地域の問題? 「おから」と「卯の花」は何が違う? 「きらず」の呼び方も…
私たちの暮らしに身近な食材の「おから」と「卯の花」。両者は何が違うのでしょうか。
和食の副菜としておなじみのメニューである「おから」「卯(う)の花」。独特の食感と素朴な味わいが好きだという人も多いことでしょう。しかし、この2つを思い浮かべたとき、「違いが分からない」「どちらも同じもの?」といった疑問を持つ人や、「実家では『きらず』と呼んでいた」「上京してから『卯の花』とよく聞くようになった」など、その呼び方に地域性を感じる人が少なくないようです。
「おから」の呼び名にまつわる疑問について、料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。
「大豆の殻」から「おから」
Q.ずばり、「おから」と「卯の花」の違いとは何でしょうか。
関口さん「おからと卯の花は同じものです。おからとは、豆腐を作る際に出る大豆の搾りかすのことで、豆乳を搾った後の大豆の皮や繊維部分をいいます。つまり、『大豆の殻』の意味の『から』に『お(御)』を付けた呼び方で、漢字では『御殻』などと書きます。
庶民の間で食べられるようになったのは、豆腐が一般化された江戸時代のことですが、豆腐自体は中国が発祥で、日本に伝わったのは奈良・平安時代ごろとされています。
一方、『から』という呼び方には『空っぽ』という印象があり縁起がよくないため、ウツギという植物の花に例えられ、付けられた呼び方が卯の花です。ウツギの花が白くて小さく、おからに似ていたためです」
Q.おから、卯の花以外にも、呼び方はありますか。
関口さん「おからには、卯の花の他に『雪花菜(きらず、せっかさい)』『大入り(おおいり)』などの別名があります。
雪花菜は、中国でのおからの呼び名『雪花(シュエホワ)』から付いたものです。せっかさいはウツギの別名で、きらずは『包丁で切らずに使える』という意味と、『商売相手との縁が切れないように』という意味から呼ばれています。
なお、この雪花菜という字は、おからの当て字として使われることもあります。つまり、雪花菜は『きらず』『せっかさい』『おから』という3通りの読み方があるのです。
大入りは寄席で使われる縁起のよい言葉で、調理法の『炒(い)る』という言葉に重ねて付けられたようです。寄席芸人の間では、『から=空席』を連想させる縁起の悪い呼び名を避けるためにこう呼ばれていました」
Q.呼び名には、地域性があるのでしょうか。
関口さん「おからは全国的、かつ一般的な呼び名です。せっかさいも、雪花菜という漢字のままの呼び方として、エリアを問わず使われているようです。
卯の花は主に関東、きらずは主に東北や関西で呼ばれることが多いようです。京都の商家では、雪花菜をきらずと呼ぶことで、『縁を切らず=商売の縁起物』として月末に食べる習わしがあるそうです。豆腐店でもきらずの呼び名が使われます」
Q.おからに含まれる栄養素やカロリーを教えてください。
関口さん「おからのカロリーは、100グラムあたり111キロカロリーです。食物繊維は1日あたりの摂取量の半量以上である11.5グラム、タンパク質も卵1個分と同等量の6.1グラム含まれています。
また、ビタミンB群、カルシウムや鉄などのミネラルも各種バランスよく含まれている他、脳の記憶力を高めるレシチン、女性のホルモンバランスをサポートするイソフラボンなど、非常に栄養が豊富な食べ物です」
Q.おからをおいしく食べるためのポイントとは。
関口さん「おからは、野菜や油揚げなどと一緒に炊き上げた煮物が定番メニューですが、ハンバーグのつなぎにしたり、お菓子に混ぜたりするとヘルシーに仕上がることで人気です。だしや油との相性がよいので、味付けに使用するとしっとり感が増しておいしくなります。
少し変わった食べ方では、おからをポテトサラダ風に仕上げるレシピがあります。おからを牛乳で少々湿らせ、電子レンジで加熱した後、具材を入れてポテトサラダと同じように仕上げます。ダイエット中でも安心して召し上がれますよ」
(オトナンサー編集部)
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