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ネット上で過熱する「誹謗中傷」、法的にどう立ち向かえばよいのか? 弁護士に聞く

被害に遭ったら証拠の保存を

Q.木村さんの件を受けて、「誹謗中傷を受けたら被害届を出した方がよい」との声も高まっています。

若林さん「被害届を出して刑事事件化されれば、誹謗中傷は減っていくと思います。ただ実際問題として、誹謗中傷の被害に遭って被害届を出しに行っても、警察がなかなか対応してくれないという問題点があります。多くのケースでは、被害者が発信者情報開示手続きを通じて犯人を特定してから初めて、警察が動くのが現状です。

今後は警察側でも、誹謗中傷被害に迅速、かつ適切な対応をしていくことが必要でしょう。そのためには、サイバー犯罪対策担当部署の強化や『誹謗中傷課』創設など警察側の体制の改善も必要だと思います。なお、告発は被害者でなくても行えるので、家族や友人が刑事告発することも可能です」

Q.誹謗中傷の被害を受けた場合、法的な対応を行うための心得や必要な準備とは。

若林さん「まずは、誹謗中傷をされた証拠の確保が必要です。スクリーンショットを取るなどして証拠を保存してください。

次に、発信者情報開示を行う場合は、ログ(通信履歴)の保存期間に注意する必要があります。大手のプロバイダーでは、3カ月程度しかログが保存されません。さらに、開示の手続きを行うまでの作業時間なども必要になってきます。そのため、誹謗中傷の被害に遭った場合は、できる限り素早い対応が求められます。

発信者情報開示には煩雑な手続きが必要で、時間も費用もかかります。ケース・バイ・ケースではありますが、開示までは半年から1年弱かかる上、50万円前後の弁護士費用、10万円前後の担保金(返ってくる可能性が高い)が必要です。また、法的な理由のみならず技術的な理由で発信者を特定できないリスクもあります。

現状では、誹謗中傷の被害に遭った側が発信者情報開示請求をするには、これらのハードルを越えないといけません。今後はこの手続きを簡素化して、もう少しこのハードルを下げていく必要があると思います」

Q.誹謗中傷への対応として、書き込まれたコメントなどを無視したり受け流したりする能力を指す「スルースキル」という言葉がありますが、木村さんの件を受け、スルースキルよりもさらに具体的な法的措置が必要だという風潮に変わりつつあるようです。

若林さん「スルースキルには限界があります。そのため、根本の問題である誹謗中傷自体が減るような対応や制度が求められるでしょう。

人は自分が反撃されないと思うと調子に乗り、つけ上がります。匿名アカウントであっても個人が特定でき、刑事罰を受け、損害賠償を支払わなければならないことが一般常識になればよいと思います。そのためには、被害届、刑事・民事含めた法的手続きがもっと簡単に利用できるような制度や運用にしていく必要があるでしょう」

(オトナンサー編集部)

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若林 翔(わかばやし・しょう)

弁護士

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。YouTubeチャンネル「弁護士ばやし」(https://www.youtube.com/channel/UC8IFJg5R_KxpRU5MIRcKatA)、誹謗中傷削除・発信者情報開示サイト(https://defamation.gladiator.jp/)。

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