短すぎると痛々しく…犬や猫の「サマーカット」、本当に必要? 悪影響はない?
夏になると、ペットの犬や猫の毛を短く刈り込む「サマーカット」をする飼い主もいますが、悪影響はないのでしょうか。

最高気温35度以上の猛暑日など、夏場に人間は熱中症になりやすくなりますが、それは犬や猫などのペットも同様。そこで、ペットにも涼しく過ごしてほしいという親心から、夏になると犬や猫の毛を短く刈り込む「サマーカット」をする飼い主もいるようです。しかし、不自然に毛を短く刈り込んだ姿は痛々しくも見え、何らかの悪影響があるようにも思えます。犬や猫の「サマーカット」は必要なのでしょうか。獣医師の増田国充さんに聞きました。
短くしすぎると熱中症リスクも…
Q.犬や猫のサマーカットをする飼い主がいますが、当事者の犬や猫は喜んで受け入れているのでしょうか。
増田さん「犬や猫の気持ちを直接、耳にしていないので確実なことは分かりません。しかし、例えば、サマーカットに限らず、トリミング(毛をきれいに切りそろえて整えること)やシャンプーそのものが好きではない犬や猫は一定数いますし、その逆もまたしかりです。
サマーカットを喜んで受け入れているか、嫌がっているかはそれぞれに異なると思います。とはいえ、サマーカットの目的や程度が適切でない場合、犬や猫にとって、逆に過ごしにくくなることがあるということを飼い主は知っておく必要があると思います」
Q.サマーカットは必要なのでしょうか。不要なのでしょうか。
増田さん「絶対的に必要性が高いとはいえません。そもそも、犬や猫の被毛は体温管理の上で重要な役割を果たしています。被毛が生えていることによって、皮膚との間に空気の層が作られ、これが断熱材のように働くのです。ただ、皮膚病になり、被毛があることによって皮膚が清潔な状態を保てない場合や毛玉が作られている場合などは、毛を刈って適切な処置を行う必要があります」
Q.ネット上には、サマーカットされた犬や猫の姿が数多くアップされていますが、中には、肌が露出するほど短く毛が刈り込まれたものもあります。痛々しく虐待されたかのようにも見えるのですが、ここまで短く刈らないといけないのでしょうか。
増田さん「先ほど、被毛の役割について説明しましたが、極端に毛を短くしてしまうと、熱や冷えによる影響がじかに皮膚に及びます。つまり、暑いときはその暑さが直接、皮膚に伝わってしまうのです。直射日光に当たった場合、毛がある犬に比べ体温上昇を招きやすく、その結果、熱中症のリスクが高まる可能性があります。
逆に、寒いときは体内の熱が体表を通じて放散されやすくなります。見た目の涼しさを要求する場合であっても、あまりにも短すぎる毛にしてしまうのは動物にとって逆効果になることがあります」
Q.そもそも、犬や猫の毛が短ければ、サマーカットの必要性もないかもしれません。なぜ、犬や猫には毛の長い品種が多いのですか。
増田さん「犬や猫の中で長い毛の品種は寒い地域原産であるものが多く、寒さから身を守るために毛が長くなっています。寒さに限ったことではありませんが、毛が短いと外部の温度の影響をより大きく受けますので、住環境や生活環境をしっかり整えてあげる必要があります。そのため、短いサマーカットの犬を昼間に散歩させるようなことは、非常に危険です。寒いときも同様です」
Q.どうしてもサマーカットをしたい場合は、犬や猫の美容師(トリマー)など専門家に任せた方がよいのでしょうか。
増田さん「サマーカットをする必要があるのかどうかの判断は、その目的をよく吟味してから行いましょう。決して、『かわいくなるから』など自分本位の考えだけで、サマーカットをしてはいけません。
一般的に、サマーカットはバリカンを使います。バリカンの当て方によって、バリカン負けを誘発する場合があり、皮膚炎の原因になることがあります。また、毛を刈った場合、犬種によっては、その後に生えてきた毛質がこれまでのものと変化してしまうことがあるので注意が必要です。そのため、丁寧なバリカンがけが要求されます。
それぞれの犬や猫の体質、性格によって、家庭で安全にサマーカットを行うことが難しいこともあるかもしれません。かかりつけの獣医師やトリマーに相談し、その上で、サマーカットの是非、あるいはカットする場合にどの程度の毛の長さを保つのがよいかなどを決めていきましょう」
(オトナンサー編集部)
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