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騒音や衝突事故は裁けない? 「スケボー」巡る法的問題、弁護士に聞く

五輪新種目の「スケートボード」。専用のスケートボード場ではなく、街なかを滑走する若者が増え、騒音への苦情や衝突事故も目立ってきています。法的問題を弁護士に聞きました。

スケボーの法的問題は?
スケボーの法的問題は?

 五輪新種目「スケートボード」への関心が高まっていますが、専用のスケートボード場ではなく、街なかを滑走する若者が増え、騒音への苦情や衝突事故も目立ってきています。スケートボードは道路交通法に基づく取り締まり対象でもあり、本来はさまざまな法的規制がかかるようです。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

禁止場所で滑走なら住居侵入罪も

Q.スケートボードで公道を走ることは、道交法でどのように規制されているのでしょうか。

牧野さん「道交法76条4項3号で『何人も、交通の頻繁な道路において、球戯をし、ローラースケートをし、またはこれらに類する行為をすることをしてはならない』とされており、スケートボードも規制対象と解釈されています。違反した場合、5万円以下の罰金(120条1項9号)が規定されています」

Q.実際に公道を走っている人数に比べ、取り締まりは圧倒的に少ない印象があります。なぜでしょうか。

牧野さん「公道でのスケートボードの滑走は先述した通り、道交法76条4項3号での摘発の対象になり得ますが、『頻繁』の解釈に幅があることから、実際に摘発することは容易ではありません。ただ、横浜市や名古屋市で『交通の頻繁な道路でスケボーをした』として、書類送検された事例が報道されており、状況によっては取り締まりが行われています」

Q.滑走中、人にぶつかった場合、法的責任は問われ得るのでしょうか。相手がけがをした場合はどうでしょうか。

牧野さん「公道かどうかを問わず、過失によって人を傷害した場合、過失傷害罪(刑法209条、30万円以下の罰金、または科料)に当たり、過失によって人を死亡させた場合、過失致死罪(刑法200条、50万円以下の罰金)に当たる可能性があります。

スケートボードの滑走による死傷が『業務』と認定されるか、もしくは重大な過失により人を死傷させた場合、業務上過失致死傷罪(刑法201条、5年以下の懲役、もしくは禁錮、または100万円以下の罰金)に当たる可能性があります。

日常用語の『業務』は『職業として継続して行われる仕事』を指しますが、業務上過失致死傷罪の『業務』は社会生活上の地位に基づき、反復継続して実施する行為であり、生命身体に危険を生じ得るものをいいます(最高裁1958年4月18日判決)ので、スケートボードの滑走による死傷も『業務』と認定され、より重い罪となる可能性があります。

さらに、公道で起きた事故の場合、上記の犯罪に該当する可能性に加えて、先述の道交法76条4項3号違反(5万円以下の罰金)にも該当します」

Q.スケートボードが禁止されている公園など、公共の場所で滑走した場合の法的責任は。

牧野さん「スケートボードを禁じている公園の場合、『スケートボード目的での立ち入り』を施設管理者があらかじめ拒否していることになりますので、住居侵入罪(刑法130条、3年以下の懲役、または10万円以下の罰金)に該当する可能性があります」

Q.スケートボードが禁止されていない公園であっても、騒音が激しい場合があります。騒音について法的責任は発生しないのでしょうか。夜間の騒音で不眠など健康被害が発生する可能性もありそうです。

牧野さん「いわゆる、『受忍限度』を超える騒音の場合、民法709条の不法行為により、精神的損害を賠償する責任を問える可能性があります。

東京都の環境確保条例で定める騒音規制基準では、地域によって騒音基準値が定められています。住宅地のうち一定の条件を満たす地域では、昼間の基準が50デシベル、夜が45デシベルで、例えば、『エアコン室外機』の音は50デシベル程度で、夜は受忍限度を超える騒音となり得ます。住宅地でスケートボードを行えば、エアコンの室外機よりも大きな音が発生して、受忍限度を超える可能性はあり、その場合は法的責任を問い得るでしょう」

Q.スケートボードが禁止されていない公園で、滑走中に施設に傷をつけた場合の法的責任は。

牧野さん「器物損壊罪(刑法261条、3年以下の懲役、または30万円以下の罰金、もしくは科料)に当たる可能性があります。重要文化財や史跡名勝天然記念物の場合、文化財保護法に違反することになり、5年以下の懲役、もしくは禁錮、または100万円以下の罰金に処される可能性もあります(同法195条、196条)。

2021年1月、山口県岩国市の史跡名勝『錦帯橋』の橋板に擦り傷がつく事件が発生し、文化財保護法違反の疑いで、スケートボードのスケーターが書類送検された例があります」

Q.スケートボードに関わる法的問題をなくしていくためには、どうすればよいでしょうか。

牧野さん「トラブルが頻発する背景には、東京五輪や新型コロナウイルスの流行拡大をきっかけにスケートボードを始めた初心者の増加があると分析されています。初心者であっても、法令に違反すれば法的な責任が伴いますので、法律などルールを学ぶべきとの啓発活動が必要でしょう」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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