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夏の汗染み気になる…「制汗剤」の使い過ぎ、体に悪影響はない?

夏になると脇の汗染みを気にして、「制汗剤」を使う人も多いと思いますが、汗を出にくくさせるわけで、体に何らかの影響があるようにも思います。制汗剤の使い過ぎは危険なのでしょうか。

制汗剤を使い過ぎると…?
制汗剤を使い過ぎると…?

 夏になると脇の汗染みを気にして、「制汗剤」を使う人も多いと思います。最高気温が35度近い日になると、汗で恥ずかしい思いをしたくないという気持ちから、制汗剤を決められた量よりも少し多めに使ったり、全身に使ったりする人もいるのではないでしょうか。しかし、制汗剤は体温調節のための汗を出にくくさせるわけで、使い過ぎると体に何らかの影響があるようにも思います。

 制汗剤の使い過ぎは危険なのでしょうか。アヴェニュー表参道クリニックの佐藤卓士院長(皮膚科・形成外科)に聞きました。

アルミニウム化合物で汗腺をふさぐ

Q.制汗剤を使うと、なぜ、汗が出にくくなるのですか。

佐藤さん「制汗剤には、汗腺(皮膚の皮下組織内にあり汗を分泌する部分)を一時的に引き締めて、発汗を抑える成分が含まれているからです。主に、アルミニウム化合物が汗の通り道である汗腺をふさぐことで発汗を抑えます」

Q.制汗剤は体温調節のための汗を出にくくさせます。制汗剤の使い過ぎは体に何らかの影響があり、危険なのでしょうか。危険な場合、どのような悪影響がありますか。

佐藤さん「制汗剤の使い過ぎは体に局所的な影響と全身的な影響を与える可能性があり、特に全身的な影響では、命に関わる危険もあります。

局所的な影響としては、制汗剤に含まれる成分で、かぶれなどの刺激性接触皮膚炎を起こすことがあります。継続的に制汗剤を使い、皮膚が刺激されることが続けば、皮膚の黒ずみなどの色素沈着を引き起こすこともあります。しかし、かぶれを起こした場合には、直ちに制汗剤の使用をやめ、ステロイド軟こうを塗布すれば改善するので、危険というほどではありません。

危険なのは全身的な影響です。例えば、最高気温が35度近くになるようなとても暑い日には、外出すると大量の汗が出ます。汗染みができるのを恐れ、全身に制汗剤を使うなど使い過ぎる人もいると思いますが、全身に使用すると暑いときや運動したときに出る『温熱性発汗』を抑えてしまうため、熱中症のリスクが高まります」

Q.制汗剤を使うのは脇のみにした方がよいということでしょうか。

佐藤さん「基本的に、制汗剤は脇や足など部分的な使用にとどめておいた方がよいでしょう。脇や足からの発汗は『精神性発汗(緊張汗)』が主であり、それらを止めたとしても体温調節に大きな影響を与えないからです」

Q.中には「制汗剤は使わない方がよいのではないか」という意見もあります。可能であれば、制汗剤を使わない汗染み対策をした方がよいのでしょうか。

佐藤さん「正しい使い方をすれば、制汗剤で汗を抑えることに何ら問題はありません。ただ、制汗剤を使うことで皮膚にかぶれができるなど、皮膚に何らかの影響がある人はあまり使わない方がよいでしょう。

制汗剤以外の汗対策としては▽汗を小まめに拭き取る▽手首や膝裏、首などを冷やして体温を下げる▽汗対策インナーや汗取りパッドを使用する――などがあります。汗を拭くときは乾いたタオルではなく、湿らせたタオルで軽く押さえながら、優しく拭き取ると気化熱で体温を下げることができ、発汗を自然に抑えることができます。

皮膚を冷やす場合は保冷剤をじかにではなく、薄いタオルなどで巻いたものを当てるようにしましょう」

(オトナンサー編集部)

佐藤卓士(さとう・たかし)

医師(皮膚科・形成外科)・医学博士

アヴェニュー表参道クリニック院長。京都大学農学部卒業。九州大学医学部卒業。岡山大学医学部、杏林大学医学部、都立大塚病院形成外科にて研鑽(けんさん)を積み、現在に至る。日本形成外科学会認定専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。日本形成外科学会、日本皮膚科学会、日本美容外科学会、日本レーザー医学会、日本手外科学会、日本創傷外科学会所属。アヴェニュー表参道クリニック(https://www.a6-clinic.com)。

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