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早稲田10万人割れ、軒並み志願者減 今年の私大入試は「改革」「コロナ」が影響

入試や授業内容、学生の就職支援など、大学のさまざまな話題について、教育関連の情報発信に携わってきた筆者が解説します。

早稲田大学
早稲田大学

 私立大学の入試シーズンが本格化し、中には、もう合格発表を始めた大学もあります。今年はコロナ禍の中で行われる入試となり、受験生は感染防止対策が必須。不便を感じながらの受験を強いられています。しかも、今年は大学入試改革初年度に当たります。コロナ禍と入試改革の2つが大きな影響を与えた、今年の私立大学入試の状況を見てみましょう。

志願者10万人以上は近大のみ

 中でも大きな影響を受けたのが私立大学の一般選抜(一般入試)で、昨年(2020年)に比べて志願者数が激減しています。2020年はトップの近畿大学が14万5350人で、2位の日本大学以下、早稲田大学、立命館大学、法政大学、千葉工業大学、明治大学、東洋大学の順に、8位までが10万人を超える人気ぶりでした。8校が10万人を超えるのは史上初のことでした。

 ところが、今年は現在のところ、10万人を突破しているのは近畿大学だけという状況です。早稲田大学は50年近く維持してきた志願者10万人を割り込み、他の大学も軒並み志願者減となっています。大手私大100校ほどを見ると、昨年の志願者数を上回っているのは立教大学、学習院大学、上智大学の3校にとどまっています。この3校はいずれも入試改革を行った大学です。

 立教大学は文学部の一部の方式を除き、英語を民間英語試験のスコアか大学入学共通テスト(共通テスト)の英語の成績に代え、大学独自の英語試験を廃止しました。さらに、試験日を連続して複数回設け、自分の併願プランに合わせて日程を選べる方式で人気を集めました。学習院大学と上智大学は2020年まで行われた大学入試センター試験には参加していませんでしたが、今年から始まった共通テストに初めて参加し、共通テスト利用入試が人気を集めました。

 そもそも、今年は受験生の人数そのものが減っています。共通テストの志願者数を見ると4%減で、中でも、浪人生が2割近く減りました。今年からの入試改革をにらんで、2020年の内に大学へ進学しようとする傾向が強まり、浪人する受験生が減ったということです。

 浪人生は基本的に後がないことから、併願校が多くなります。従って、浪人生が減るということは私立大志願者が大きく減ることにつながります。また、新型コロナウイルスへの感染を恐れて、大都市圏の私立大学が敬遠され、地元志向が強まっていることも志願者減の要因です。

 さらに、2020年の内に合格を勝ち取った現役生も多かったと見られます。年明けに入試が行われるかどうか分からないという不安からの動きとみられ、特に学校推薦型選抜の指定校推薦の人気が高かったようです。現状では、一般選抜に関しては私立大学全体で1割以上志願者が減っています。

 この他にも、コロナ禍を受けた大学の状況も志願者数に影響したと見られます。2020年4月に大学へ入った1年生は入学当初から、オンライン授業が中心になりました。キャンパスを訪れる機会がほとんどない学生が多く、クラブ・サークル活動やアルバイトもできず、友人もできない学生が多くなってしまいました。ほとんどの小中高校で授業を再開しているのに、大学だけがいまだにオンライン授業中心です。この4月以降もオンライン授業中心なら、家を離れて大学進学する意味はあまりありません。

 そこで気になるのが、この4月からのコロナ禍への対応です。「原則、対面授業」と公表している主な大学は駒沢大学、上智大学、武蔵大学、明治大学、京都産業大学、龍谷大学、関西大学、関西学院大学、甲南大学などです。このうち、上智大学は志願者が増え、龍谷大学、関西学院大学、駒沢大学、明治大学も志願者は減少しているものの、前年の96%以上と、全体として受験生が減少している中、健闘しています。この結果からも、コロナ禍への各大学の対応が明暗を分けた部分があるものとみられます。

 コロナ禍は収束の兆しが見えません。入試改革も共通テストへの記述式問題導入と英語民間試験活用が今年は見送られ、まだ道半ばです。今後も、この2つの影響を注視する必要があるでしょう。

(大学通信常務 安田賢治)

安田賢治(やすだ・けんじ)

大学通信常務

兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、1983年に大学通信入社。現在、同社常務取締役で、出版編集とマスコミへの情報提供の責任者。小・中・高・大の入試から高校の大学合格実績、大学生の就職までの情報提供と記事を執筆、講演も多数。大正大学人間学部で講師も務める。著書に「中学受験のひみつ」(朝日出版社)、「笑うに笑えない大学の惨状」「教育費破産」(ともに祥伝社新書)がある。

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