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酒井美紀さん、北村弁護士も 「社外取締役」増加、どんな仕事をする人?

外部から「社外取締役」を迎える企業が増えています。最近では、女優の酒井美紀さんや弁護士の北村晴男さんの就任が話題になりましたが、具体的にどんなことをするのでしょうか。

酒井美紀さん(2012年12月、時事)
酒井美紀さん(2012年12月、時事)

 企業の最高権限者である「代表取締役」とは別に外部から、「社外取締役」を迎える企業が増えています。客観的な立場による監督・助言を期待される存在で、最近では女優の酒井美紀さんが不二家(東京都文京区)、弁護士の北村晴男さんがキノコ生産大手のホクト(長野市)でそれぞれ社外取締役に就任しており、注目されました。

 ネット上では「社外取締役ってどんな仕事をするの?」「忙しそうだけど、本業と掛け持ちしてもいいの?」「正直、報酬が気になる」など、さまざまな声が上がっています。社外取締役とはどのような役割を担うのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

客観的立場で経営を監督

Q.そもそも、社外取締役とは何ですか。

大庭さん「社外取締役とはその名の通り、会社の外から就任した取締役のことです。会社法では2021年3月1日より、株式を上場している『大会社』(資本金の額が5億円以上または負債額200億円以上の会社)に対して、1人以上の社外取締役を設置することが義務付けられました。

社内から昇格した取締役は、各事業部門内での業務執行に対する責任と経営の監督責任を兼任することもありますが、会社法で義務付けられた上場大会社の社外取締役は『原則、業務執行を行わないこと』や『過去10年間、就任企業や子会社における業務執行を行う取締役でなかったこと』などが条件です。

上場大会社以外の会社が社外取締役を設置する場合、会社法の義務は適用されませんが、ガバナンス(企業統治)を維持するための経営監督を行うという本来の機能を発揮してもらうためにも、会社法上の求めに準じた対応を行うことが望ましいです」

Q.一般的に、社外取締役は何を求められる役割・立場なのでしょうか。

大庭さん「企業が社外取締役を置く目的は、ガバナンスを維持するために社外からの目を光らせることです。それを踏まえ、社外取締役には、客観的な立場で会社経営を監督する役割が求められています。

会社の取締役にも『会長』『社長』から、平の取締役まで序列があり、下位の序列の取締役が上位の序列の取締役に対して、ものを言いづらくなることがあります。トップが創業社長であれば、トップの鶴の一声で経営判断が下ることもあります。こうした状況のとき、会社が下そうとしている経営判断がコンプライアンスに反する場合、あるいは株主の利益に反すると想定される場合、そのことを正面から指摘した上で軌道修正する役割を担うことが社外取締役には期待されています」

Q.具体的にどのような仕事をするのですか。

大庭さん「定期的に取締役会に参加して、就任企業の経営状況や経営方針などを確認した上で、社内の取締役に対し、客観的な視点で今後の経営(経営判断)に対する助言をします。経営トップから個別に相談を受け、助言することもあります。

出社の頻度は月に1回、2~3時間程度の対応という形が多いですが、月に2~3回程度出社する社外取締役もいます。掛け持ちに関しては法的な規制はありませんが、著名な人物に社外取締役就任の依頼が集中する実態があり、1人の人が5、6社の社外取締役を兼任しているケースもあります。任期としては、1~2年ごとに更新する会社が多いです。特定の人が長期間、社外取締役を続けるとなれ合いが生じて、『客観的な立場で経営を監督する』という本来の役割を果たせなくなる懸念があるからです」

Q.社内から昇格した通常の取締役と同様、社外取締役にも何らかの義務が課せられるのでしょうか。

大庭さん「社外取締役は社内の取締役と同様、会社が最適な経営を行う(株主の利益を害さない)ことへの義務を負います。中でも重要なのは守秘義務と競業避止義務です。

守秘義務は、社外取締役の活動を通じて知り得た会社の重要な情報や営業情報などを外部に漏らさないという義務です。また、競業避止義務とは、自らが社外取締役を務める会社と競合する企業の取引に関わる、あるいは自らが競合する事業を立ち上げることをしないという義務です。いずれも就任企業に損害を与えないことが目的です。これらの義務に違反して就任企業に損害を与えた場合は、民事上の損害賠償責任を負うことになります」

Q.社外取締役に就くことのメリット/デメリットは何でしょうか。

大庭さん「メリットとしてはまず、社外取締役として就任企業の経営活動に参画したことが本人の経歴の向上につながる点です。就任したのが有名企業の場合、他の企業から、社外取締役就任のオファーが来る可能性も増すでしょう。また、新たな人脈の獲得や業界情報、マネジメントに関する知見の向上にもつながり、そのことを今後の本人の活動に生かすことができます。さらに社外取締役としての報酬も得られます。

一方、デメリットは行動と時間に関する制約が生まれることです。先述した通り、社外取締役に就任した場合、守秘義務や競業避止義務などが課せられるため、本人の行動に制約が生じます。加えて、取締役会への参加や社外取締役としての任務を遂行するための情報収集、準備などに一定の時間を費やすことになり、時間的な制約も生まれるでしょう」

Q.社外取締役に求められることの多い人材の特徴とは。

大庭さん「社外取締役としての引き合いが多いのは、経営の実績とノウハウがある人材です。中でも人気なのは大企業の現経営者や元経営者です。経営に精通した人材から客観的な意見をもらうことで合理的な経営判断を下すことができ、さらには他社での成功事例を吸収できるのではないかという期待があるからです。東証1部に上場している企業の社外取締役が約5000人おり、そのうち、経営者と元経営者が半数程度を占めています。

他に引き合いが多いのは、弁護士や公認会計士など企業の経営と密接な関わりのある法務や財務、税務などの専門知識が豊富な人材です。そうした人材を加えることで、実務面でのリスク防止が期待されています」

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大庭真一郎(おおば・しんいちろう)

中小企業診断士、社会保険労務士

東京都出身。東京理科大学卒業後、企業勤務を経て、1995年4月に大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心に企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。以下のポリシーを持って、中堅・中小企業に対する支援を行っている。(1)相談企業の実情、特性に配慮した上で、相談企業のペースで改革を進めること(2)相談企業が主体的に実践できる環境をつくりながら、改革を進めること(3)従業員の理解や協力を得られるように改革を進めること(4)相談企業に対して、理論より行動重視という考えに基づき、レスポンスを早めること。大庭経営労務相談所(https://ooba-keieiroumu.jimdo.com/)。

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