犯罪法』に抵触することとなり、厳しい罰則が設けられています。

具体的には河川法施行令の59条で、3月以下の懲役、または20万円以下の罰金、廃棄物処理法の25条で、5年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、または併科、軽犯罪法の1条で、拘留、または科料の罰則が定められています。懲役や拘留といった、個人の自由が制限される可能性があることから、違法行為をしたときの罰則としては厳しい方だと考えられます」

Q.では、川へ意図的に洗剤を流したり、油汚れを落として流したりすることは違法行為に当たるのでしょうか。

牧野さん「明らかな違法行為です。洗剤や油汚れは固形物のごみと同じ『廃棄物』に含まれます(廃棄物処理法2条)。そのため、川へ意図的に洗剤を流したり、油汚れを落として流したりすれば、先述したような河川法施行令や廃棄物処理法、軽犯罪法で定められた罰則が適用される可能性があります」

Q.実際に、一般市民が川へ意図的に洗剤などを流したことで、取り締まられることはあるのでしょうか。

牧野さん「一般市民が川へ意図的に洗剤を流したり、油汚れを落として流したりする行為は違法ではありますが、摘発は難しいでしょう。一般的には、洗剤や油を誰が流したかの証明が難しく、洗剤を流したり、油汚れを落として流したりしている現場を現行犯で押さえる必要があるからです。

そのため、監視カメラを設置する、あるいは設置していると周知することや、バーベキューなど、ごみが出るような行為を禁止する啓発活動をすべきです。特に、今年の夏は飲食店の営業自粛でバーベキューを考える人が増えると思いますので、例年以上に徹底した啓発が必要でしょう」

Q.「数人分だから、川の水量を考えると、洗剤などを流しても薄まって影響ないのでは?」と考え、バーベキューの後に意図的に洗剤などを流す一般市民もいると思います。違法になることが、あまり知られていないのでしょうか。

牧野さん「産業廃棄物などを扱う事業者であれば、よく理解していると思いますが、一般市民はこうした行為が違法で、厳しい罰則を受ける可能性があることを知らない人が多いと思います。

廃棄物処理法というと『事業者が産業廃棄物を大量に不法投棄した』などの事件報道で聞くことが多く、一般の人は、事業者が対象になる法律と思いがちです。一般の人でも処罰の対象になることを啓発する必要があると思います」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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