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国民意思とかけ離れた五輪! 強行したい与党と不信任案を出さない野党の不思議

JNNの世論調査で、菅内閣の支持率が政権発足後、最低の40.0%に。五輪開催を巡る与党の姿勢、そして、野党の動きについて筆者が考察します。

記者会見する東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の武藤敏郎事務総長(左)と橋本聖子会長(2021年5月、時事)
記者会見する東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の武藤敏郎事務総長(左)と橋本聖子会長(2021年5月、時事)

 JNNの世論調査によれば、菅内閣の支持率が政権発足後、最低の40.0%となったことが明らかになりました。支持できないという人は4.3ポイント増え57.0%でした。新型コロナウイルス感染防止の取り組みについては「評価する」は27%と政権発足後、最低となりました。「評価しない」は63%でした。

 この結果は当然ではないかと思います。感染拡大が一向に収まらず、医療崩壊の危機がたびたび報道されています。国内だけでなく、海外でも五輪が開催できるのか疑問符がついています。しかし、政権は「決定権はIOCにある」と議論の先送りを繰り返しています。

いまだに世界最低水準の接種率

 本来、IOCが損害賠償が可能なのは開催都市、組織委に瑕疵(かし)があった場合です。今回のように、未知のウイルスがまん延し、不可抗力の場合には対象にならないとする意見もあります。

 IOCは損害保険に加入しています。年次報告書によると、保険料として、2016年リオデジャネイロ五輪で1440万ドル、2018年平昌五輪で1280万ドルを支払っています。

 一方で、五輪組織委が受ける打撃は大きいと言われています。すでに大会の準備に126億ドルを支出しています。SMBC日興証券は2020年3月7日、「東京五輪が開催されない場合、7兆8000億円の経済的損失が発生し、国内総生産(GDP)は1.4%減少する」と予想しています。

 五輪を中止すると、多額の違約金が掛かると言われていますが、保険加入の実態を公表すべきではありませんか。保険に加入していれば、違約金の問題はクリアになるはずです。

 国会議員には「ノブレス・オブリージュ(高貴なる義務)」があります。国民の代表である以上、国民の利益を優先し、交渉することが求められているはずです。納税者である国民負担が増えることは許されません。また、五輪返上の方が「損切り」できるとする意見もあります。

 日本が危機的な状況であることは間違いありません。現在の大阪の死亡率は、インド、米国とほぼ同じです。ピーク時の欧州ほどではありませんが、かつてなく高い死亡率であることは間違いないのです。日本経済新聞が提供している「チャートで見るコロナワクチン世界の接種状況」からは次のことが分かります。

 本稿を執筆している5月11日現在、国・地域別の累計接種回数一覧(100人あたりの接種回数)で見ると、日本はOECDに加盟する先進37カ国中、断トツの最下位です。世界全体で見ると、日本はラオスの少し下、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ルワンダとさほど変わりません。

 当初、ワクチン接種は4月末までに約4000万人が完了する予定でした。しかし、予定通りには進まず、世界最低レベルなのですから、五輪反対の声が大きくなるのは当然です。

 緊急事態宣言中に外出していた人を批判する声があります。しかし、その批判は的外れです。「ワクチン接種はもうすぐです。だから、ステイホームをお願いします」という理由なら国民は従うでしょう。しかし、世界最低水準の接種率で展望がないなら従うはずもありません。

 今回の緊急事態宣言においても、政府は人流抑制を押し出しましたが、期待する効果は上がっていません。人流が減少していない理由は、人々が懐疑的だからではありませんか。リモートワークに切り替える会社が限定的なのは、必要性を感じていないからでしょう。

五輪開催の大義とは何か

 私見ですが、五輪推進論者は、次の5つのポイントを軸に開催の意義を主張しているように思います。

(1)五輪開催は日本の国際公約であること
(2)開催の可否を決めるのはIOCであり、五輪開催に関する準備を遅らせることはできないこと
(3)国際公約を順守しなければ、世界から信頼を失ってしまうこと
(4)プロ野球やサッカーなどは無観客や一部中止を発表しているものの、エビデンスに基づいたものではないこと
(5)以上(1~4)を踏まえて、中止する科学的・合理的理由は存在しないこと

 少なくとも、IOCが中止と決定するまでは準備を怠らず、開催に向けて努力する義務があることは間違いありません。しかし、それは当初の予定通りにワクチン接種が行われていた場合の話です。

 海外のメディアはどのように報じているのでしょうか。米紙「ワシントン・ポスト」がIOCのバッハ会長を“ボッタクリ男爵”とやゆし、IOCを批判した記事は日本でも話題になりました。英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」にも「五輪という政治的決断は国民の意思とは相反する」としたオピニオン記事が掲載さました。各国の批判は高まるばかりです。

 茂木外相は5月5日、インドのジャイシャンカル外相とオンラインで会談し、日本政府として最大約55億円の無償支援を追加で行うことを約束しました。コロナに苦しむ国に支援の手を差し伸べるのは悪いことではありません。しかし、日本のコロナ対策も同様にスピード感を持って対応してほしいと思う人は少なくないはずです。

 また、55億円ものお金を日本で苦しむ人たちに回すことはできないのでしょうか。日本政府は緊急事態宣言を発令して、国民に自粛や負担を強いているわけです。政府や自治体は自らの政策を「医療崩壊」と主張しているではありませんか。

 そうならば、まずは日本の対処をしっかりとしてほしい。その上で、一定のめどがついた後に海外を支援するのが順序ではないのでしょうか。日本に他国を支援する余裕があるのでしょうか。

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尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、著述家 尾藤克之

東京都出身。代議士秘書、大手コンサルティングファームにて、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎首相夫人)をライフワークとしている。NHKや民放各社のテレビ出演や、経済誌などからの取材・掲載多数。著書も多く、近著に「頭がいい人の読書術」(すばる舎)がある。埼玉大学大学院経済学研究博士課程前期(経済学修士、経営学修士)。

筆者への連絡先
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