裁判の判決後、「勝訴」「不当判決」の巻物を手に走ってくるのは誰?
裁判の判決を伝える報道では、「勝訴」「不当判決」などの判決内容が書かれた巻物を掲げて走ってくる人が映ります。一体、何者なのでしょうか。

テレビのニュースで裁判の判決を伝える報道を見ていると、「勝訴」「不当判決」などの判決内容が書かれた巻物を掲げて走ってくる人が映ります。特に社会的な注目を集めている裁判でよく見られる光景のようですが、この走ってくる人は一体、何者なのでしょうか。なぜ、いち早く判決の内容を伝えようとしているのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
敷地外の原告・支援者らに伝える
Q.裁判の判決後、判決内容が書かれた巻物を掲げて走ってくる人がニュースで映し出されることがあります。一体、何者なのでしょうか。なぜ、いち早く判決の内容を伝えようとしているのですか。
牧野さん「裁判を担当している弁護団の中の若手弁護士であることが多いです。よく見ると、スーツの襟元に弁護士バッジを着けていることが多いので、弁護士であることが分かると思います。巻物を掲げて走ってくる光景は、集団訴訟など社会的な注目を集めている裁判の判決のときによく見られます。傍聴席に入りきれず、裁判を傍聴できずに裁判所の敷地外で待機している原告や支援者に、いち早く判決の内容を伝えようとしているのです」
Q.判決内容を書かれた巻物は正式名称、あるいは通称があるのでしょうか。どのような表記のものが用意されているのですか。
牧野さん「正式には『判決等即報用手持幡(てもちばた)』と呼ばれているようですが、一般には『幡(はた)』『びろーん』と呼ばれています。表記は、民事裁判の場合は『全面勝訴』『勝訴』『一部勝訴』『不当判決』、違憲かどうかが争われている裁判の場合は『違憲判決』『不当判決』、刑事裁判の場合は『無罪判決』『不当判決』などが用意されます。何種類か用意しておき、判決の言い渡しを聞いて、その場でどの幡を出すのかを原告側弁護団の主任弁護士が指示することが多いです」
Q.いつから、判決内容をいち早く伝えようとすることが始まったのでしょうか。きっかけは何ですか。
牧野さん「正確にいつから始まったのか、きっかけは何なのかははっきり分かっていません。ただ、過去の新聞報道の写真を見ると遅くとも、公害を巡る1970年代の訴訟からは多く使われていたようです」
Q.巻物は手作りなのでしょうか。あるいは、販売・レンタルされているのでしょうか。
牧野さん「手作りが多いです。事前に達筆な人に毛筆で書いてもらい、広げやすいように上下に持ち手を付けておきます。巻物が販売されたり、レンタルされたりしているというような話はあまり聞かないですね」
Q.巻物を裁判所の敷地内で広げることは禁止されているそうですが、本当でしょうか。
牧野さん「本当です。裁判所施設内の秩序維持のため、裁判所の施設管理規則で、裁判所構内では幡を出すことが禁止されています。そのため、裁判所の敷地外に走り出て、いち早く幡を出さないといけないので、若手弁護士の中でも速く走ることができる人が担当に選ばれることが多いです」
Q.日本では巻物ですが、海外でも、こうした判決内容をいち早く伝えることは行われているのですか。
牧野さん「行われることもあります。2005年、アメリカのカリフォルニア州で、歌手のマイケル・ジャクソンさんが性的虐待を行ったかどうかについて刑事裁判で争われましたが無罪判決が下され、弁護士ではなく支持者が『Not Guilty(無罪)』のプラカードを誇らしく掲げていました。お国柄が出ますね」
(オトナンサー編集部)
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