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冷たい「湿布薬」と温かい「湿布薬」、同じ症状に効くのはなぜ? 使い分け方は?

湿布薬には、貼ると冷たく感じるものと、温かく感じるものがあります。なぜ、感じ方が違うのに、どちらも同じ症状に効くのでしょうか。

湿布薬の使い分け方は?
湿布薬の使い分け方は?

 肩凝りや腰痛に悩んでいる人の中には「湿布薬」を使っている人も多いと思います。湿布薬には、貼ると冷たく感じるものと温かく感じるものがありますが、なぜ、感じ方が違うのに、どちらも肩凝りや腰痛に効くのでしょうか。使い分け方も含めて、かわかみ整形外科クリニックの川上洋平院長に聞きました。

「メントール」は独特の清涼感

Q.貼ると冷たく感じる湿布薬と温かく感じる湿布薬、感じ方が違うのになぜ、同じ症状に効くのでしょうか。

川上さん「冷湿布、温湿布ともに消炎効果や鎮痛効果のある成分を含んでおり、その点では共通しているからです。その成分は製品によっていろいろですが、例えば、『サリチル酸メチル』や『サリチル酸グリコール』という成分は消炎効果があります。末梢(まっしょう)血管を広げて血流を改善する働きがあり、末梢の知覚神経に働いて痛みを抑える効果もあります。

インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナクなどの成分は『非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)』と呼ばれ、こちらも消炎効果や鎮痛効果があります」

Q.冷たく感じる湿布薬と、温かく感じる湿布薬の違いは。

川上さん「冷湿布に含まれていることが多い『メントール』という成分は独特の清涼感を持っています。実際に患部の温度が大きく下がるわけではなく、神経の冷たさを感じる部分に作用して冷たく感じさせるのです。メントールには消炎効果もあります。

温湿布には、トウガラシの辛味成分でもある『カプサイシン』が含まれており、カプサイシンによって皮膚が刺激され、表面の血管が広がることによって血流量を増加させ、温かく感じられます。カプサイシンが含まれていることにより、温湿布は冷湿布と比べるとかぶれやすいと言われています。血流増大により炎症が悪化する場合にも、温湿布の使用は控えた方がよいです」

Q.どのように使い分けるとよいのでしょうか。

川上さん「痛み止めとしての成分はほぼ同じですが、痛みの状態に応じて、温感と冷感を使い分けることで症状を効率よく和らげることができます。一般的に、打撲、捻挫、肉離れといったけがや、ぎっくり腰などの急性期の痛みは冷やして炎症や痛みを和らげ、熱をとる目的で、冷やすことが効果的と言われています。つまり、『炎症がある』『腫れている』『熱を持っている』といったときは冷湿布がよいです。

一方、重だるく続くような腰痛、肩凝り、神経痛など、血流が滞ったり、筋肉がこわばって患部が硬くなり、慢性的に痛みを伴ったりする場合には、患部を温めて血行を改善するために温湿布を使うことが多いです。温めることで筋肉の緊張を和らげ、症状を改善できると言われています。

しかし、例えば、患部を温めることを目的に温湿布を使用したとしても、温湿布には、筋肉や関節の温度を劇的に変えるような作用はありませんし、冷湿布も同様です。従って、冷やすことや温めることといった温度変化を主目的とするよりも、貼ったときの心地よさや患部の炎症の状態を見て、適切に使い分けることが大切です。

一般的な痛みに対しては、冷感と温感の『どちらが気持ちよいか』で使い分けるのがよいとされています」

Q.では、「冷たく感じる」湿布と「実際に冷たい(アイシングなど)」方法、あるいは「温かく感じる」湿布と「実際に温かい(使い切りカイロタイプなど)」方法とでは、効果はやはり違うということでしょうか。

川上さん「冷湿布には、けがの後のアイシングの効果はありませんので、急性期のけがではアイスバッグなどを使って、十分なアイシングを行う方が効果的です。温湿布についても、患部を温めるのが主な目的であれば、お風呂で温めたり、カイロを使ったりした方が効率的でしょう」

Q.湿布薬の適切な使い方を教えてください。

川上さん「それぞれの湿布薬によって使い方が異なりますので、詳しくは各添付文書を確認してください。一般的には、湿布は『1日1回貼付』のものと『1日2回貼付』のものとに分けられます。1日1回貼付のタイプであれば、8~10時間くらい貼れば、成分の多くは皮膚に浸透し、剥がした後も効果が持続します。

湿布は一般に、お風呂上がりに貼るのがいいといわれています。皮膚の汚れや油分が洗い流された状態なので、しっかりと吸着し、かぶれも起こりにくくなるからです。また、体が温まり、血行が促進されている状態なので、湿布の効果が出やすくなります。汗をかいている場合は、少し時間を空けてから貼るようにしてください。

次の湿布を貼る直前まで、前の湿布を貼り続けている人がおられますが、湿布薬はずっと貼り続ける必要はありません。1日1回貼り替えタイプであれば、先ほど述べたように8〜10時間くらい、1日2回貼り替えタイプであれば、4〜6時間くらいで剥がしても大丈夫です。長時間貼ったままにするとかぶれやすくなります。特に、皮膚が弱くかぶれやすい人は皮膚への負担を軽減するためにも、早めに剥がした方がいいです。

5~6日間、薬の添付文書通りに使っても改善がなければ、医療機関を受診しましょう。湿布薬は飲み薬と違って、全身に作用しない分、副作用が少なく、体に優しい治療法といえますが、不必要に貼ると副作用の危険性も出てきます。特に、ぜんそくの人は発作を誘発する恐れがあるので、発作が起こりそうになったら、すぐに剥がしてください。

薬剤や食品などでアレルギーを起こした経験のある人も購入時に相談してください。目の周りなど、薄い皮膚の周囲には貼らないようにしましょう。また、日光過敏症の人は湿布薬を貼った後に日光に当たることで、かゆくなったり、発赤したりすることがあるので、使用して剥がした後、貼った部位を4~5時間は日光から保護するようにしましょう。

湿布薬の種類は豊富ですので、ご自分に合った湿布を見つけることが大切です」

(オトナンサー編集部)

川上洋平(かわかみ・ようへい)

医師(整形外科専門医)、医学博士

神戸大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学留学、膝スポーツ疾患や再生医療を学び、北播磨総合医療センター、神戸大学病院、新須磨病院勤務を経て、患者さんにやさしく分かりやすい医療を提供することを目的に、かわかみ整形外科クリニックを開業。日本整形外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会認定医、再生医療学会認定医。英文論文執筆多数。専門は膝関節外科、スポーツ障害、再生医療。かわかみ整形外科クリニック(https://kawakamiseikei.jp/)。

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